安倍首相が「逃げの答弁」をつづける事情

プレジデントオンライン / 2018年4月14日 11時15分

4月10日、記者の呼び掛けに答える柳瀬唯夫経済産業審議官(写真=時事通信フォト)

安倍晋三首相が苦しい「逃げの答弁」を続けている。今度は加計学園の獣医学部新設をめぐって、2015年当時に首相秘書官だった柳瀬唯夫・経済産業審議官が、首相官邸で愛媛県職員らと面会した際に「本件は、首相案件」と語ったとする文書がみつかった。安倍首相は柳瀬氏は発言を認めていないとし、「(柳瀬氏を)信頼している」と述べた。真実はどこにあるのか――。

■「言った」「言わない」の水掛け論でいいのか

安倍晋三首相は4月11日の国会で、2015年当時首相秘書官だった柳瀬唯夫・経済産業審議官が加計学園の獣医学部新設を「首相案件」と発言したとする愛媛県の文書内容について全面的に否定した。

安倍首相は柳瀬氏が発言を認めていないとし、「秘書官を信頼している」とも述べた。これに対し、野党側は「愛媛県の文書か、柳瀬氏かどちらかがうそになる」と詰め寄った。

このため11日の衆院予算委員会の集中審議は度々中断し、国会は混乱した。

このままでは「言った」「言わない」の水掛け論で終わってしまう。そんな終わり方では何とも情けないし、国民は蚊帳の外に置かれたままである。

要は白か黒かの簡単な話だ。国会は柳瀬氏の証人喚問を行うなど徹底解明に向けて努力してほしい。

いま日本の立場が国際的に大きく注目されている。北朝鮮問題に対する対応で正念場を迎えるときに、政権の信頼を損なうような事態を放置することは決して許されない。安倍首相は真相解明に向け、真摯に努めるべきだ。

■なぜ安倍首相は「首相案件などない」と明言しないのか

集中審議での安倍首相の答弁をもう少し振り返ってみよう。

柳瀬氏が「首相案件」と述べたとする愛媛県の文書をもとに野党が質問すると、安倍首相は次のような答弁を何度も繰り返した。

「愛媛県が作成した文書なので政府としてコメントできない」
「柳瀬元首相秘書官の発言を信頼している」

実に苦しい逃げの答弁である。国民の前で真相をはっきりさせるためには、県の文書かどうかは関係ないだろう。なぜ明確に「愛媛県の文書はうそだ。首相案件などもない」と答えられないのか。

柳瀬氏は2015年4月の県職員らとの面会や首相案件発言を否定し、「記憶の限りでは」とコメントしている。しかし自民・公明の与党内では「文書と記憶とでは勝負にならない」と受け止める議員が多い。

さらに集中審議では「安倍首相の答弁はうそだ」などと野党に攻められ、安倍首相が「うその証拠を示してほしい」と怒りをあらわにする場面もあった。一国の首相が国会答弁で興奮するようではこれまた情けない。

森友学園への国有地売却問題や、自衛隊の日報隠蔽への質問でも安倍首相の答弁は歯切れが悪く、与野党のやじの応酬に油を注くだけだった。

■一読では客観的にみえる読売の巧みな社説

今回は読売新聞の4月12日付の社説から読んでいく。

読売社説は「学校法人『加計学園』を巡る問題が再燃している」と書き、次のように論じていく。

「衆院予算委員会で野党は面会や発言の有無をただした。安倍首相は柳瀬氏について『私は元上司として、信頼している』と語ったが、面会記録への言及は控えた」
「事実関係について、柳瀬氏には積極的な説明が求められよう」
「問題の核心は、学園の加計孝太郎理事長の友人である首相が不当に関与していたかどうかだ」

ここまではいいだろう。客観的に書かれており、「不当に関与していたかどうかだ」の部分も分かりやすい。

しかし書いているのは、論じることに手慣れた論説委員たちである。読者はだまされてはならない。

■本当にプロセスに問題はないのか

問題は次だ。

「首相は予算委で、『プロセスに問題はない。私から指示を受けた人は一人もいない』と改めて強調した。国家戦略特区の指定から開学に至るまでの一連の行政手続きで、首相の直接的な関わりを示す事実は出ていない」

本当にプロセスに問題はないのか。安倍首相は指示をしていないのか。直接的関わりはないのか。すべて安倍首相周辺や霞が関官僚の「忖度」とでもいいたいのか。

読売社説を読むと、安倍首相のこれまでの答弁に、うそのかけらもないことになる。

決してそんなことはないだろう。「愛媛県の文書はうそだ。首相案件などもない」と明言できないところにその答えがある。

さらに読売社説は「事案の細かい経緯を巡って、水掛け論に終始するのでは、生産的とは言えまい」と言い切り、11日の集中審議での野党の追及を批判するが、果てしてそうなのか。

ここは水掛け論に終わらせないためにも、与野党が力を合わせて柳瀬氏の証人喚問を行うなど徹底解明に向けて努力すべきではないだろうか。

■加計学園の問題では政権擁護が一段強くなる

さらに読売社説はこう指摘していく。

「四国は獣医学部の空白地で、公務員獣医師らの確保が長年の課題だった。文部科学省の大学設置・学校法人審議会が専門的見地から検討し、開設を認めるよう答申した事実は重い」

これまでの安倍首相の答弁と同じ主張である。読売は安倍政権擁護の論陣を張っているが、なかでも加計学園の問題になると、その擁護が一段と強くなる。

「加計学園が新設した岡山理科大獣医学部獣医学科には、募集人員を大幅に上回る出願があった。1期生を迎えて今月開学しており、影響が出ないよう配慮したい」

この書きぶりもどうだろうか。若い新入生の学生たちを人質にとるような書き方である。1期生と加計学園問題をいっしょに論じるようでは情けない。

■政権側が「面会がない」との根拠を示せ

4月12日付の毎日新聞の実に分かりやすい。

その書き出しは「求められているのは基礎的な事実の確定である。首相秘書官が愛媛県の担当者らと面会したのか、しなかったのか。見解の相違で済ますわけにはいかない」で、見出しも「加計文書に『コメントせず』 首相答弁は、やはり苦しい」である。

毎日社説は「一般に裁判では、記憶に基づく証言より文書記録の方が証拠能力が高いとされる。県側が記録に残した面会の事実が『なかった』と言うなら、政権側はその根拠を示すべきだ」と主張する。

安倍首相が「首相秘書官と愛媛県職員との面会がなかった」という証拠をきちんと示せば、国民は納得する。9月の自民党総裁選にも、胸を張って名乗りをあげることができるだろう。

■自分に不利な文書にはコメントもしないご都合主義

さらに毎日社説は安倍首相の矛盾点を追及しながら社論を展開していく。

「この問題では、首相と学園理事長が友人であることを理由に政権側が便宜を図った疑いがもたれている。今治市が国家戦略特区に申請する2カ月前にこの面会があったかどうかは問題の核心部分である」

安倍首相は加計学園の計画を「2017年1月20日に初めて把握した」と国会で説明してきた。愛媛県の面会記録の記述が事実ならば、安倍首相のこれまでの答弁はうそになる。

毎日社説は「愛媛県が『加計ありき』で長年、獣医学部の誘致に取り組んできたと加戸守行前知事が発言したとき、首相はそれを積極的に引用し、首相の関与を疑うメディアへの攻撃材料にも使った。自分に不利な文書にはコメントもしないというのは、ご都合主義ではないか」

これもその通りである。安倍首相にはこれまでも自分の主義主張と違う新聞やテレビを攻撃してきた。安倍首相の鼎の軽重が問われている。

終盤で毎日社説はこうも指摘する。

「いくら記録文書が見つかっても、言った、言わないの水掛け論で終わる状況が1年近く続いている。今回もそうなるなら、国民の政治不信に拍車がかかるだろう」

これもまったくその通りであり、沙鴎一歩は賛成する。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=時事通信フォト)

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