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「子を褒めて伸ばす」ブームで子が潰れる

プレジデントオンライン / 2018年4月17日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Yagi-Studio)

「うちの子、褒められると伸びるタイプです。だから叱らないでください」。育児本の影響なのか、そうした申し出をする保護者が増えている。塾講師の松本亘正氏は「甘やかされたままだと、ここぞという時に実力が発揮できなくなる。メリハリが必要だ」という。そんな松本氏が考える「叱り方の3カ条」とは――。

■子供を「褒めて伸ばす」ブームの負の遺産

子供を「褒めて伸ばす」のがブームになっている。

子供のいい面を見て、親がそれを認める。そのこと自体は推奨されるべきことだ。しかし、実際に子育てをしていると「褒めて伸ばすとよいとわかっていても、つい叱ってしまう」とこぼす保護者は多い。塾講師の私はそうした悩み相談をしばしば受ける。その際、私は「無理して褒めて伸ばそうと考える必要はありません。万人にあてはまる教育法など存在しないのですから」と答えている。

中学受験を目指す多くの小学生たちに接していると、子供のタイプは千差万別で、なかでも「聞きわけのいい子」と「聞きわけの悪い子」がいることに気付かされる。

もともと聞きわけがよく賢い子であれば、親はめったに叱る機会はないだろう。親が意識的に褒めなくても自然に褒める機会が多くなるから、それによって本人が勝手に自信をつけ、さらに伸びる。親としては理想の形だろう。

また、秀才タイプでなくても、真面目に努力できるコツコツ型の子も褒めれば伸びるタイプだ。ささいなことでもいい点をすくいとって褒めるとモチベーションが上がる。逆に、褒めないで放っておくと、本人は不安な気持ちになり、やる気を失うケースもある。

▼本番に強い子は「褒めて伸びる子」ではない

では、聞きわけの悪い子はどうか。

わが子が、調子に乗ってふざけやすいタイプや、うっかりミスが多いタイプだと、何かと叱ったり小言を言ったりすることがあるだろう。そういう親が育児本などを読んで「褒めて伸ばさなきゃ」と思って叱るのを我慢すると、ますます野放し状態になる。それでは結局、どこかで親も爆発して、親子間のバトルが過激になるだけだ。

中学受験生を指導していて、「偏差値50未満の子が偏差値65の駒場東邦に受かった」「偏差値30台の子が偏差値50以上の明大中野に受かった」といった逆転劇を毎年目にする。

このように土壇場で「逆転できる子」の多くは、「本番に強いタイプ」だ。そして、実を言うとこのタイプは「褒めて伸びる」子ではない。むしろ逆に、いつも親が手を焼き、塾でも何度も同じことを注意されてもなかなか改善されないタイプの子なのだ。

繰り返し叱っているのにまた同じことを繰り返してしまう、その時は反省しているけれど気づいたらどこ吹く風――。問題児ではある。

しかし、長い目で見ると、彼らはどこか肝が据わっていて、タフなメンタリティーの持ち主であることも多いのである。もし、「わが子を褒めたいけれど、つい叱ってしまう」状況にあるとすれば、保護者は気にせず自然体で叱ってもいいと私は考える。

とはいえ、子供の心をくじいてはいけない。そこで叱るときの注意点を3つあげたい。

■簡単に守れそうで守れない「子供を叱るときの3カ条」

塾講師の私が考える、子供を叱るときの3カ条は次の通りだ。

(1)他人と比べない。
(2)目の前で起こった出来事だけを注意する。
(3)短時間に叱り、なぜ叱られたかを最後に確認する。

(1)他人と比べない、の失敗例
「あなたはまだ繰り上がりの足し算もできていない。○○くんはもう割り算もできるのに」

そんな言い方で他人と比べられると、子供は心から悔しくなり、せっかく反省しようという気持ちがあったとしても、それを悔しさが上回り、聞く耳を持たなくなってしまう。結果的に親への反発心だけが残るので、自分のしたことや不足していることに向き合えない。

(2)目の前で起こった出来事だけを注意する、の失敗例
「どうして片付けが終わっていないの。昨日も片付けが遅かったし、前には××の忘れ物もしていたでしょ」

親が子供を注意しているうちに以前のことを思い出し、それとセットで問い詰めていくと注意の効果は激減する。子供は「ただ注意された」という事実だけが記憶に残るのだ。だから、子供は反省しているそぶりを見せても、その場が過ぎ去るのを待つようになる。

(3)短時間に叱り、なぜ叱られたかを最後に子供に確認する、の失敗例
「何が悪かったのか、わかった?」「わからない」
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Fertnig)

同じような過ちを繰り返す子の場合、親が注意していることをきちんと理解できていない可能性もある。特に、未就学や小学校低学年だと要注意だ。長く叱ったわりには、何が悪いのか子供が理解できていないことがある。明日の学校の準備を全然していない子にひと通り叱ったあと、何が悪かったのかを聞くと「お母さんを怒らせたのが悪かった」と答えてしまう。そんな不毛な時間は避けたい。

だから、短時間に簡潔に叱って、少し優しく聞いてほしい。「何が悪かったのか、次にどうすればいいかを教えて」。そして少しずれているなと思ったらその場で修正して、復唱させる。このアプローチは子供でも、新入社員でも同じこと。どうせ注意するなら、効率よく叱りたい。

■叱られていない子が「本番に弱い」理由

親は叱るときには決して感情的にならず、短時間で、ピンポイントで叱り、逆に褒める場面がやってきたら少しおおげさに褒める。そんなメリハリが有効だ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/JGalione)

中学受験を考えている家の保護者にありがちなのは、塾内のテストや模試の「結果(点数)」に関してくどくど叱ること。子供なりに勉強して努力した上での結果なのだから、それをとがめても意味はない。

親としては、安くはない塾費を投じているのだから、ちゃんと元を取ってくれよという気持ちもあるかもしれない。しかし、点数の低さを叱れば、自己肯定感が下がり、教育費の費用対効果はさらに低下することになる。この場合は、叱ることは避け、親子で今後の方策を一緒に考えていくという姿勢が重要だろう。

かといって、何でも「褒めて伸ばす」では困る。「悪いことは悪い」とはっきりさせないと、自己肯定感だけが強く、悪事を平然と行える人になってしまいかねない。勉強のプロセスに問題があったり、悪いことをしたりした場合には、きっちり叱らないといけない。

注意されるべきときに甘やかされた子供は、ここぞという時に実力を発揮することもできない。勝負どころで結果を出せるタフなメンタリティーは、甘やかされた環境では身につかない。緊張感のある場を経験したり、厳しい環境を耐えたりすることで身についていくものだ。

だから、叱られてもどこ吹く風のお調子者タイプだからといって悲観する必要はない。タフなメンタリティーの持ち主であること自体が貴重なのだ。その「才能」を認めてあげて、必要なときにはしっかり叱ってほしい。

(中学受験専門塾ジーニアス代表 松本 亘正 写真=iStock.com)

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