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経費削減"買うより借りたほうがいいもの"

プレジデントオンライン / 2018年5月1日 9時15分

写真=iStock.com/gyn9038

■たとえばパソコンはどうか

コピー機に始まり、パソコン、自動車、ウオーターサーバー……。普段、われわれが会社の中で何気なく使っている機器のなかには、リース製品が多く含まれている。

以前は、リースで設備を導入すると賃借対照表に計上する必要がなかった(オフバランス)。そのため、総資産額が実態よりも小さくなり、総資産利益率(=純利益÷総資産)が改善するというメリットもあったのだが、2008年、リース会計基準が変更され、上場企業などの大企業では、リース取引を賃借対照表に計上しないことは原則不可となった(ただし、300万円以下の少額リースはオフバランス可)。

「ただ、その影響はわれわれが想定した以上に小さいものでした」

そう話すのは、三井住友ファイナンス&リースの杉本裕志業務推進部長だ。しかし、その後、リーマンショックにより、企業の設備投資は激減。リース業界も打撃を受けた。とはいえ、ほとんどすべての企業がリースを利用していることに変わりはない。利用企業の割合は、1980年には57.8%だったが、現在では約97%だ。公認会計士の柴山政行氏は語る。

「かつては『リースなんてよくわからないものに手を出せるか』と言う人もいたでしょうが、世の中に浸透するにつれ、忌避するものではないとの認識が広まった。販売業者やメーカーの側も『リースを利用しますか?』と言いやすくなったことで、さらに利用率が高まったのでしょう」

■スモールスタートとリースは非常に相性がいい

買うべきか、リースにすべきか。リースの特徴を踏まえながら、企業の悩みを解決していこう。リースを利用すると、高額の機器を導入する場合でも、月々定額を支払うだけでいい。定額なので資金繰りのめどをつけるのが容易だし、1度に大きな持ち出しを行って、経営に負担をかけるリスクが抑えられる。数百万円の設備を買うために銀行から融資を受けようと思えば、担保を差し出したり、連帯保証を求められることもあるが、リースなら不要。信用枠や借り入れの枠を減らすこともない。

「世の中の動きが速いため、起業したり、事業を立ち上げる際に、資金を準備するより、スピードを重視する場面もある。スモールスタートとリースは非常に相性がいいんです」(柴山氏)

■節税効果との兼ね合いで購入するという選択肢も

その裏返しとして、製品の値段に加え、手数料などの付随費用が発生するため、買うよりも割高になってしまうのが、リースの最大のデメリットだ。

「割高になるということも含め、購入するか、リースにするかは、まずは経営状況との相談になります。運転資金が豊富にあるならば、少額の購入は問題ないでしょう。もちろん、高額のものであっても、節税効果との兼ね合いで購入するという選択肢もありえますが」(柴山氏)

たとえば、パソコンはどうか。以前と比べれば単価は下がったため、余裕があるなら購入しても構わないだろう。

「ただ、高性能なものが必要というなら、少し考えたほうがいいかもしれません。技術革新によって陳腐化するスピードも速くなっています。リースの場合、通常の減価償却よりも速いスパンで製品を入れ替えることも可能なため、購入するよりリースしたほうが有利な場合もありえます」(柴山氏)

また、企業が自社業務で自前のシステムを使用する場合でも、リースやレンタルを検討する余地がある。

「最近の傾向として、IoTやフィンテックなどの課題を抱えながら、限られたIT人材をより付加価値の高い業務にシフトするニーズは高まっています。そんな中、パソコンの調達、保管、配送やキッティング・ヘルプデスク・保守・廃棄に至るすべての機器管理をレンタル会社に一括アウトソーシングする事例が増えています」(杉本氏)

技術革新の影響を受けない少額の事務用品やオフィス家具であれば、購入してしまって構わないが、進化のスピードが速いものは、購入かリースかを検討したほうがいいようだ。

■リースを選ぶ理由、選ばない理由

また、リースの場合、リース期間が終了すれば、製品をリース会社に返却することになる。特に製造機械を必要とするメーカーの場合、長短の両面がある。メリットとしては、陳腐化のサイクルに合わせてリースを設定すれば、「減価償却が終わっていないから使い続けなければいけない」という事態を避けることができる。一方で、高い技術力を持ち、特殊な機械を使用しているような企業は注意が必要だ。

「コア技術はどこから漏洩するかわかりません。関わる人が増えれば、それだけ危険性は増すので、製造機械に限らず、企業の強みを生み出すような製品をリースすることは避けたほうがいいでしょう」(柴山氏)

事務の合理化も、リースを利用するメリットの1つだ。

「設備の固定資産税の計算や納付、台帳管理、機械保険の管理は、設備を購入すれば、その企業が行う必要がありますが、リースならリース会社が行うため、煩雑な手続きを減らすことができます。また固定資産管理のシステムを自前で持たずとも、利用できるサービスもあります」(杉本氏)

■「自動車」はリースの恩恵が大きい

その点で、リースの恩恵が大きいのは自動車だ。

「自動車を購入すると、いろいろな税金がかかり、固定資産として管理しなければいけないし、タイヤやエンジンオイルの交換など、メンテナンスにも手間がかかる。これは企業の大小を問わず、かなり面倒です」(柴山氏)

社用車の安全運転講習まで受けられる新たなサービスも登場している。

「営業車を多数抱える企業では、事故ゼロは今や経営課題でありますが、容易ではありません。営業車にトラックレコードを取得する機器を設置し、運転の傾向を分析することで、大きな効果が見込めます」(杉本氏)

自社の状況に合わせて、活用していこう。

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買うほうがいいもの
・少額の事務用品
・安価なパソコン
・少額のオフィス家具
・コア技術を支える特殊な製造機械
借りたほうがいいもの
・自動車
・高性能で高額なパソコン
・高性能な事務機器
・技術革新の影響を受ける製造機械
※取材を基に編集部作成

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柴山政行
公認会計士・税理士
大手監査法人を経て1998年に現在の柴山政行公認会計士税理士事務所を開設。2012年、柴山会計ラーニング設立。キッズBOKI主宰。
 

杉本裕志
三井住友ファイナンス&リース 理事・業務推進部長
1988年に関西学院大学卒業後、三井住友ファイナンス&リースに入社。北海道・都内営業部門などを経て2015年より業務推進部長。
 

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(ジャーナリスト 唐仁原 俊博 文=唐仁原俊博 撮影=真島 香 写真=iStock.com)

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