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国益より党利を優先するニッポンの政治家

プレジデントオンライン / 2018年4月26日 15時15分

今年4月、ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、産経新聞への寄稿で「国際情勢が激変する中で、日本の政治家、政党はいつまで森友問題なのか」と述べた。(写真=時事通信フォト)

■朝鮮半島の歴史が変わるときに、日本の国会は空転

国会が度々、空転している。

森友学園への国有地売却での決裁文書の改竄や口裏合わせ、加計学園の獣医学部新設をめぐって首相秘書官が「首相案件」と発言した問題、それに財務事務次官のセクハラなど、安倍政権の不祥事が一挙に噴き出し、真相の解明と責任の追及をしない政府・与党に対し、野党が反発しているからである。

その一方で日本の隣国の韓国や北朝鮮が歴史的な大きな節目を迎えようとしている。

今週4月27日には南北首脳会談が行われる予定だ。その後には国際史上初となる米朝首脳会談も控えている。

北朝鮮は核・ミサイルの開発を中止する意向を示している。しかしこれまで何度も国際社会を欺いてきた、したたかな北朝鮮を信用するわけにはいかない。

朝鮮半島が変わろうとしているなかで、日本はどうあるべきなのか。議論すべき大きな課題である。

■安保の強化と不祥事の真相解明は、どちらも重要

ところで4月12日付のこの連載の「安倍政権が“疑惑のデパート”になった原因」の中で、ジャーナリストの櫻井よしこ氏の主張を取り上げた。

「国際情勢が激変する中で、日本の政治家、政党はいつまで森友問題なのか」
「今こそ、全政治家に問いたい。日米安保体制を強化するとともに、なぜ、日本国の自力を高めるべく憲法改正に向かわないのか、と。憲法改正で日本国の歴史に名を刻む栄誉を担うのが政治家だ」

こうした櫻井よしこ氏の主張に対し、沙鴎一歩は「日米安保体制の強化などには反対ではない。ただ、森友学園の問題と同じ土俵で論じるべきではない」と反論した。

ここ最近、櫻井よしこ氏の主張をまね、安倍政権にくみする輩が多い。それは日本の社会にとってマイナスだ。それゆえあえて繰り返して訴えたい。

日本社会は安倍政権の不祥事に目をつぶってはならない。日米安保体制の強化も、不祥事の真相解明も、ともに国会で議論すべき重要な案件なのだ。

■朝日は「空転の責任は与党に」というが……

国会の空転はだれの責任なのか。まず4月24日付朝日新聞の社説を取り上げたい。

冒頭で「国会の空転が週明けも続いた。安倍首相が出席する衆参予算委員会での集中審議も見送られた」と書き、「政府内で不祥事が相次ぎ、立法府が厳しく行政監視の役割を果たすべき時に、時間の空費は決して許されない」と指摘する。

その上で朝日社説はこう主張する。

「この事態を招いた原因は、真相解明と政治責任の明確化を求める野党に『ゼロ回答』で応じた、与党の不誠実さにあると言わざるをえない」

見出しも「正常化の責任は与党に」だ。

さすが“安倍政権打倒”を目指す朝日新聞だけある。国会空転の責任を与党(自民党)に求める。「ゼロ回答」という批判文句も、組合運動が好きな朝日らしさが、にじみ出ている。

続けて「一例を挙げれば、加計学園の獣医学部新設をめぐり、(「本件は首相案件」と語ったという)柳瀬唯夫・元首相秘書官の証人喚問を拒否したことである」と書き出し、「柳瀬氏はその参考人として出席した昨年7月の国会で、『記憶がない』との答弁を繰り返した。今度は、偽証罪に問われる証人喚問で事実関係をただすのが当然ではないか」と訴える。

証人喚問には賛成だ。真相解明の手段として欠かせないからだ。しかし「空転の責任は与党に」という論調にはいささか疑問である。賛成はできない。

■日経は「不祥事続出でも審議が筋」と野党批判から始める

次に日本経済新聞の社説(4月24日付)を見てみよう。

「一連の不祥事は行政への信頼を揺るがしており、真相解明や責任追及は当然だ。だからといってそれが法案の審議などをすべて欠席し国会を長く空転させる理由にはなり得ない」

政府の対応に反発して国会審議を拒否している野党を批判する。見出しも「不祥事続出でも国会は審議するのが筋だ」と明確にそこを突く。

朝日社説とは正反対の主張である。しかも経済専門紙の日経新聞が他紙に先駆けて国会空転の問題を社説のテーマに選ぶのも珍しい。

日経社説は一連の安倍政権の不祥事を挙げた後、こう書く。

「安倍政権では森友、加計の両問題に加え、海外に派遣した自衛隊の日報の扱いなど国民の信頼を裏切る失態が続く。報道各社の世論調査では内閣支持率が急落した。一連の疑惑の解明と再発防止に向け、政府・与党が重い責任を負っているのは言うまでもない」

それなりに政府・与党の責任は認めてはいるのだが、まだ社説の中盤だ。この後の書きぶりが気になる。

■与野党双方に責任を求める日経は筋が通っている

そう思って読み進むと、次に「一方、今国会は重要法案の審議が軒並み遅れている」と指摘する。

そのうえで日経社説は審議すべき重要法案をひとつずつ挙げていく。

「生産性向上をめざす働き方改革や規制改革の関連法案は、与野党で政策論議を深めて早期に成立させる必要がある。成人年齢の18歳への引き下げや相続制度の見直し、受動喫煙対策の強化といった国民生活に密着した法案も多い」
「日本が主導して11カ国が署名した環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案や関連法案も今国会中に可決し、早期の発効に道筋をつけるべきだ。2国間の通商交渉を重視する立場を鮮明にして譲歩を迫っている米政府に対する、日本としてのメッセージにもなる」

日経社説は最後にこう主張する。

「政府への信頼は民主主義国家の土台だ。だが大きく変化していく世界のなかで、内向きの論争ばかり続けている余裕はない。国家的な課題と不祥事への対応を、ある程度は切り分けて論議していく必要が、与野党にはある」

この日経社説の結論には賛成だ。野党に国会空転の責任を問うのではなく、与野党に協力を求め、不祥事の真相解明と国家的課題の双方を国会で議論していくべきだ。国会の審議はだれのために行われるのか。間違いなく、すべての国民のために国会審議は存在する。

■諸悪の根源は「安倍1強」の無自覚さ

そもそも一連の不祥事がどうして起きたかを考えると、「安倍1強」という異常な体制に原因があったことがわかる。

2014年の内閣人事局の創設で、霞が関の主要官僚の人事を官邸が握った。霞が関の官僚たちは安倍晋三首相、官邸、それに閣僚政治家のご機嫌を取って自らの出世のテコにしようと懸命になった。そこから「忖度」という言葉がささやかれるようになった。

前述した朝日社説(4月24日付)は「行政の信頼を土台から崩す事態が後を絶たないのに、政権・与党の危機感の欠落ぶりは深刻だ」と指摘している。

その通りで、「安倍1強」の問題について、政府・与党はまったく気付いていない。

朝日社説は「国有地取引をめぐる財務省の決裁文書が改ざんされた森友学園の問題、財務事務次官が辞任に追い込まれたセクハラ疑惑は、財務省が今にいたるまで、まともな説明をしていない」と書き、「身内をかばい続け、責任の所在をあいまいにする麻生財務相の対応が不信を募らせ、混乱に拍車をかけている。政治責任、監督責任は極めて重大である」とも糾弾する。

■国民を無視し、ばかにした振る舞い

まともな説明をしない財務省と、身内をかばう財務相……。国民を無視し、ばかにした振る舞いである。

こうした諸悪の根源はやはり「安倍1強」政治にある。元凶は安倍首相本人の自覚のなさだ。そこを首相自身が理解しない限り、“疑惑のデパート”と呼ばれ続けるだろう。

いまは北朝鮮の核・ミサイル開発を完全に凍結させるため、国際社会がひとつになるべきときである。日本は、米国や韓国と協力して、朝鮮半島問題の解決に向けた道筋を立てなければならない。

朝鮮半島をはじめとする国際社会の激変に対応するには、政府が国民から信頼を得ている必要がある。そのためにも一連の不祥事については、証人喚問の実施など徹底した調査を行い、国民の信頼を取り戻さなくてはいけない。与野党ともに国会を空転させている場合ではない。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=時事通信フォト)

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