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老親を飯のタネにする"サ高住"の見分け方

プレジデントオンライン / 2018年4月30日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Nayomiee)

高齢者の入居施設である「サ高住」が急増しています。この5年間で2倍以上に増えていますが、問題のある施設も少なくないようです。特に運営会社が介護事業者を兼ねている場合、利用者に不要なサービスを押し付けることもあるといいます。その悪質な手口とは――。

■この5年で2倍以上に増えた「サ高住」の問題点

前回(※)は高齢者の恋愛問題を取り上げましたが、その舞台となったのが「サービス付き高齢者住宅(サ高住)」でした。
※狂おしく燃え上がる老人ホーム恋愛の末路

サ高住は、2011年の「高齢者住まい法」の改正で新しくつくられたもので、高齢者向けの機能が確保された民間の賃貸住宅です。利用者は、入居時に敷金・礼金のほか、毎月、家賃・管理費・食費・水道光熱費などを支払います。

年老いて体が衰えてくると生活するのにもさまざまな苦労や不安が生じます。食事を作る、掃除をするといった家事は大変になりますし、体に異変が生じて倒れてしまうこともあり得ます。息子や娘がケアできればいいですが、別居している場合は頻繁に様子を見に来ることも難しい。

そうした事情を抱えた高齢者や家族のニーズに応える形で登場したのがサ高住です。居室をはじめ建物内はバリアフリー化され、日中はスタッフが常駐し、「安否確認」と「生活相談」のサービスが受けられます。また、別料金になりますが、希望すれば朝昼晩の食事や居室の掃除、洗濯、買い物といった生活支援のサービスもあります。住み慣れた自宅を離れる寂しさはあるにせよ、サ高住に入居すれば本人も家族も安心、というわけです。

なお、介護保険による介護サービスは“基本的に”自宅で受けていたサービスと同じ扱いですが、例外もあるので、そのことは後述します。

▼要介護度が重くなると退所しなければならないケースも

在宅介護では、担当のケアマネジャーが作成したケアプランに従ってサービスを受けます。サ高住に入居すれば、その居室が自宅代わりとなり、そこへホームヘルパーがやってきたり、デイサービスへ通ったりするわけです。介護保険により原則1割負担となる料金も、各自が受けたサービスに応じて支払います。

「施設」ではなく「住宅」ですから、生活の自由度が高いのも特徴です。老人ホームなどの施設では限られた職員が多くの入所者をケアする必要上、1日のスケジュールが決められています。しかし、あくまで住宅であるサ高住は、1日をどう過ごそうと自由。だから、高齢者同士の「恋愛問題」も生じるのです。

現在、サ高住はどんどん増えています。5年前は全国で約11万戸でしたが、2018年3月現在では約23万戸。この5年で2倍以上になっているのです。

増えている理由のひとつは、比較的安価で入居しやすいから。高齢者施設で最も入所希望者が多いのは「特別養護老人ホーム」ですが、原則として要介護3以上でないと申し込めませんし、地域によっては入所まで長期間待たされます。それに代わる選択肢になるのが民間の「有料老人ホーム」ですが、こちらは家賃が高いというハードルがあります。

その点、サ高住は数も多く、比較的安価なので、人気があるのです。ただし短所もあります。自立して生活できることが前提のため、要介護度が重くなると退所しなければいけないのです。

■サ高住の運営者が「利潤追求」のためにしていること

ただし、例外もあるようです。首都圏近郊でケアマネジャーを務めるIさんはこう言います。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Boogich)

「最近のサ高住は多様化しており、必ずしも要介護度が重くなったら出なければならない、というわけでもありません。その背景にはこれまでの介護施設とは違う運営者が参入していることも影響していると思います。資産形成の手段としてマンションやアパートと同じようにサ高住に投資する人も多いのです。そのため『空室』を出さないために、介護度が重くなっても入居を続けられるサ高住もあるようです」

Iさんは「サ高住はどんどん多様化している」と強調します。どういう意味なのでしょうか。

「サ高住には条件があり、居室は25平方メートル以上でバリアフリー構造である必要があります。ワンルームのマンションの一室をイメージしていただければいいでしょう。何か異変が生じた時のための緊急通報装置もついています。普通の賃貸住宅とは異なるのは、キッチンと浴室がついているとは限らないことです。浴室やキッチンが共用の場合、居室は18平方メートル以上と少し狭くてもいいことになっています」

特に風呂は危険が大きいので、居室には浴室をつけず、共用にしているところが多いそうです。

「大浴場があればいいのですが、予算面から、ユニットバスを交代で使うようなところも多いようです。そうした浴室をスタッフが管理していて、次の人が来ると“そろそろ出てください”と言われる。のんびり長湯はできないのです。キッチンが共用の場合も同じです。だれかがキッチンを長時間占有すると、『自分が使えない』というトラブルにもなります。このためキッチンでの調理はさせず、食事は運営側の用意したもので済ませるところもあります」

▼食事は冷凍食品をレンジで温めて出すだけのところも

その場合、食事は各戸に配られるのではなく、食堂に集まって食べるところがほとんどとのこと。朝昼晩の食事で安否確認ができるからです。そのこと自体は利用者にとっては悪い話ではありませんが、実は運営側には別の狙いもあります。

「サ高住の経営者としては入居者の危険やトラブルのリスクをできるだけ避け、より合理的に安定した運営をしたいのです。食事提供はその一環で、利益の向上にもつながります。私が担当するエリアのサ高住の食費の相場は1日3食で約1500円。1カ月で4万5000円から5万円といったところです。もちろん栄養士が高齢者の健康に配慮した献立を考え、味にもこだわった手作り料理を出すところもあります。一方で、冷凍食品をレンジで温めて出すだけのところもあるんです」

サ高住は、施設にはない自由度の高さが魅力だと言われてきましたが、最近は運営側の都合で「管理」される色あいが強まってきているようです。

■高齢者を「囲い込み」して、税金を“浪費”する悪質業者

Iさんによれば、もうひとつ大きな変化があります。それは介護サービスも行う運営会社が増えている、ということです。そうした運営会社は、入浴などのデイサービスの拠点やヘルパーステーションをサ高住と同じ建物に設置しています。

これは利用者にとってはありがたいことに思えます。在宅介護でデイサービスを利用する場合、同じ建物内に施設があれば、送迎のクルマは不要で、エレベーターに乗るだけで済むからです。また、身近にヘルパーステーションがあれば異変が生じた時もすぐに対応してくれます。

しかし、Iさんは「利用者の受けられるサービスが限定されてしまう恐れがある」と懸念を隠しません。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Nayomiee)

本稿の前半で、サ高住で受ける介護サービスは“基本的に”在宅と同じと書いたのは、このためです。本来、介護サービス(掃除や食事作りなど)は利用者が自由に選択できるものです。だから、現在受けているサービスに不満があれば、ケアマネを通じて事業者を替えることができます。利用者は担当ケアマネを信頼し、要望を伝える。ケアマネはあくまで公正中立の立場で利用者の意をくみ対応する。この関係性でよりよい介護を模索するわけですが、サ高住が介護事業も手がけるとこの原則が崩れてしまう恐れがあります。

「介護事業を行っているサ高住では、ケアマネの変更を入居条件にしていることが多いのです。つまり自社の担当ケアマネでなければ入居できないというわけです。そうしたケアマネは当然、自社のサービスを優先してケアプランを作成します。家賃収入だけでなく、介護報酬も得られるように動くことがあるわけです」

▼不要な介護サービスを受けさせ、儲ける手口

そうしたケアマネは会社の利益に貢献するため、利用者の要介護度に応じて介護保険の上限額いっぱいまでケアプランを立てる傾向があります。つまり売り上げのために、必要のないサービスを受けさせることもあるようなのです。またサービスに問題があったとしても、その会社のサ高住に入居しているわけですから、簡単には変えられません。

こうした実態をうかがわせる調査もあります。在宅で介護サービスを受けている高齢者(要介護1~5)の場合、支給限度額の4~6割が一般的(厚生労働省調べ)なのに対し、大阪府が2016年末に公表した報告書によれば、サ高住(大阪府内)の入居者は7~9割にも達していたというのです。限度額ぎりぎりまで介護サービスを利用することは違法なことではありません。しかし、逼迫している国の介護保険の財政にさらなるダメージを与える可能性があります。

厚労省は過度の囲い込み対策として、サ高住の併設事業所が訪問介護を提供する場合、報酬が1割カットする、といった介護報酬を減らす制度も設けました。

以上のように、急増するサ高住には問題のある施設もあるようですが、Iさんは「悪いサ高住だけではなく、良いサ高住も増えています」と話します。次回は、そうした「良いサ高住の選び方」についてご紹介したいと思います。

(ライター 相沢 光一 写真=iStock.com)

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