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「人工知能のようだ」は最高の褒め言葉だ

プレジデントオンライン / 2018年5月26日 11時15分

写真は将棋の藤井聡太七段が2018年3月22日王座戦二次予選で勝利したときのもの。(AFLO=写真)

■人間の能力はどんどん低下していってしまうのか

人工知能が発達する時代には、人間の仕事がなくなったり、存在意義すら問われるようになるのではないかと不安に感じる人は多い。人間のやることがなくなってしまうだけでなく、そもそも人間の能力そのものが低下するのではないかという予測もある。

細かい計算や記憶はもちろん、仕事や人生における選択や判断まで人工知能任せにしてしまうと、人間の能力はどんどん低下していってしまうのではないかという懸念があるのだ。

確かに、人間の脳は楽をすればその分機能が低下する。脳の回路の機能を保ち、成長させるためには適切な負荷が必要である。人工知能の発達によって脳にかかる負荷が減ってしまえば、退化してしまうのは必然だろう。

その一方で、逆の側面もある。すなわち、人工知能が発達することによって、人間の脳にかかる負荷もまた強く、深いものになり、脳の働きはかえって増すという流れも考えられるのである。

将棋の藤井聡太七段の快進撃が止まらない。史上最速で昇段し、羽生善治永世七冠など有力棋士も次々と破っている。その常識を超えた強さは「異次元」のものであり、新時代の到来を告げているように見える。

藤井七段は、何故あそこまで強いのか? もちろん、その才能や努力といった個人的な要因も大きいが、時代の状況も見逃せない。

何年か前から、将棋の棋士たちは異口同音にコンピュータの活用が実力向上の鍵だと証言している。膨大な棋譜を検索、参照するのは当たり前だし、オンラインで対戦するのも日常の光景になっている。

さらに大きいのは、コンピュータのソフトの利用である。将棋のソフトは、人工知能による指し手の評価機能を搭載している。次の一手を選択したときにその意味を解析して、どれくらい勝利につながるかの「点数」を教えてくれるのである。

■「指し手が人工知能に近い」が褒め言葉になっている

棋士の実力が高いことを褒めるときに、「指し手が人工知能に近い」というようなことが言われるようになってきた。コンピュータの実力が人間の棋士を上回るようになった今、「まるで人工知能のようだ」というのは最高の賞賛でもあるのだ。

人工知能の存在を前提に鍛えている棋士たちは、それ以前の棋士たちとは異なる能力を持ち始めている。脳を鍛える「脳トレマシーン」が登場したようなもの。人工知能という脳トレマシーンの存在下、藤井七段をはじめとする棋士たちが飛躍を遂げている。

人工知能を従来の「脳トレ」を上回る「超脳トレ」の手段として用いるのは、間違いなくこれからのトレンドの1つになる。

例えば、英語力の向上。それぞれの実力に合わせて適切な課題を自動生成し、読む、聴く、話す、書くの「四技能」を鍛えるプログラムは、将来必ず出てくる。

特定のスキルだけでなく、人生の現状を把握し、今後の仕事や人生における課題を提示、評価してくれる人工知能の登場は、ビジネスパーソンの能力向上に役立つことになるだろう。

これからの時代は、人工知能を「超脳トレ」の手段として使う人が、藤井七段のような異次元の実力を身につけていくものと予想される。自分を高めるために人工知能を使いこなせるかどうかが、人生の成功、失敗の分かれ道になっていくのである。

(脳科学者 茂木 健一郎 撮影=横溝浩孝 写真=AFLO)

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