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日本代表・酒井宏樹が笑顔を絶やさぬワケ

プレジデントオンライン / 2018年6月12日 9時15分

撮影=千葉格

6月19日にロシア・ワールドカップ初戦を控えたサッカー日本代表。酒井宏樹選手(オリンピック・マルセイユ/フランス)は、23人の代表選手の中でも今シーズン、ヨーロッパでもっとも活躍した日本人だ。フランスのタフなリーグ、欧州のトーナメントを戦い抜いた強靭なメンタルはどう磨かれたのか。酒井選手は「ストレスや不安に強くなるためには、よく笑うことが重要です」と語る。トップアスリートが実践する最強のストレス解消法とは――。
※本稿は、酒井宏樹『リセットする力』(KADOKAWA)を再編集したものです。

■最強のストレス解消法「よく笑い、よく眠る」

勝つことを義務付けられたマルセイユというクラブのプレッシャーにさらされると、ストレスは日々増加していきます。

そこで、「なんとかそのストレスを軽減させる方法はないものだろうか」と模索しているとき、目に入ったのが近所のワイン畑やワイナリーでした。

そもそも僕は、フランスのマルセイユで成功するために、まずはこの土地を好きになりたいと思い、そのためにはこの土地のことを深く知る必要があるという考えにいたりました。そうした気持ちもあって、この土地自慢のワインに以前から興味を持っていたのです。

僕は柏レイソル時代やドイツのハノーファー時代はほとんどアルコールを口にしませんでしたが、フランスに来て少量のワインを飲むようになりました。

ワインを飲みながら友人と談笑して、気持ち良く眠って、次の日にはすっきりした状態で練習に向かう。まさに「よく笑い、よく眠る」を実践し始めました。フランスに来てから本当によく笑うようになったと自覚があるほどです。

そうやって、生活にメリハリをつけたおかげで、実際にストレスが軽減されたこともあり「もしかしたらお酒は悪くないんじゃないか」と思うようになりました。

それがルーティン化して、いまでも続いています。実際に、フランスに来て2年になりますが、体脂肪率はキープしているし、体重も変わっていません。それどころか心身のストレスから解放されて、良いパフォーマンスにつながっているとさえ感じています。

ただ、自分のなかで「ルール」はあります。それは、ワインで1日グラス1~2杯というもの。

もし自分に甘えて普段よりも多めに飲んでしまい、次の日の練習に支障をきたせば、せっかくのストレス解消方法が悪いパフォーマンスの原因になります。そうならないためにも、自分で設けたルールは必ず守るようにしています。だから適量であれば、僕はアルコールが悪いとはまったく思いませんし、マルセイユのワインを楽しみ始めたことで、この土地がもっと好きになったのも事実です。

日本では「アスリートは酒を飲んではいけない」という風潮があるのを感じます。もちろんお酒を飲むにしても限度はありますが、大切なのは自分に合っているか、合っていないかの判断です。もしフランスに来たばかりの頃、ワインを飲んで、コンディションやパフォーマンスが低下したのであれば、僕は「アルコールは自分に合わない」と判断して、いまのように飲んでいなかったように思います。

撮影=千葉格

■気持ちの切り替えスイッチを持つ

海外に来て僕自身が大きく変わったと思うのは、気持ちの切り替えがスムーズにできるようになったことです。

日本では、気持ちの切り替えがうまくできず、自分のミスで負けた次の試合は暗い気持ちを引きずっていました。また、気弱な性格が出てしまい、試合中ですらミスを引きずって、次の判断が遅れるなんてこともたくさんありました。正直、そんな自分をどうにかしたいと悩んでいたのも事実です。

そんな悩みを抱えつつ、海外初挑戦でハノーファーに移籍したときのこと。

ある試合で相手チームに好き勝手にやられて、ひどい負けた方をしたことがありました。海外の強豪チームと戦うとこんなにも個人の力の差を見せつけられるのかと、僕は正直へこんでいて、その気持ちを引きずったままでした。

しかし、チームメートのブラジル人選手は、次の日には何事もなかったかのようにケロッとした顔で練習に来ていたのです。

彼らはポジティブ思考で、とにかく切り替えが早いし、練習や試合にネガティブな感情を絶対に持ち込まない。この姿勢は見習うべきだと思いました。

それ以来、落ち込んだとき、気持ちが乗らないときにはどうやって次に向けて切り替えたらいいのか、チームメートの行動をつぶさに観察して参考にしていきました。

そうして、僕は切り替えのためのルーティンをつくることができました。メンタルがそこまで強くない僕には、自分に暗示をかけることで無理やり切り替える思考にするスイッチのようなものが必要だったのです。

その考えから生まれたルーティンが「握手」です。

試合でどれだけ自分が良いプレーをしても、逆に悪いプレーをしても、チームの結果が良くても悪くても、ロッカールームに引き上げてきたあとは、選手、スタッフを含めて1人ひとりと必ず握手を交わすことをルーティンとしました。

それによって自分自身に「切り替えろ」「前を向いてやるしかない」と暗示をかけ、気持ちをリセットするように仕向けています。そして、次の日も必ず笑顔で、選手、スタッフの全員と「おはよう」の握手を交わします。

僕としては、前の試合で一度リセットしたものに、今度は新しいスイッチを入れ直すような感覚です。どんな状態も、それは変えません。

■困ったときこそ「笑顔」の理由とは!?

他に、僕が気持ちの切り替えとして意識しているのは「笑顔」です。ハノーファーを観察していたときにわかったのが、みんなとにかく笑ったりして、自然体でいることでした。日本ではおそらく一歩間違えればヘラヘラしていると勘違いされるような場面でもリラックスしていたのです。

酒井宏樹(著)『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46』(KADOKAWA)

そこで僕もとにかく笑顔を心掛けるようになりました。すると、不思議と感情が柔らかくなり、自然と気持ちが前向きになっていきます。落ち込んだ感情を引きずり暗い表情をしているくらいなら、笑顔でいたほうが仲間も声をかけてくれるので、より気持ちの切り替えがスムーズにいくようになりました。

また、切り替えがうまくいくようになったことで、周囲からの信頼も厚くなり相乗効果が生まれたのです。以前は、「ヒロキ、昨日のミス、めっちゃ引きずってんじゃん」と思われていたのが、「あいつ、もう切り替えている。気持ちの強い選手になったな」に改善されたことで仲間に与える印象が好転していきました。

やはり試合では気持ちの強い選手は信頼されます。気持ちの弱い選手だと「あいつ、大丈夫かな」と味方に不安感を与えかねません。

繰り返しになりますが、僕はあまりメンタルの強い選手ではないです。だからこそスムーズに気持ちを切り替えて、メンタルの弱さとネガティブな感情を意図的に遠ざけるようにしています。

もし思うように気持ちを切り替えられないのであれば、リセットするためのルーティンをつくり、それを反復することで自分自身に「切り替えなさい」と暗示をかけてもいいと思います。

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酒井宏樹(さかい・ひろき)
プロサッカー選手、サッカー日本代表
1990年4月12日、長野県生まれ。千葉県柏市で育つ。柏レイソルU-15、U-18を経て2009年にトップチームへ昇格。2010年にJリーグデビュー。2011年にはチームの主力として活躍し、チームのJ1優勝とともに、ベストイレブン、ベストヤングプレーヤー賞を受賞。同年10月にはA代表に初選出される。本での活躍が評価され2012年にドイツ・ブンデスリーガのハノーファー96へ完全移籍。主力として活躍した後、2016年6月にフランスの名門オリンピック・マルセイユへ完全移籍。マルセイユ移籍後も確固たる地位を築き、不動の右サイドバックとして活躍。日本代表でも欠かせない存在として、2018年ロシア・ワールドカップでの活躍が期待されている。ツイッターアカウント:@hi04ro30ki

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(プロサッカー選手 酒井 宏樹 撮影=千葉格)

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