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安倍外交の限界「演出ばかりで中身ない」

プレジデントオンライン / 2018年6月28日 15時15分

得意だった「外交」すら怪しまれるようになった安倍首相。(時事通信フォト=写真)

■トランプから安倍へ、笑えないサプライズ

世界各地で生中継された史上初の米朝首脳会談は、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の「体制保証」が宣言されたが、安全保障上の最重要問題である核放棄のプロセスや弾道ミサイルの取り扱いなど、数多くの曖昧さを残した。

トランプ米大統領は今後もワシントンと平壌での相互訪問による交渉進展に自信を見せるが、米国内は非核化措置が実践される前の「アメ」に対して、「一方的な譲歩は米国の利益にならない」などと批判する声が噴出。対話による交渉進展には拍手喝采の韓国や日本など関係国も本音は複雑と言える。

とりわけ、米朝首脳会談で突如飛び出したトランプ氏による米韓合同軍事演習の中止表明や在韓米軍の縮小・撤退の示唆は「北朝鮮から何も引き出せない中での笑えないサプライズ」(外務省幹部)だ。

韓国の文在寅大統領は「慎重に検討する」と大人の対応に終始したが、日本政府は「米韓演習や在韓米軍は東アジアの安全保障に重要な役割を持っている」(小野寺五典防衛相)と懸念を示さざるをえなかった。

日本政府が注目したのは、拉致問題をめぐる北朝鮮側の出方だった。安倍晋三首相がトランプ大統領に問題提起を懇請し、米朝首脳会談で取り上げられたが、金委員長は日朝2国間で話し合う意向を示すにとどめたからだ。

■「今回も北朝鮮の姿勢には変化が見られない」

金正日総書記時代に拉致被害者5人が帰国し、その後は「拉致問題は解決済み」との公式見解を繰り返してきた北朝鮮が、再び日朝対話を行う考えを表明したことは「一定の進展」と受け止める声もあるが「非核化や経済支援の課題が進む中で踏み込んだものはない」(自民党幹部)と見る向きは少なくない。

安倍首相は「相互不信という殻をお互いに破って一歩踏み出したい」として金委員長との日朝首脳会談に強い意欲を見せ、萩生田光一自民党幹事長代行も「金委員長から『解決済み』という反応がなかったのは大きな前進」と鼻息を荒くするが、ある日朝関係筋はこう語る。

「今回も北朝鮮の姿勢には変化が見られないと言っていいだろう。金委員長は『なぜ日本は直接言ってこないのか』『いつでも対話する用意がある』としているが、首脳会談でテーブルを囲めば、その結果はこれまでのものを伝えるだけだからだ」

日朝両政府は2014年5月、スウェーデン・ストックホルムで拉致被害者の再調査で合意。北朝鮮は特別調査委員会を設置し調査を開始、日本は調査委が調査を開始する時点で北朝鮮への制裁を解除することにした。

先の関係筋によれば、この時点で北朝鮮サイドは調査結果をいつでも報告できる状態にしている。ただ、日本側は拉致被害者12人の消息について、北朝鮮が繰り返してきた「8人死亡、4人未入国」との立場を撤回するよう要求。日本政府は認定していないものの、拉致の疑いがある特定失踪者へも詳細な報告を求めており、その乖離はなお大きいという。

■拉致被害者調査の報告書を、日本政府として受け取れるか

18年5月下旬、首相官邸と外務省の幹部は都内で今後の対北交渉について話し合った。主要な議題は、北朝鮮とのストックホルム合意に基づく拉致被害者調査の報告書を日本政府として受け取るか否か、である。

「北朝鮮側の報告書をまずは受け取り、その真偽を日本として丁寧に調べ上げて追及すればいい」「いや、報告書を受け取れば、それが既成事実になる」「そもそも金正日総書記時代に『8人死亡、4人未入国』という公式見解を出しているのに、息子の金正恩委員長が変更できるのか」

これまで何度も繰り返してきた議論だが、この日も結論には至らなかった。

「拉致問題の安倍」として宰相までの階段を上っていった安倍首相に対しては、拉致被害者家族らから「今回のタイミングを拉致問題解決に結び付けてほしい」との期待が募る。ただ、政府内には、早期の首脳会談開催に前のめりになれば足元を見られ、最良の結果に結びつかないのではないかとの不安もある。

最近、菅義偉官房長官は「拉致がなあ……」とぼやくことも多い。ある政府高官は現状に苛立ち、こう漏らした。「リスクをとって首脳会談に臨むかだが、総理には無理だよ」。

(プレジデント編集部 写真=時事通信フォト)

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