G党が虎党上司と打ち解ける鍵は"カープ"

プレジデントオンライン / 2018年9月17日 11時15分

写真=iStock.com/Koji_Ishii

■「カープの弱点はここだ」で盛り上がろう

なぜ相手が阪神ファンだと、自分が巨人ファンだと切り出せないのでしょうか。簡単に言えば、「嫌われたくない」という思いがあるからです。野球に限らず、あなたが「○○のファン」と伝えるのは、ただの意見の表明。最初から相手に食ってかかるつもりならいざしらず、誰にも危害を加えていないし、加えるつもりもない。なのに、どうしてライバルチームのファンということを、表明しづらいと感じてしまうのでしょうか。

このような心理的な働きを、社会心理学では「バランス理論」の一種である「ABXモデル」で説明します。心理学者のセオドア・ニューカムがABXモデルを提唱したのは、1950年代のこと。

AさんとBさんがいて、ふたりがいま問題としているトピックの対象Xがある状況を思い浮かべてください。今回のケースで言えば、Aさんは巨人ファン、Bさんは阪神ファン、対象Xはジャイアンツです。Aさんは対象Xに好意的、つまりプラスの印象を持っている。対して、Bさんは否定的、つまりマイナス。このとき、A―Xはプラス、B―Xはマイナスとすると、全体のバランスは、双方の符号をかけあわせたマイナスとなり、両者の関係は不均衡、つまりネガティブなものといえます。この場合、全体の不均衡の解消のために、AさんとBさんの関係はネガティブになりやすいことをABXモデルでは予測します。

■水と油の関係を緩和する「共通の敵」

このモデルは様々なケースで応用ができます。もちろん、AとBの両者が巨人ファンで、対象Xがジャイアンツならば、お互いの関係はプラス、となります。AとBが巨人ファンと阪神ファンでも、対象Xが「プロ野球を応援すること」だった場合、どちらもプラスで「ファン心理」は共通しているので、AとBの関係もプラスで良好です。

また、Aが巨人ファンで、Bが阪神ファンでも、対象Xが広島カープで、ペナントレースで激しく争っているとすれば、A―Xはマイナス、B―Xもマイナスなので、かけあわせるとプラスになります。「カープの弱点はここだ」と、両者で盛り上がることもできるというわけです。

巨人ファンだと切り出せない、という悩みがあるのであれば、ABXモデルに落とし込めば、「では、どのような対象ならお互いをプラスに持っていき」うまく話せるのか、ということを整理できます。例えば、話題は、カープや西武打線でもいいし、野球界や審判への愚痴でもいいかもしれませんね。

ビジネスでも、職場での上司との関係、あるプロジェクトに対するスタンスなどを、漠然と捉えるのではなく、ABXモデルに落とし込んで整理するのもいいでしょう。

もしかすると、今回のケースでは、阪神ファンである相手は、阪神ファンという以前に「苦手な上司」で、だからこそ言い出しにくいのかもしれません。無理に相手への印象を操作しようと努力するより、苦手な相手には、普段から「ありがとう」「こんにちは」と感謝や挨拶を欠かさないようにして、苦手意識を和らげるほうがいいように思います。

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竹村和久
早稲田大学文学学術院教授
著書に『行動意思決定論―経済行動の心理学』『経済心理学―行動経済学の心理的基礎』など。

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(早稲田大学文学学術院教授 竹村 和久 構成=伊藤達也 写真=iStock.com)

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