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安倍1強になびく"ゾンビ議員"たちの最期

プレジデントオンライン / 2018年7月28日 11時15分

2018年7月24日、記者会見を終え、一礼する自民党の岸田文雄政調会長(左から2人目)。9月の自民党総裁選挙への不出馬と、安倍晋三首相の3選を支持する考えを表明した。壁には宏池会出身の宮沢喜一元首相と鈴木善幸元首相の顔写真が飾られていた。(写真=時事通信フォト)

■総裁選は安倍首相と石破茂元幹事長との一騎打ちか

自民党の岸田文雄政調会長が7月24日、9月の総裁選に立候補しない意向を表明するとともに、岸田派として党総裁の安倍晋三首相の連続3選を支持する方針を示した。

これで総裁選は安倍首相と、出馬の準備を進める石破茂元幹事長との一騎打ちになる公算が大きくなった。

安倍首相は党内7派閥のうち、細田派、麻生派、二階派の支持をすでに得ている。石原派も安倍首相支持に回る見通しで、結局、安倍首相は無派閥議員も含め、国会議員票(405票)のうち、およそ300票を固めている。

岸田氏の不出馬表明で、安倍首相がさらに優勢になったことは間違いない。自民党は「安倍1強」にすがりついて来年の参院選と統一地方選を勝ち抜こうという魂胆なのである。

安倍首相が再び総裁に就いて安倍政権を継続すると、安倍1強はますます強くなるばかりだ。官邸主導の政治はさらに強化され、その結果、霞が関の役人たちは忖度に走り、森友・加計学園疑惑を上回る問題が起きる可能性がある。最近、文部科学省の局長や統括官が収賄容疑で逮捕されたが、同様の汚職事件も多発するだろう。

何よりも怖いのは、政権の長期化によって政治が活性化しなくなることだ。政治家が政治の本道を忘れ、自己の利益追求を優先する。政治家のための政治が当たり前になる。その結果、痛い目に遭うのは私たち国民なのである。

■「自民党に広がる閉塞感を表していないか」

岸田氏の不出馬を巡って新聞各紙の社説もそれぞれの視点から主張している。

7月25日付の毎日新聞の社説は冒頭部分で「これにより総裁選は、首相が一段と優位になったのは確かだろう。だが候補の一人がこうして早々と戦線離脱すること自体、『安倍1強』状況の下で自民党に広がる閉塞感を表していないか」と訴える。

毎日社説は「衆参両院で自民党が多数を占める今、総裁選は事実上の首相選びの場だ。中でも今回は首相が3選されれば、首相在任期間が戦前、戦後を通じて最長となる可能性が出てくる重要な選挙である。しかも2015年の前回総裁選では安倍首相が無投票で再選された。今回、複数が立候補すれば政権復帰後初めてとなる」と解説する。

やはり沙鴎一歩が前述したように「首相在任期間が最長」ゆえの深刻な問題は起きる。

そこを毎日社説はこう指摘していく。

「第2次安倍政権が発足して、もう5年半が過ぎた。官邸が官僚の人事を握り、それを恐れる官僚が首相らに忖度する弊害が指摘されて久しい。首相自らの問題でもある森友、加計問題も決着せず、財務省は文書改ざんまで引き起こした」
「安全保障関連法など反対意見を封じて与党の数の力で成立させる強引な手法も目立った。経済政策も当初、アピールしていたような成果をあげているとは言えず、首相は『まだ道半ば』と繰り返すばかりだ」

どの指摘もその通りである。

■「国民を巻き込んだ総裁選」を考えてほしい

さらに毎日社説は「岸田氏が不出馬を決めたのも、安倍首相と戦えば、総裁選後の党人事や内閣改造で自ら率いる派閥に不利になるかもしれないとの計算が働いたと思われる」とも指摘する。

岸田氏が毎日社説の指摘するような政治家だとすれば、自己の利益追求を考えた行動だ。

最後に毎日社説は「国民を巻き込んだ総裁選」を訴える。

「かつて多くの首相候補が激しく争っていた頃は、総裁選は政策や政治姿勢を転換し、国民の党に対するイメージを変える場でもあった。政権党の開かれた論戦は国民全体にとっても有益だ。『安倍首相3選』の結論ありきで、多様な議論が展開されないとすれば、これもまた民主主義の危機と言うべきである」

国民あってこその総裁選なのである。自民党はそれを忘れている。自民党には一度、原点に返って政党の在り方というものを考え直してほしい。

■朝日は「我も我もと『安倍1強』に付き従う姿」と批判

次に朝日新聞の社説(7月26日付)を見てみよう。

朝日は1番手の社説で「1強になびく危うさ」との見出しを掲げ、まずこう指摘する。

「5年7カ月に及ぶ長期政権の下、我も我もと『安倍1強』に付き従う姿は、闊達な論争が失われた党の姿を映し出す」

沙鴎一歩は「自民党は『安倍1強』にすがりつき、来年の参院選と統一地方選を勝ち抜こうという魂胆なのである」と書いたが、「我も我もと『安倍1強』に付き従う姿」とは朝日社説らしいいやらしさが多少あるものの、的を射た表現だ。安倍1強の結果、「闊達な論争が失われる」のも、その通りである。

朝日社説は「結局のところ、不出馬の決断で1強政治の継続を肯定したことになる」と書いて「背景には人事での処遇をちらつかせる党内の権力闘争があるのだろう」と推測し、「安倍氏を支える麻生副総理兼財務相は先月、『「(総裁選で)負けた時には冷遇される覚悟をもたねばならない』と揺さぶりをかけた」と麻生氏の“嫌がらせ”を挙げる。

そのうえで「こんな発言がまかり通ること自体、1強のおごりを示しているというほかない」と鋭く批判する。

「1強のおごり」。安倍政権をひと言で表現すると、この言葉に尽きる。

■岸田氏の不出馬は「忖度」なのか

さらに朝日社説は「従う者は厚遇され、意に沿わないものは冷や飯を食う」と批判し、「森友・加計問題で、行政の公正性と政治への信頼を損なった忖度の構造が、官僚だけでなく、選挙で選ばれた国民の代表たる国会議員の間にも根を広げているのは憂うべきことだ」と主張する。

果たして岸田氏の不出馬は忖度なのか。

朝日社説らしい見方だが、勢いに乗った安倍首相とは一戦を交えずにポスト安倍をしたたかに狙うのだろう。したたかさは政治家にとって欠かせない。今回の不出馬表明はそちらの方ではないか。

朝日社説は「強引な国会運営にしろ、政権をめぐる疑惑の放置にしろ、1強政治の弊害が誰の目にも明らかな今、総裁選で示される自民党の選択は極めて重い」と自民党の責任を指摘し、そのうえで「党内では石破茂元幹事長らが出馬の意向をみせており、前回2015年のような無投票にはならない見通しだ。どこまで政策論争が深まるか、党員・党友による地方票の行方とともに注視したい」と訴える。

最後に指摘する。

「1強の裏に広がるのは、活力なき政治だ。一人の権力者になびくだけの現状は危うい」

朝日社説は安倍1強の結果、生まれたのが「活力なき政治」と指摘しているわけだが、これには賛成である。

■ゾンビのように付き従うだけの与党議員たち

読売新聞も7月26日付の1番手の社説で自民党総裁選を扱っている。

前半で読売社説は「岸田派内には、首相に立ち向かうべきだとの主戦論もあった。既に細田派と麻生派、二階派が首相支持の方針を固めている。岸田氏は、立候補しても展望は開けないとみたのだろう」と書く。

そのうえで「要職をこなして研さんを積み、今後に備えるべきだ。岸田派の結束維持も課題である」と岸田氏に呼び掛ける。ずいぶんと優しい社説である。岸田氏はさぞ喜んでいることだろう。

持論だが、新聞の社説は政権擁護よりも批判に重点を置くべきだ。そのあたりを社説担当の論説委員が理解していないのだろう。

そんな読売社説ではあるが、評価に値することも述べている。たとえば次のような主張は社説として的確だと思う。

「出馬に強い意欲を示す石破茂・元幹事長は、党員の支持を広げる狙いから地方行脚を精力的に続けている。首相とは異なる政策を掲げて論戦を挑んでもらいたい」

異なる政策で論戦を挑んでこそ、国民を巻き込んだ総裁選に近づくことができるのだ。

「3年前の総裁選で、首相は無投票再選を果たした。6年ぶりとなる選挙戦を自民党は党の活性化につなげるべきだ」

沙鴎一歩も指摘したが、「活性化」が重要なキーワードなのである。朝日は「活力」という言葉を使って表現していた。いま政治から活力が失われ、与党の議員はゾンビのように安倍首相に付き従っている。それでいいのだろうか。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=時事通信フォト)

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