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"だったら密談でやる"安倍首相の開き直り

プレジデントオンライン / 2018年8月2日 15時15分

2018年7月25日、自民党岡山県連関係者(左から2人目)による西日本豪雨に関する緊急要望書を受け取る安倍晋三首相。このあと夜に、山口県議らと非公表の懇談を行ったと報じられている。(写真=時事通信フォト)

安倍晋三首相と石破茂自民党元幹事長の一騎打ちの構図となってきた自民党総裁選。安倍氏優位との見方が支配的だが、双方とも国会議員と党員という「有権者」集めに神経をとがらせている。そんな中、現職首相として3選を目指す安倍氏のスタイルが物議をかもしている。安倍氏と議員たちとの会合を秘密にしておく「ステルス戦術」とも言われるこの手法。それでいいのか――。

■「何を根拠に……」楽勝説を退ける安倍氏

「何を根拠に圧勝というのかな」。安倍氏は最近、こんなセリフをよく口にする。安倍氏の周りには老壮青を問わず、自民党議員が群がる。安倍氏が総裁選で3選すると見こし「流れは決まった」「確実に勝てる」などと耳打ちして勝ち馬に乗ろうとしているのだ。

安倍氏も、その場では笑顔で応じるのだが、議員が去ると「何を根拠に……」というぼやきが出る。自分のご機嫌を取って人事で重用してもらおうという思惑が見え透いているので苦々しく思っているということもあるが、安倍氏は本当に自分の勝利に確信を持っていないというのも事実だ。

自民党幹部や、内閣情報調査室の幹部らが、どれだけ精緻なデータを報告しても、安倍氏はなかなか信用しない。それだけ3選を重くみており、わずかなスキもつくらないようにしようとしている。2006年、圧倒的支持で首相に祭り上げられながら、1年後には国民からも自民党からも見放されて転がり落ちた経験のある安倍氏は、うつろいやすい権力のリアルを知っている。

自身の出身母体である細田派と麻生派、二階派の「主流3派」で国会議員の約半数を占めているため、議員に対する多数派工作は主に無派閥の若手。同時並行で地方議員への働き掛けも続けてきた。平日は都内で、週末は地方に出向き地方議員たちと顔を合わせてきた。来春には統一地方選がある。安倍氏とツーショットの写真を撮れば自分の選挙に有利になると考える地方議員の心理を巧みにくすぐりながら運動を進めてきた。

■「赤坂自民亭」で総裁選運動は自粛モードに

状況が変わったのが7月5日。赤坂の衆院議員宿舎で行われた宴席「赤坂自民亭」に安倍氏も出席した。自民亭への出席も、安倍氏にとっては選挙活動の一環で、実際若手議員と写真を撮りながら「呼んでくれればどこへでも行く」と声をかけていた。

この時既に西日本豪雨の深刻な被害が予測される状況だったため、危機管理対応のまずさを批判された。このあたりの事情は既報の「大炎上『赤坂自民亭』は何が問題だったか」で詳しく解説しているので参照されたい。その結果、安倍氏は総裁選に向けた対応を極力控え、災害対応に専念する姿勢を見せてきた。

安倍晋三首相らが7月5日夜に参加した懇親会「赤坂自民亭」の集合写真。西村康稔官房副長官のツイッターより

■日本テレビと共同通信が報じた「ステルス戦術」の中身

「ステルス戦術」が明らかになるのは7月下旬のことだ。日本テレビと共同通信が続けざまに注目すべきニュースを発信した。

日テレの報道は24日昼、自民党無派閥議員が首相公邸に集まり安倍首相とランチ会合を持ったというもの。共同通信は25日夜、同じく公邸で山口県議ら約30人と安倍首相が懇談したと報じた。報じられた2つの会合は、首相官邸側が公表していない。会合そのものが明らかになるのを避けようとする「ステルス戦術」をとったのだ。

首相の動静はいつもメディアにチェックされていている。面会した人物は事務方が非公式に記者側に伝えることになっている。新聞各紙の政治面には「首相の1日」が掲載されている。しかし24、25日の会合は、出席者は裏口から出入りし、事務方も会合の事実を伝えなかったため、マスコミの網をくぐり抜け、新聞には掲載されなかった。2つの会合は報道で表に出たが、まだ明らかになっていない会合があるかもしれない。

首相側が会合の事実をふせた理由は、聞かなくてもわかる。災害対応に集中していることになっている手前、首相公邸で多数派工作を行っていることは知られたくなかったのだろう。「自民亭」は、安倍氏らがのんきに乾杯する姿がSNSで拡散されて批判を受けた。その反省で会談を控えるのではなく「ばれないように内緒で会合する」ことにしたのなら、本末転倒も甚だしい。

■政権の隠蔽体質をあらためてさらけ出した

新聞の「首相の1日」は、必ずしも真実が書かれていないということは、これまでも指摘されてきた。官邸や公邸の出入り口には「見張り」の記者がいるが、別の通用口を通れば分からない。いったん建物内に入ってしまえば、首相に会ったかどうか分からない。

また、官邸や公邸に入ったのが確認されても、事務方が「官房長官と会っただけだ」と説明すれば、反証するのは難しい。ホテルなどで「秘書官と食事」などと広報しておきながら、実は重要人物と会っていた、というようなこともある。

会合を秘密にするのは、会った相手に迷惑がかかるのを避けるため、という場合が多い。政治的に中立な有識者、野党関係者らと会う時などだ。政府・与党の幹部との会合でも、衆院解散の決定など重大事案を相談する時は、極秘にすることがある。

今回は事情が違う。自民党の国会議員や地方議員なら伏せる必要は全くない。安倍政権は「森友」「加計」問題などのスキャンダルや官僚の不祥事に対して説明責任を果たしていないという批判を受け続けている。今回の「ステルス戦術」も、政権の隠蔽体質をあらためてさらけ出した。

出席者がたくさんいて送迎の車の出入りも激しかったのにそれを見落としたメディアの方にも相当問題はあるのだが……。

■参加者の一部には「極秘会合に参加した」と高揚感

2つの秘密会合は、予想外の効果も生んだようだ。出席者には「会合のことは口外しないように」との箝口令が敷かれたという。そのことによって出席者の中には「公邸で行われた極秘な重要会合に自分は参加した」という妙な高揚感が漂っている。

恐らく出席者の多くは総裁選で安倍氏を支援することになるだろう。だとすれば「ステルス戦術」は安倍3選に向けて好影響を及ぼしたということになる。計算ずくだったとしたら、安倍氏の人心掌握術は相当なもの。権力を維持しようというしたたかさでは、石破氏らには足元にも及ばないということか。

(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

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