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"平均寿命より長生きするのが普通"のワケ

プレジデントオンライン / 2018年9月29日 11時15分

■「平均値」と「中央値」と「最頻値」は何が違うか

数学のなかで特にビジネスの現場で活用されているのが「統計」であり、多くのビジネスパーソンも身近な存在として感じているはずである。そうした統計の一例として、誰もが関心を持っているであろう自分たちの「寿命」に関する統計について考えてみたい。

統計ではよく「平均値」が使われる。平均値は統計の代表値の1つで、「平均寿命」も平均値である。そのほか代表値には、「中央値」と「最頻値」があることはご存じだろうか。

まず、平均寿命の計算法を、2016年の「簡易生命表」(厚生労働省)を基に見ていこう。

平均寿命は、その年の各年齢ごとの死亡率から算出する。まず男女それぞれ10万人が生まれたとする。この数に0歳の死亡率(男0.00194%・女0.00198%)を掛けて、男194人・女198人が亡くなって、残り男99,806人・女99,802人が1歳を迎える。

その数にさらに1歳の死亡率を掛けて、男31人・女29人が亡くなって、男99,775人・女99,773人が2歳になる。この計算の繰り返しである。「簡易生命表」では105歳以上がひとまとめになっているので、そこで全員が亡くなると考える。

こうしてできあがった各年齢ごとの死亡者数、それは「2016年の各年齢ごとの死亡率・生存率に従うと想定したときの、男女10万人ずつの各人が生きた年数」であり、その平均値が「平均寿命」なのである。具体的には「年齢×死亡者数」で年齢ごとの小計を計算し、その和(生存年数の合計)を人数(10万人)で割った数字。結果は「男80.98歳、女87.13歳」となり、厚生労働省発表の2016年の平均寿命の値とほぼ一致することがわかる。

■現実には「平均寿命よりもっと長生きする」ほうが普通

そしてここまでくれば、寿命の平均値だけでなく、中央値や最頻値を求めるのもすぐそこである。「最頻値」は、すでに求めた「各年齢ごとの死亡者数」の中で数が最大になるところ。つまり「男87歳、女93歳」が最も多くの人が亡くなる年齢ということだ。先ほどの平均寿命と比べると、ともに6歳ほど高い。

また「中央値」は「累積死亡者数」が5万人(10万人の半分)に達したところで、「男83歳、女89歳」となる。こちらも平均寿命よりそれぞれ約2歳高い。

男女ともに最頻値と中央値が平均寿命より上というのは、やや意外な感じがするのではないだろうか。若くして亡くなる人が一定数いるので、平均値はその分低めになる。だから、平均寿命が平均的とは限らない。現実には「平均寿命よりもっと長生きするほうがむしろ普通だ」ともいえるのだ。

このように統計は代表値によって、見え方が大きく変わる。年収や資産などお金の話も同様で、平均値だけでなく、中央値や最頻値にも目を向けると違った面が見えてくる。

実は、私は中高一貫校で数学の教師を務めており、高校1年の生徒に自分が関心のある分野のデータ集めから、エクセルを使ってのグラフ化まで行わせている。そのなかで生徒たちは、現実を見る複眼的な思考を学ぶ。皆さんも何か身近な興味のあるデータを、分析してみたらどうだろう。

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大森 武
私立早稲田中学・高等学校教諭
1962年生まれ。85年、早稲田大学理工学部を卒業し、同校の数学科教員として勤務。「教員こそ多様性が大事」という信念のもと、あえて具体的に道具としての数学の使い道を伝えることを心がけている。著書に『高校生が学んでいるビジネス思考の授業』がある。

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(私立早稲田中学・高等学校教諭 大森 武 構成=田之上 信)

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