証券会社の女性部長が"必ず夢を聞く"ワケ
プレジデントオンライン / 2018年8月7日 9時15分
■「本当は保育士か幼稚園の先生になりたかった」
「欠点が見つからないのが、部長の欠点です(笑)」と部下が信頼を寄せるのは、真っ白なスーツと人懐っこい笑顔が印象的な齋藤美和さん。SMBC日興証券でプライベート・バンキング部門の部長を務めている。
「大好きなアインシュタインをはじめ、歴史の偉人たちの名言集は、時間があるとよく読みます。読んですぐより、後からじわじわ言葉の意味が染みてくることが多い気がします」
「本当は保育士か幼稚園の先生になりたかった」という齋藤さんが証券会社に就職したのは、「1度はハイヒールを履いて仕事をする経験をしたかった」から。
出身である北海道で地域限定の一般職として就職し、来店する顧客の窓口対応をしていたが、当時の上司に勧められ外回りをして顧客開拓などの仕事にも挑戦し始めた。すると、次々と契約が取れるようになり、仕事が面白くなっていった。その後、上司の勧めもあって総合職に変わり、東京に転勤。28歳で千葉の松戸支店の課長になった。
「当時の課員は全員女性で、14人いました。そのうち、半分以上が入社1、2年目の若手。全員一般職の彼女たちのモチベーションを上げ、どう仕事に生かしていくかは大きな課題でした」
■「必ず最初にその人の夢を聞くことにしている」
まずは、一人一人に「好きな店に連れて行って」と声をかけて個別にリラックスして話す時間をとり、相手を知ることから始めた。
「必ず最初にその人の夢を聞くことにしているんです。お客さまにありがとうと言われたい人もいれば、お金を貯めてブランドバッグを買いたい人もいる。女性には仕事をする理由があります。それぞれの夢を、仕事を通して何らかの形でかなえてあげることを大事にしています」
ちょうど会社が一般職の女性の活躍機会を広げようと、窓口対応だけでなく外回りでの顧客開拓なども経験させることを推進し始めたとき。部下たちにきちんとその必要性や面白みを説明。そして担当支店の顧客属性を分析すると、男性の富裕層が多いことに気づいた。
「私は何か課題があると、動く前にとにかく分析して考え続けるんです。そのときも考えていくと、そうした男性富裕層の奥さまやお子さまたちが相続対策に悩みを持っていることがわかり、部下には家族の話を聞いて、ご希望に沿ったものを提案するようにアドバイスしたのです」
すると、契約が次々決まり始め、営業成績は全国トップクラスに躍り出た。課として何度も債券や保険の大会で表彰されることになった。
しかし、不況でこれまで顧客に株を勧めてきた会社が赤字決済に陥り、顧客にも影響が続いた時期には、みんなの顔がどんどん暗くなっていったという。
「そのときはつらかったです。みんなが苦労しているからこそ、私が率先して動く姿を見せないといけないと思い、顧客の損失の手続きなどを全員の担当分を一手に引き受け、週末や深夜まで取り組んだこともありました。アインシュタインの言葉にもありますが、まずは自分でやってみること、それがまた自分の学びにもなっていくことは、管理職になってからさらにかみしめています」
経験を重ねた今でも、顧客となる企業の経営者たちはあらゆる難局を乗り越えてきただけに人を見る目は厳しい。ゆえに、顧客について学び、分析し、期待以上の成果で応えられるよう準備をしている。
「多忙な経営者の方たちなので、時にはランチタイムにお弁当を持参し、一緒にいただくこともあります。でもそうやって『どうしたらできるだろう』と考えるのって楽しいですよ」と朗らかに笑う。
常に自分が率先して行動する姿を見せ、部下が壁にぶつかれば解決策が見つかるまで一緒に悩み抜く。さらに自分を磨くためにも、日々読書や勉強は欠かさない。そんな彼女の姿を見ている後輩たちが次に育っていくだろう。
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The only source of knowledge is experience.
―Albert Einstein―
何かを学ぶためには、自分で体験する以上にいい方法はない。
●アルバート・アインシュタイン(1879~1955)
ドイツ生まれの理論物理学者。特殊相対性理論および一般相対性理論、相対性宇宙論など様々な理論を提唱。1921年にノーベル物理学賞を受賞。子どもの頃から数学や物理学で類いまれな才能を発揮する一方、言葉の理解は遅かった。スイスの大学で学んだのちドイツに戻ったが、第2次世界大戦が始まりユダヤ人迫害を逃れ、のちにアメリカに移住した。
当時の私
28歳で初めて管理職。部下の女性たちのモチベーションをどうやって上げるかとともに成果につなげるのか悩んでいました。自分も地方支店の一般職出身だったので、彼女たちの働きやすさとは何かを日々考え、トライ&エラーの連続でした。
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(ライター 岩辺 みどり 撮影=市来朋久)
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