安倍首相が"3選圧勝"に執念を燃やすワケ
プレジデントオンライン / 2018年8月15日 9時15分
■なぜ現職の首相が「どぶ板選挙」に徹するのか
安倍氏の地方議員との懇談は、執念すら感じさせる。8月9日、「原爆の日」の式典出席のため長崎に出向いた時は、式典や被爆者との懇談の後、長崎空港で地元の党県連会長らと懇談。翌10日は、公務の合間を縫って、党石川県連の国会議員、県議団と昼食会談を行った。その後、首相公邸から官邸に場所を移し、梶山弘志茨城県連会長と会っている。
新たに総裁の座を目指す挑戦者ならいざ知らず、現職の首相の運動とは思えないような「どぶ板」選挙。安倍氏がここまで、きめ細かな運動を行っているのは、誰よりも厳しい票読みのもとで必勝を期しているからだ。
7月、西日本豪雨での政府の対応が後手に回り批判された頃は、地方議員らとの会合は極秘裏に行う「ステルス作戦」をとっていたが、最近は禁を解き、堂々と会合を繰り返している。このあたりの事情は既報の「安倍総裁3選を阻止するただひとつの方法」「“だったら密談でやる”安倍首相の開き直り」で詳しく説明した通りだ。
地方議員らと細やかに会い支持を求める選挙に徹しているのは、他にも理由がある。それは今回の総裁選が「戌年」に行われるからだ。
■来年は4月に統一地方選、7月に参院選がある「亥年」
永田町関係者の間では「亥(い)年政局」という言葉がある。亥年は、12年に1度、統一地方選、参院選の両方が行われ、政局が激動することが多いのだ。統一地方選が4年に1回。参院選が3年に1回なので両方行われるのは12年に1回となるのだが、来年2019年が亥年にあたり、4月に統一地方選、7月に参院選があると予想される。そして今年の総裁選は、その前年、つまり戌年に行われる。
当然ながら総裁選は来年の2つの選挙をにらみながら行われる。古手の衆院議員は「国会議員も地方議員も、一番大切なのは自分の当選。選挙が近づいてくれば、その傾向はどんどん強くなる」と明かす。「戌年総裁選」では地方議員と参院議員の心を捕らえた方が優位に立つ。
安倍氏は、そんな議員心理を利用して、小まめに地方議員と懇談し、握手し、ツーショットの写真に収まる。現職首相との写真は、ポスターに使うもよし、ホームページに貼り付けるもよし。保守系議員にとって中央との太いパイプが大きな売り物となるが、ツーショット写真は、それを強調するには最大の武器。これ以上ない、お宝となる。
会合では、意見交換もほどほどに、先を争うように安倍氏と写真に収まろうとする地方議員の姿がみられるという。ツーショットを撮った議員の多くは、程度の差こそあれ、総裁選では安倍氏を応援するだろうし、来年、自分の選挙が終わるまでは安倍人気が続くことを期待する。持ちつ持たれつの関係をつくることができる。
■スキャンダルが出れば、求心力は遠心力に変わる
12年前の「戌年」も総裁選があった。その年、勝ったのは他ならぬ安倍氏。麻生太郎、谷垣禎一の両氏を相手に、圧勝した。この時も翌年の統一地方選、参院選をにらみながら、地方議員と参院議員に十分配慮しての選挙だった。自分の選挙を目前に控えた政治家は、よく働く。その時の「成功体験」が今回の総裁選でも生かされているといっていい。
「戌年総裁選」は、今のところ安倍氏にとってうまく進んでいる。ただし、もろ刃の剣であることも忘れてはいけない。
参院議員、地方議員が安倍氏になびくのは、あくまで来年の選挙で有利になると考えているからだ。逆に、安倍氏が失速し、国民の支持を失うことになれば、遠ざかっていく。自分の選挙が遠ければ、義理立てして逆風の中でも応援することもあるかもしれないが、選挙が近ければ背に腹は代えられない。安倍氏に挑戦する石破茂元党幹事長のほうに人気があると見切れば、流れは急変する。
■「統一地方選後の参院選で自民党が負ける」というジンクス
石破氏側も、このことは意識している。陣営の幹部は「森友、加計問題が盛り上がった今年前半、『安倍氏の3選は消えた』というムードが高まっていたことを思い出してほしい。再び当時のようになる可能性は十分ある。
統一地方選、参院選を来年に控える今回こそ、風向きが変われば早い」と期待する。総裁選は9月20日に行われる方向で準備が進む。今後、1カ月の間に新たなスキャンダルが浮上すれば、求心力は遠心力に変わる。
そして最後に、安倍氏にとって縁起の悪い話を紹介しておかねばならない。「亥年」の参院選、つまり統一地方選の数カ月後に行われる参院選は自民党が負ける、というジンクスがあるのだ。
地方議員たちは春の統一地方選で行われる自分たちの選挙で完全燃焼する。そして、その後行われる参院選の時は疲れ果て、自民党候補への応援の手を抜く。その結果、自民党が負けるという展開となるのだ。11年前の2007年、23年前の1995年とも自民党は大幅に議席を減らした。2007年、参院選の時の首相は安倍氏だった。そして、参院選での敗北が引き金となって同年9月、退陣に追い込まれたのだ。
(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)
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