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塾につぎ込み家計が破綻寸前「受験貧乏」

プレジデントオンライン / 2018年9月20日 9時15分

PIXTA=写真

年収1000万円近くになると、気分はすっかりお金持ち。だが実際の家計は大赤字。「どうしても出費が削れない」と悩む人は多い。改善にはなにが必要なのか。お金のプロが5つの「実物家計簿」にアドバイスをする。今回は「教育費」について――。(第4回、全5回)

※本稿は、雑誌「プレジデント」(2017年6月12日号)の特集「お金に困らない生き方」の記事を再編集したものです。

■2人あわせた学費は年間260万円にも達する

小4、小2の姉妹をそれぞれ塾1つと習い事3つに通わせており、毎月9万6000円の出費である。6年間のんびり過ごせるという私立の中高一貫校に、子ども2人を通わせてやりたい。そんな親の願いが報いとなり、家計を蝕み始めていた。安田さん夫妻が相談に来たときは、すでに家計が破綻する寸前だった。

恐ろしいのは、これでも「まだ教育費地獄の入り口にすぎない」ということだ。長女は塾で中学受験用の進学クラスに入っているが、小4は夏期・冬期講習などを入れてまだ年80万円ほど。来年から年間100万円ほどの塾代を覚悟しないといけない。中高一貫校に合格後も、学費として年間100万~130万円が必要になる。

従って年間100万~130万円の教育費負担に耐える家計をつくることが喫緊の課題だ。しかし姉1人で、この教育費なのである。妹も中高一貫校に進学するとなれば、さらに倍。2人あわせた学費は年間260万円にも達してしまう。

こんな無計画な安田家。子ども2人を私立校に通わせるには、世帯収入が足りていないのは自明である。小4の段階で、毎月8万円超のマイナスが続いているのだから。安田さんも、こうして家計を「見える化」したことで初めて事態の深刻さに気がついたようだ。「俺に任せておけとは、とても言えない額です」と青ざめている。親に援助を求めることも検討しているというが、期待薄だ。

望みをつなぐ手段がないわけではない。だがとりいそぎ毎月の赤字を止めなければ、話にならないだろう。それも相当の痛みを伴った大手術である。

■中学受験を最優先するかたちでスリム化

まずは教育費を、中学受験を最優先するかたちでスリム化。姉は習い事をすべてやめ塾のみとし、妹は塾と習い事1つを残した。そのほかにも食費、水道・光熱費、通信費、自動車関連費を削減。車も手放したので、塾の送り迎えはやめて電車通学に切り替えた。また塾のあとのコンビニ間食の代わりに、妻が手作りのおにぎりを持たせることにした。

これでようやく、月の収支は5万2000円のプラスへ転じた。夫のボーナスとあわせると、年間154万円の教育費を捻出できるメドが立った。

それでもまだ2人分の教育費の目安260万円には程遠い。このままでは、妹が進学塾に通い始めた瞬間、赤字家計に逆戻りである。

節約だけでは足りないとなると、残る手段は収入増だ。パートだった妻がフルタイムで働き、100万~200万円の年収アップを目指していくことが必須になるだろう。一般的に中学受験は専業主婦が有利と言われる。お弁当づくりに送り迎え、学習サポートにと、親の出番が多くなるためだが、背に腹は代えられない。また2人を無事に育て上げたのち、ようやく巡ってくる老後資金を貯めるチャンスにスパートをかけられるよう、世帯の「稼ぐ力」を底上げしておきたいところでもある。

■「公立」の中高一貫校という選択肢もある

ただし、やはり無理をしないと成立しない家計であるのは事実。姉が受験対策を始めた小4から、妹が大学を卒業するまでの15年間は、ずっと教育費負担が大きくなる見込みでいくら稼いでも貯蓄できない状態に陥る。すなわち教育費地獄が続くはずだ。

そもそもなぜ私立中高一貫校にこだわるのか、理由を見極める必要があるが、1つの方法として、「公立」の中高一貫校という選択肢もある。

■私立中高一貫校の「特待生」を狙うという手もある

公立の中学、高校と同じ授業料でありながらレベルの高い教育を行っている。そのため難関私立中学に合格しても、公立中高一貫校を選ぶ家庭が少なくない。年々シェアを拡大し、首都圏には現在、都立小石川中等教育、都立両国高校附属など24校の公立中高一貫校がある。

受験対策も私立と公立とでは異なる。そのため、公立中高一貫校に落ちたら公立中学に進学するなど割り切りが必要だ。さもないと、私立の受験対策と2本になってさらに大変なことに。

また、私立中高一貫校の「特待生」を狙うという手もある。ただし、子どもの偏差値より低いレベルの学校に行くことになる、学校によっては転校したいときには授業料を返納しなくてはならない、など、難しい一面もある。子どもと十分な話し合いが必要だ。

▼節約術 学費を生み出す4つのワザ
・私立中高一貫校の「特待生」を狙う
私立中高一貫校の「特待生」を狙って学費を抑える方法も。ただし、レベルを落としていいか、子どもと話し合う必要がある。

・「私立中学の助成金」を受ける
私立の小中学校に通う子どものいる年収590万円未満世帯には補助金が出る。年収350万円以上590万円未満で10万円の補助。

・「NISA枠」で学費を積み立てる
NISAは年間120万円まで非課税、5年間運用可。2018年に施行予定の積立NISAは年間40万円まで非課税、20年間運用可。

・非課税制度「教育資金の一括贈与」を使う
祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合、子ども1人につき1500万円までの贈与が非課税になる。

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豊田眞弓
ファイナンシャルプランナー
マネー誌のライターを経て1994年から現職。育児や介護など実体験に根ざした相談業務を行う。『いまからはじめる相続対策』など著書多数。All About教育資金ガイド。

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年収890万円 貯金額○480万円 30代 安田さん
家族構成●夫(39歳・コンサルタント)、妻(37歳・パート)、子ども2人(小学校4年生、小学校2年生)
収入●額面=夫:800万円(うちボーナス=夏46万円/冬46万円)、妻:96万円

(ファイナンシャルプランナー 豊田 眞弓 文=東 雄介 写真=PIXTA)

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