"お受験"の成功者は、人生でも勝者になる
プレジデントオンライン / 2018年8月17日 9時15分
※本稿は、『募集しない名門塾の 一流の教育法』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■試行錯誤のなか「受験勉強」の素晴らしさに開眼
長男の「受験勉強」は、同世代のお子さんよりもずっと遅いスタートでした。とりあえず、書店でドリルを買ってやらせてみたのですが、何もできない。「どうしよう……。うちの子はアタマがよくないのかも」と落ち込みました。でも、やると決めたので後戻りはできません。
無我夢中で、わが子がどうしたら「できる」ようになるか、わたし自身の教え方の試行錯誤が始まりました。いわゆる進学塾みたいなところにも行きました。
よく「ちっちゃいときから、そんなに詰め込まなくても」と言われます。しかし、塾を見学したり、教材を一緒にやったり、私立小学校の情報を集めたりしているうちに、「こんなすてきなことがあるんだ!」と思うようになりました。
やってみると、「これを覚えていたらいいよね」「こんなふうに考えられるようになったらいいよね」と思えることばかりだったのです。
たとえば、ものを数えるときには、単に数えるのではなく、数え終えたものを右側に寄せるなりして、一つずつそろえて数えれば間違いなく数えられます。図形も、補助線を一本入れると、どんな形かわかりやすくなります。
■受験勉強には学ぶための「基礎」が詰まっている
受験のための勉強は、そんなちょっとした「ものごとをわかりやすくするコツ」を学ぶことに等しく、それがわたしにとってはすごく新鮮でした。なるほど、「受験勉強」をすると、こんなに「いいこと」が身につくのだな、と。
ものの考え方の基礎にもなるし、これから小学校で国語・算数・理科・社会、そのほかの教科を学ぶにあたっても、すべての元になっている。そう感じたのです。
そうした「お勉強」的なことは、やればやるだけ身につきます。心配だった息子も、次第に理解できるようになりました。さらに、受験勉強をやればやるほど、知れば知るほど、すごくいいなと思ったのは、「人の話をしっかり聞ける」ようになったことです。
小学校受験では、「ペーパー」「運動」「巧緻性」など、さまざまな観点からのテストが行われますが、どれをやるにしても、まず、「人の話をしっかり聞くこと」ができていなければなりません。
そして、言われたことを、言われたとおりにできるかが、合否の分かれ道となります。受験の世界では「指示行動」(人から何かを聞いて、それにしたがって行動する)といいますが、それができるようになったのです。
■まずは「聞く力」を鍛えることが大切
小学生になったら「問題を読んで解く」ことが始まるわけですが、幼児はまだ「読む」ことができません。ですから「しっかり聞く」ことがすべてです。
![](https://president.jp/mwimgs/6/9/200/img_692e15c74b7e812097956b3b642a3e2f25776.jpg)
話す力も大事ですが、「聞く力」がないと、相手が何を思っているのか、どう考えているのか、正確に理解することは難しくなります。ですが、「聞く力」がしっかりあれば、相手を思いやることもできます。就学前にそうした基礎力をつけられるというのは、やってみなければわからなかった受験勉強のメリットでした。
もちろん、体力がついたことも大きな収穫です。「まず獣身を成して而して後に人心を養う」と慶應義塾の創設者、福澤諭吉が諭しているように、心を養うには、まずは獣のようなしっかりした体があってこそ、です。
このように考えると、幼児の受験勉強とは、結局は「小学校の基本」を身につけさせることなのだと痛感しました。
■受験を通じて「人生の歩み方」が学べる
受験する・しない、受かる・受からないにかかわらず、「数を数えられるようになればいいよね」「人の話をちゃんと聞けるようになったらいいよね」「自分でちゃんと考えられるようになればいいよね」「体力がつくといいよね」……と、「これ、全部、そうなったら、すてきじゃない?」と思えたのです。
いま振り返ってみると、息子たちは「受験勉強をした」というよりも、「勉強のしかた」、もっといえば、「人生の歩み方」を学んでいたといってもいいのかもしれません。
受験で目指すべきことは、当然「合格」です。しかし、その過程でバランスの良い子どもが育ち、強さを秘めた子どもとなり、コミュニケーションがきちんととれる子どもとなれば、セルフコントロールが利く、がまんができる子どもになります。
受験を通して「人間力」が養われるといっても過言ではない――わたしが、確信をもってそう言えるのは、わが子をはじめ、わたしが向き合ってきた子どもたちが、それを証明してくれているからです。
■受験はわが子への理解を深め、子どもの人生を豊かにする
息子の受験を終え、その実体験から、わたしは幼児教育にとても関心をもつようになりました。家業としていた進学塾では、小・中学生向けの受験ノウハウはありましたが、でも、やっぱり基本は幼児時代です。小・中学生よりも、就学前から導いたほうがぜったいにいい。わが子を受験させて、それがより鮮明にわかったのはたしかでした。
就学前の6歳までは、保育園や幼稚園などに通園していたとしても、送迎には親が必要です。
つまり、そのころの子どもは、ほぼ100%親に依存しています。逆にいえば、親も子どもとベタベタできるのはこの時期まで。
この時期に、受験という親子共通目標を設定することで、さまざまなことを一緒に体験でき、かつ、わが子のことをよく知ることができます。
「こんなふうに考えていたの?」
「こんなひらめきがあるの?」
「これが得意なんだね」
そんなふうに、わが子への理解を深めていくだけでなく、子どもにとっても親子で一緒に体験したことは、かけがえのない思い出になるはずです。その後の人生をとても豊かにしてくれるでしょう。
■就学前のわずかな期間が親子の絆を深めるチャンス
親子の絆もものすごく強くなります。中学受験でも、風邪をひかないように気を配ったり、勉強できる環境を整えたりと、親は何かとお世話しますが、幼児の場合は100%親がやらねばなりません。常に親がそばにいるわけですから、その中で会話も増えます。一つの目標に向かって一緒に頑張るわけですから、絆が強まって当然です。
受験勉強という経験は、小さなことの積み重ねです。丸がうまく書けるようになったとか、犬の絵が上手に描けるようになったとか、やればやっただけ上達するので、お父さんお母さんにほめられます。子どもが自信を持つ、いいきっかけにもなります。
親子の密な時間は、小学校に入る前の比較的時間のあるこの時期だからこそ。そのチャンスを逃してしまうのはもったいないなあ、と自分の経験から思うのです。
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つくし会幼児進学教室 代表
息子二人を慶應義塾幼稚舎に入学させた経験をもとに、1992年、小学校お受験を専門にする幼児塾「つくし会」を設立。以来四半世紀以上にわたり、独自の指導法で最難関といわれる慶應義塾幼稚舎をはじめ、早稲田実業、青山学院、学習院、聖心などの初等科に毎年多くの合格者を輩出している。
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(つくし会幼児進学教室 代表 石井 美恵子 写真=iStock.com)
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