難関校を目指すなら"ママ友"とはつるむな
プレジデントオンライン / 2018年8月20日 9時15分
※本稿は、『募集しない名門塾の 一流の教育法』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■入試用のカリキュラムはあえて用意しない
つくし会では、自分の子がやってきたこと、あるいはわたし自身がやらせていたことを元に、「こうすれば子どもはもっと成長するだろう」という視点で、カリキュラムを考えています。多少、難しくても、やればできるようになります。
多くの小学校受験塾は、運動、絵画・工作など入試の考査に合わせて項目別にきっちり分けていたり、学校別の入試動向を踏まえたカリキュラムを用意したりしているのが一般的です。
しかし、つくし会ではそうしたことは一切やらず、一人ひとりに合わせて、知育、体育、絵画・制作、お話づくりなどを組み合わせて指導しています。
ですので、これだけやればよい、という一律的なカリキュラムというものは存在しません。わたしがつくってきたツールの中から、その子のいまの状況に必要だと感じたものを与え、それができたら少し難しいことに挑戦させたり、似ているけれどちょっと視点が違うことに取り組ませたりしています。その子にとって、どうするのがいいのかを考えて、柔軟に取り組んでいます。
■教室にはイスがない。立つことで集中力を養う
つくし会にはイスがありません。いえ、正確に言いますと、イスはちゃんとありますが、使いません。教室がスタートした当初から、すべて立って行っています。
息子たちが小さいころ、イスを使っていましたが、「立っているほうが集中力がつく」という話を聞き、「そうかも」と、立たせてみたり、座らせたり、いろいろ試してみました。
そして自分がいざ人のお子さんを預かるときに、思い切って立ってやることにしたのです。イスをガタガタして注意している時間が無駄ですし、つくし会では子どもがペーパーを取りに来て、自分の席に戻って作業をして、また採点のために席を立つ、というスタイルなので、いちいちイスを出したり引いたりは、子どもたちにとっても面倒で、そもそも座っている時間は短いのです。いっそ立っていたほうが無駄がないし、動きやすいし、場所もとらない、と考えました。
もう一つの理由は、しっかり大地を踏みしめることで、踏ん張れる体になると考えたからです。
しっかり立つことができれば、しっかり座れるようになるのです。“座りすぎ”は健康にも悪影響を及ぼすという研究結果も多く報告されています。つくし会の子どもたちも、ペーパーや工作を、すべて立って、2~3時間は平気で集中してやっています。
■保護者からのクレームは受け付けない
保護者の方に最初にお伝えするのは、「クレームは受け付けません。お気に召さないのであれば、いつでもやめてかまいません」ということです。
とはいえ、そういうことは、実際にはあまりありません。つくし会に来られる方は、紹介による場合がほとんどですので、わたしの方針は十分理解してくださっているのでしょう。
つくし会に入るにあたっては、とくに選考基準は設けていませんが、望ましいのは、真剣に子どもと向き合いたいと考えている保護者です。単に受験したいというのではなく、「受験を通して自分も学びたい」「子どもと一緒にやりたい」という意識のある方が来てくださればいいなと思っています。
たまに、「こんなにわたしの時間を使ったのに、うちの子はなんでできないのでしょうか」と言う方がいます。でも子どもはそんなもの。
そう言っているようでは、もう先はありません。そう言われる方は、これから先、何かあると、子どもを足かせに感じてしまうのではないかと心配です。
そうではなく、子どもから学ぼう、一緒に頑張っていこう、という気持ちで臨むことが一番大切ではないかと思います。
■教室の見学は「夕食のしたくが済んでいること」が条件
見学は、入会希望者でも在籍しているお子さんの保護者でも、いつでも受け付けています。ただ、そのとき、「今晩は何を食べるの?」と聞いています。
というのも、見学は「夕食のしたくが済んでいること」が条件だからです。もちろん、買ったお惣菜でもかまいません。夕食のしたくが何もできていないで帰宅したら、お母さんはそこからつくらねばならず、そうなると、「待ってて! もうすぐだから! テレビでも見てなさい!」となってしまいますよね。
「早くしなきゃ」とイラつきますし、ご飯ができても、「なんでいつまでも食べているの! 早くしなさい!」と、イライラが増長してしまいます。
この悪循環を起こさないためにも、「夕食のしたくができている」のは必須なのです。夕食のしたくの心配がいらないと思うだけで、心に余裕ができ、「今日は教室でどんなことをしたの?」と、ゆったりと子どもと会話を楽しむことができます。
■ママ友とはメアド、電話番号を交換しないこと
入会される方には、「わからないことがあれば、聞いてください」と伝える一方、親同士では聞き合わないようにしてもらっています。はっきりと、「つるまないでちょうだい」とも言っています。
教室に来る人たちは、同志であっても友だちではない、むしろライバルなのですから、メールアドレスや電話番号の交換も、しないようにお願いしています。
保護者は、保護者同士で情報交換したくなるのかもしれません。しかし、100人いたら100とおりの受験スタイルがあります。人それぞれであり、人と比べて余計なことにわずらわされるより、とりあえず自分の子を良くしていこう、という気持ちが大事。そして、みんなそれぞれに自分の子が良くなれば、当然いい影響を与え合い、全体のレベルがアップします。
いまは学校説明会、学校公開、それから学校のホームページでも正しい情報がたくさん発信されていますから、それで十分ではないかと思います。他人の様子をうかがったり、ライバルから情報を得ようとしたりする時間があったら、わが子に一つでも多くのことを教えてあげたほうが有意義に違いありません。
■志望校のこと、教育費のことは夫婦でよく話し合って共有する
どこを志望校にするかというのは、ママ友同士の大きな関心事でしょうが、どのくらいの費用の捻出ができるかを含め、わが子に合う校風かどうかなど、夫婦でよく話し合うことが大事です。
16年間あるいは18年間、大学院までだとしたら20年間分の教育費をどうするかということは、夫婦間でしっかり共有すべきことです。
学校公開や説明会も、ライバルであるママ友と行くのではなく、行くならぜひご主人と行ってください。そしてぜひ、「空気をかいで」雰囲気を味わってきてください。評判がいくら良くても、「あ、ここはいいな」とか「ここはなんか違う」と感じるはずです。
ママ友とつるむのではなく、自分のアタマで考えて、自分の感覚を信じて動くことが一番です。
とはいえ、入試が終われば、同じ時期に同じように目標に向かって進んだ同志として、良き友人になるのは言うまでもありません。
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つくし会幼児進学教室 代表
息子二人を慶應義塾幼稚舎に入学させた経験をもとに、1992年、小学校お受験を専門にする幼児塾「つくし会」を設立。以来四半世紀以上にわたり、独自の指導法で最難関といわれる慶應義塾幼稚舎をはじめ、早稲田実業、青山学院、学習院、聖心などの初等科に毎年多くの合格者を輩出している。
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(つくし会幼児進学教室 代表 石井 美恵子 写真=iStock.com)
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