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石破氏が"読売産経"の敵視を隠さないワケ

プレジデントオンライン / 2018年8月24日 15時15分

自民党総裁選挙に向け、記者会見で憲法改正について持論を述べる石破茂元幹事長=8月17日、東京・永田町(写真=時事通信フォト)

自民党総裁選は、安倍晋三首相と石破茂元幹事長の一騎打ちの構図となっているが、2人の争いの陰で、メディアも“代理戦争”に巻き込まれつつある。安倍政権に近い読売、産経の両紙は安倍氏寄りと取れる記事を掲載。リベラル色の強い朝日、毎日は、安倍氏よりも石破氏寄りの「プチ石破押し」のスタンスを見せ始めている。そんな中、石破氏は読売、産経の両紙を敵視するような発言を開始した。なにが起きているのか――。

■「モーニングショー」で批判的なメディアに宣戦布告

8月21日朝、石破氏はテレビ朝日の「モーニングショー」に出演した。この時のヒトコマに永田町関係者がざわついている。

石破氏は、安倍氏が昨年5月の読売新聞上で「2020年の改憲施行」を目指す考えを表明したことを踏まえてこのように語った。

「『どういう意味ですか』と聞いた人がいた。そしたら『(読売)新聞を読んでください』と(安倍氏が)おっしゃった。そんな言い方ってありますか。自民党に向き合う姿ですか。国民に向き合う姿ですか」

同じ党に所属する議員の発言とは思えないほどの激しい安倍氏への批判だ。それと同時に石破氏の発言は、読売新聞に向けられてもいる。

この番組ではコメンテーターが、産経新聞の報道を例にとり「自民党内の雰囲気、メディアのありようも含めてどう考えているか」と質問。石破氏は「メディアと権力は一定の距離を置いてきたはずだ。どちらかの代弁人ではなかった。一体になった時は怖い」と答えた。産経新聞を「政権と一体化している」と批判する意図があったことは間違いない。

■産経新聞は「残念な石破氏の現状」という記事で反論

この件について産経新聞は23日、論説委員兼政治部編集委員が「残念な石破氏の現状」という記事で反論、石破氏を批判している。

石破氏に限らず政治家は、メディアの報道について尋ねられると「コメントする立場ではない」とか「報道した新聞社に聞いてください」と、はぐらかすのが常道だ。特定のメディアと関係をこじらせるのは得策ではないと計算するからだ。今回の石破氏のように真正面で受け止めて特定メディアを批判するのは珍しい。

■メディアを巻き込んだ論争は今後激化する

読売、産経は、もともと論調は保守的で、特に安倍政権に近い新聞として知られている。安倍氏に対しては好意的な記事を書き、野党には厳しい論調の記事が多い。総裁選という「自民党内」の闘いになれば、矛先は野党から、安倍氏のライバルである石破氏に向けられることになる。

例えば8月22日の朝刊。朝日と読売は総裁選期間中に2人の討論会が何回開かれるかを展望した記事を載せている。記事の趣旨はどちらも、挑戦者・石破氏が1回でも多く討論会をやろうとしているが、安倍氏サイドはあまり乗り気ではない、という内容だ。

しかし朝日の見出しは「論戦したい石破氏 敬遠したい首相側」なのに対し、読売は「石破氏 焦がれる直接討論 首相訪露で機会減」となっている。朝日の方は、安倍氏側が論争を逃げようとしている姑息(こそく)さをにじませているのに対し、読売の方は形勢不利の石破氏が焦っているという印象を持たせる見出しだ。

一連の報道の中で石破氏は、自分に批判的なメディアに対して宣戦布告したともとれる。

安倍氏はまだ正式に出馬表明をしていないので、総裁選にからんでメディア批判はしていないが、実際に選挙戦が始まれば、石破氏への批判とともに「得意」の朝日批判も始めることだろう。メディアを巻き込んだ論争は今後激化する。

■「ゴリゴリの改憲派」の石破氏が、護憲派に推される展開に

朝日を筆頭に毎日、東京といったリベラルな新聞は、今回の総裁選ではどういう立ち位置なのだろうか。この3紙は、「森友」「加計」への対応や、強引な国会運営を、手厳しく批判してきた。総裁選でも安倍政権の軌跡を厳しくチェックするのは必定だ。そして相対的に石破氏に好意的な報道となる。露骨に持ち上げることはないだろうが、先に触れた候補者の公開討論についての記事のようにニュアンスとしては石破氏寄りになる。「敵の敵は味方」ということだ。

石破氏は、憲法9条の改正については、戦争放棄を定めた2項を削除すべきだという立場。2項を維持して自衛隊の存在を明記するという安倍氏の考えよりも抜本的な改正を主張している。ゴリゴリの改憲派だ。護憲派の読者に支えられる新聞としては、石破氏は「天敵」のはずだが、ねじれが起きているのはどういうことなのか。

■「安倍3選」ならば改憲。「石破首相」なら改憲は先送り

それは2人の改憲スケジュール観と関係する。安倍氏は3選後、自身の首相在任中に憲法改正を実現しようとしている。それを実現するために、9条改憲では「2項維持」という理解を得やすい内容にしている。そして、その改憲日程はリアリティーを持ち始めており、来年中に改憲の国民投票が行われるスケジュールも語られている。

一方、石破氏は、改憲はスケジュールありきではいけないという考え。自説を曲げずに「2項削除」を掲げ、機が熟した段階で改憲を目指すというスケジュール観だ。だから、もし総裁選で勝ったとしても「石破首相」の間に改憲を目指そうとは考えていない。

憲法改正の優先順位は決して高くなく、むしろ経済政策などを優先すべきだと考えている。このことは既報の石破氏インタビュー「やるべきは憲法改正ではなく、経済成長だ」を読んでいただければ明らかだ。

「安倍3選」ならば改憲。「石破首相」なら改憲は先送り。そういうことであればリベラルな勢力は、石破氏にシンパシーを抱いても不思議ではない。自説を曲げずにリベラル層の支持を得て「安倍批判票」バックにつけることができるのなら、石破氏にとっても好都合だ。という事情で、石破氏と朝日などのリベラルなメディアによる一見ねじれたタッグができあがるのだった。

(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

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