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英会話学校"若い白人講師"獲得でM&A盛ん

プレジデントオンライン / 2018年9月24日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/andriano_cz)

17年11月、通信キャリアのKDDIが英会話教室大手・イーオンの買収を発表したが、これに限らず、2000年代後半以降、語学教室業界ではM&Aが繰り返されている。そうした案件を数多く手がける中小企業M&Aサポート・奥寺北斗社長が、その事情を語る。

■若い白人男性講師に、人気が集中する

英会話大手では、これまで同業者どうしの事業再編が進んできました。チケットを買っても授業が受けられず、かつ解約金返還のトラブルなどが社会問題化し、07年に経営破綻したNOVAは、数度の買収・売却を経て、現在は同業のジオスとグループ企業となっています。シェーン英会話は10年に学習塾大手・栄光の傘下に入りました。

これに対し、中小の場合は英会話ビジネスに魅力を感じ、業界に参入しようとする異業種の企業が買い手となるケースがほとんどで、一般に売り手、買い手とも国内事業者です。

なぜM&Aが盛んなのかを探る前に、英会話教室の市場を見てみましょう。当社の調べでは、直近17年の語学教室の市場は年間870億円弱。過去数年間、年率1%前後で持続的に成長しています。受講者数も年々増加しており、17年には500万人に迫る勢い。一方で事業所数、従業員数も増加傾向にあって、事業者間の競争は激化しています。

加えて、レアジョブなどインターネットを利用した低価格のオンライン英会話サービスの急成長があり、語学学習を目的とする英語圏への短期留学ビジネスも市場が拡大しています。このため大手は英語以外の言語を手がけたり、留学を支援したり、大学の語学の授業を受託したり、国際会議をアレンジしたりと、語学を軸に事業を幅広く横展開しています。

市場に活気がある理由の1つは、英語教育の低学年化です。08年度から小学5、6年生の英語教育が開始され、20年度には3年生から英語が必修化される予定。これを受けた教育産業界は、子供向け英語教室を拡大中で、子供向けコースを持つ英会話教室を買収することで、受講者を自社に囲い込もうとしているのです。

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▼英会話学校業界大手のM&A
2018.01 ベネッセHD、オンライン英会話サービス「ぐんぐん」株式追加取得
2017.11 イーオンHD、KDDIに株式譲渡
2016.12 オンライン大手レアジョブ、子ども専門オンライン英会話「リップル・キッズパーク」運営会社を買収

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ただし、今は生徒よりも講師の確保を目的としたM&Aが目立ちます。

日本の語学教室市場は女性受講者の割合が高く、英語を母国語とするネーティブスピーカーで比較的若い白人男性講師に人気が集中し、そのためもあって人材マーケットでは条件に合う講師が払底しているのです。

大手に限らず、毎年イギリスの新聞に求人広告を出し、渡航費を負担して日本のマンションに住まわせたり、英語圏の日本語学校と提携して日本語を学んだ外国人をリクルートするなど、経営努力を惜しまぬ中小業者もあります。こうしたところは一授業あたりの単価が高く、経営も多くは順調です。差別化の努力を怠る教室は価格競争に巻き込まれ、経営不振の事業者も少なくありません。

一般ユーザーが英会話教室のレベルを知るためには、教室に行って見学し、どんな講師がいるのかを見ることです。本国で教員免許を取っているかどうかがポイント。講師の質を見ればその英会話教室全体のおおよそのレベルはわかるし、M&Aにおける事業価値の評価も分かれます。

英会話教室事業を売却する側の理由は様々です。中小の場合、零細の例にもれず、経営者の引退が売却理由の中で大きな割合を占めています。

たとえば17年には、東京都内の高級住宅街で駅から徒歩3分のところに教室を構えていた英会話教室が、事業を譲渡したケースがありました。

ここは月謝ではなくチケット制で、受講者は主婦、OL、子供、ビジネスパーソンなど。チケットの有効期限が残っている受講者数は500人ほどと、規模からいえば中小にあたりますが、事業自体は好調で、オーナーが自由にできるキャッシュフローが年間3000万から4000万円に達していました。売却の理由は、オーナーが早期リタイアを望んだため。売却額は1億円弱と割安でしたが、それもオーナーの早く売りたいという意向が強かったためです。

買い手は建設現場に人を派遣する人材派遣会社。まったくの異業種ですが、社内に海外旅行好きで英会話教室に通い、語学教室業界の事情にも明るい女性がおり、その方の進言で買収を決断することとなったものです。買収後、この女性は自ら教室のフロント業務に就きました。

語学教室市場は、先述の英語学習の低学年化という追い風で短期的には市場拡大が見込まれるものの、オンライン英会話サービスとの競合や少子化の進行により、中長期的には受講者の減少、料金の低下が懸念されます。市場が飽和した業界では再編が進むのが常であり、この業界も今、生き残りを懸けた再編の渦中にあると言ってよいでしょう。

(久保田 正志 写真=iStock.com)

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