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JTB社長「女性管理職比率37%の理由」

プレジデントオンライン / 2018年9月7日 9時15分

JTB グループ本社 代表取締役社長 高橋広行氏

これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、JTB グループ本社の高橋広行代表取締役社長のインタビューをお届けしよう――。

旅行業界最大手であるJTBが大きな経営改革に動き出している。2018年4月から地域子会社である15社を事業ごとに再編し本社に統合。併せて人材育成の強化も図る。業界にデジタル化とグローバル化がともに押し寄せる中、どのような人材を育成していくのか。人材を「人財」と表して重視するJTBの社長、高橋広行氏に話を聞いた。

ダイバーシティが旗印「女性管理職比率37%」

──4月から新体制が発足すると同時に「自律創造型社員」の育成を強化されます。具体的にはどのように人材育成を進められるのでしょうか。

当社の最大の経営資源は人であり、「自律創造型社員」の育成はグループの責務です。すでに2013年に「JTBユニバーシティ」という教育のプラットフォームを設立し、コース別、目的別に研修を行っています。そのポイントは3つ。1つ目は高い専門性やスキルの取得。2つ目は目的達成意識の醸成。そして3つ目がお客様の課題解決に対応できる能力を身に付けることです。我々はこれから単に旅行を販売することから、旅行自体をお客様の課題解決の手段として捉え、旅行以外の価値も提供できる会社に生まれ変わっていく。その意味で今回の経営改革を「第三の創業」と位置づけており、その最大の肝が「人財」育成なのです。

──人材育成で重点化している部分はどこでしょうか。

まず変えなければならないのが社員の意識です。これを変えない限り、業態も変えられません。そのために全社員の意識を3つの行動指針で変えていこうと考えています。それが「CHALLENGE」「OPEN」「FUN」です。いわば、内向き志向や自前主義をやめ、外部と協業するとともに、仕事のやり方自体も大きく変えていく。そして、お客様を楽しませるための努力を徹底して行っていくということです。この意識改革はグローバルベースで行っていく方針です。我々はこれまでダイバーシティを旗印に、女性管理職比率を37%に高めてきました。そこから初の女性執行役員が誕生しましたが、今後は外国人役員の本社登用も進めていきたいと考えています。

■世界トップ3をオンライン旅行代理店が占める中……

──その背景には、どんな危機感があるのでしょうか。

一番の危機感はデジタル化による急激な市場環境の変化です。我々はこれまでリアルエージェント(実店舗を持つ旅行代理店)として業界をリードしてきましたが、現在、世界のトップ3はすべてオンライントラベルエージェント(実店舗を持たずにインターネット上だけで旅行商品の取引が完結する旅行代理店)が占めています。あらゆるものがネットに通じていく中で、我々が全く予想もしなかったような新しいビジネスモデルが続々と生まれている。シェアリングエコノミーなど新しいビジネスモデルを引っ提げた競争相手がグローバル規模で押し寄せています。

そうした世界の潮流の中で、旅行の手配業務による“コミッション(手数料)”ビジネスはこのままだと自ずと限界を迎えていくはずです。では、どうやって生き残っていけばいいのか。その答えの1つがコミッションではなく、JTBならではの商品・サービス・情報・仕組みを提供し、お客様の感動・共感を呼び起こすことによって“フィー(報酬)”で稼ぐということなのです。例えば「お父さんが定年退職を迎えたので、旅行をプレゼントしたい」というとき、旅行は「目的」ではなく「お父さんを喜ばせるという課題解決のための手段」となります。オーダーメード型商品などが既にありますが、お客様が旅に託した本当の目的、お客様も気づいていなかった課題解決の実現に向けてコンサルティング力を強化し、フィーで稼げるようにしていきたいと考えます。このように「第三の創業」には従来の収益構造を大きく変えていく狙いもあるのです。

■脱・旅行業で、次の100年を創る

──そのためにシリコンバレーなど海外視察にも力を注がれていますが、その目的と成果は何でしょうか。

創業から100年以上、我々は対面販売を主戦場として、個々のお客様に寄り添った「ヒューマンタッチ」のサービス提供に力を入れてきましたが、これからはそこにデジタルを融合させ、お客様にとっての価値を最大化できる会社に変わらなければなりません。旅行事業の進化、非旅行事業の充実が重要になってきます。そのヒントを見つけるためにシリコンバレーを視察したのですが、現地では将来的に事業の種となるような新しいビジネスがたくさん芽吹いています。まずはその現状を把握し、必要であれば、出資や業務提携などを含めて、あらゆる手立てを講じていきたいと考えています。

海外は徹底的にデジタル化が進んでいます。我々もあらゆる手を尽くして外部から異能異才の「人財」を社内に確保して対応しなければならない。ただ、それで長年にわたり磨いてきた「ヒューマンタッチ」の接遇がなくなるわけではありません。それこそが我々の最大の競争力であり、デジタル勢に対抗していくための大きな武器だと考えています。

■増加するインバウンド(訪日外国人旅行)への対応

──増加するインバウンド(訪日外国人旅行)への対応など、今後ビジネスのかたちをどう変化させていくのでしょうか。

政府は今、インバウンドについて20年に4000万人という目標を掲げています。現在、その内訳を分析すると、約8割がアジア勢であり、また約8割が個人旅行です。つまり、これから重要になってくるのが、パーソナライズ化への対応力です。そのために訪日外国人客向けの旅行サイト「JAPANiCAN.com(ジャパニカン・ドット・コム)」を展開していますが、それだけではありません。日本は国としてまだ多くの課題を抱えています。例えば、移動型の旅に伴う大きなスーツケースの持ち運びなど、そうした課題解決こそが、我々の大きな役目だと考えています。すでに複数の大手企業とその取り組みも始めています。そうした課題解決を通して、多くのビジネスチャンスをつかむことで会社全体の競争力を高めていく。その意味では、旅行業の枠を超え、事業ドメインを「交流創造事業」と再定義することで、自ら交流を創造し、お客様の感動・共感を呼び起こす企業となることが最大の目標なのです。

外部環境の影響を受けやすい旅行業。「リスクマネジメントの観点からも、収益で海外の占める割合を増やしていきたい」と語る高橋社長は、グローバルビジネスで活躍する人材の確保にも積極的だ。
▼QUESTION
1 生年月日、出生地

1957年2月15日、徳島県
2 出身高校、出身大学学部
非公表、関西学院大学法学部
3 座右の銘、好きな言葉
着眼大局着手小局
4 座右の書
『坂の上の雲』司馬遼太郎
5 尊敬する人
──
6 私の健康法
ウオーキング

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高橋広行(たかはし・ひろゆき)
JTB グループ本社 代表取締役社長
1979年日本交通公社(現・JTB)入社。高松支店長、広島支店長、マーケティング戦略部長や取締役旅行事業本部長、取締役旅行事業統括などを歴任。2012年常務取締役、JTB西日本社長に就任。14年より現職。

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(JTB グループ本社 代表取締役社長 高橋 広行 構成=國貞文隆 撮影=門間新弥)

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