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シャープ「賞与8倍格差」信賞必罰の威力

プレジデントオンライン / 2018年9月10日 9時15分

経済ニュースの本質を見極めるにはどうすればいいか。役立つのが「会計」だ。会計ではモノの動きと時間の流れを「金額」で整理していく。それが理解できると「ウラの裏」がするすると見えてくる。雑誌「プレジデント」(2018年3月19日号)の特集「会社の数字、お金のカラクリ」から、記事の一部を紹介しよう。今回は「シャープと年収格差」について――。

■賞与 最多で「8カ月」最少で「1カ月」

2016年3月期に312億円の債務超過となり、同年8月に東証1部市場から2部市場へ“降格”の指定替えという屈辱を味わったシャープ。しかし、同じ月に台湾の鴻海精密工業の傘下に入り、新しく就任した戴正呉社長の経営改革が奏功し、17年3月期は債務超過を解消、同年12月に東証1部へ見事に復帰を果たした。

その戴社長の改革の1つが「信賞必罰」の人事制度。17年度の賞与は16年度実績の2倍の平均年間4カ月分へアップしたが、一方で業績への貢献度に応じて最も多い人で8カ月、逆に少ない人で1カ月という差をつけた。総賃金に占める賞与の割合は大きく、従業員間での“年収格差”に直結する。

そんな大胆な改革に当たって導入されたのが「役割等級制度」で、この制度に詳しい経営コンサルタントの西村聡さんは「役割、つまり『仕事の価値』に応じて賃金を支払う制度で、基本的には『職務給』である。日本企業の多くは『能力の価値』に賃金を支払う『職能給』をベースに運用していることが多いが、むしろ職務給がグローバルスタンダードだ」という。

■賞与で8対1格差の仕組み

たとえば、個々の仕事に応じたポイントをあらかじめ決めておく。そして、「8対1」の格差がつくよう再調整した社員の総獲得ポイントで賞与の原資を割り、1ポイント当たりの単価を算出し、賞与の支給額を決定していく(図1参照)。

■シャープと同じ「役割等級制度」は普及するか

肝心なのはヤル気を失わずに生産性をアップしていくことなのだが、図2を見てわかるように「従業員1人当たりの営業利益」は17年3月期の第2四半期にプラスに転じ、急ピッチで回復している。ただし、同社をウオッチするみずほ証券シニアアナリストの中根康夫さんは「在庫の圧縮、調達条件や長期契約の見直しなど、徹底的なコストの削減によるところが大きい」という。

今後の課題は前述したような取り組みで従業員のモチベーションアップを図り、既存・新規事業で売上高を拡大していくことである。

「その点で設備投資を示す有形固定資産への投資が18年3月期第3四半期ベースで前年同期比202億円増えている。リストラだけでなく、積極的な投資も行っていることの証左で、従業員のヤル気はアップするはずだ」と経営コンサルタントの小宮一慶さんは見る。中根さんも「鴻海はシャープの技術力や人材を評価しており、構造改革から再成長へのフェーズに転換する投資を行っており、その継続性に注目」と話す。

従業員を含めたステークホルダーから不満の声は聞こえてこない。「それも全員が納得するだけの成果を上げているからだ」と公認会計士の山田真哉さんはいう。今後、同社の経営基盤が磐石になっていくと、日本企業の間でも同じような役割等級制度を導入する動きが出てくるかもしれない。

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西村 聡
メディン代表経営コンサルタント
 

中根康夫
みずほ証券シニアアナリスト
 

小宮一慶(こみや・かずよし)
経営コンサルタント
1995年に小宮コンサルタンツを設立し、代表取締役会長CEOに。著書は130冊を数え、累計発行部数は360万部を超える。
 

山田真哉(やまだ・しんや)
公認会計士
中央青山監査法人などを経て、現在は芸能文化会計財団理事長を務める。『女子大生会計士の事件簿』など著書多数。
 

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(プレジデント編集部 伊藤 博之 撮影=加々美義人、石橋素幸)

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