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スタバはバイト出勤をチャットで管理する

プレジデントオンライン / 2018年10月31日 9時15分

スターバックス コーヒー ジャパン CEO 水口貴文氏

これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、スターバックス コーヒー ジャパンの水口貴文CEOのインタビューをお届けしよう――。

■全店舗合わせた来客数は1日約70万人

日本に第1号店がオープンしてから、22年がたったスターバックス。勢いはいまだ衰えず、2017年9月期の売上高は1709億円と過去最高を記録した。近年はオフィス内でのコーヒー販売、お酒や希少なコーヒーを提供する「リザーブ バー」など、いままでと違った業態も次々展開。これら新たな試みを先導するのが、16年6月CEOに就任した水口貴文氏だ。デジタル全盛の現代、求められる人材像を水口氏の話から探った。

──スターバックスといえば、かゆいところに手の届くサービスが思い浮かびます。働くうえで何を大切にしているのですか。

私たちが重視することの1つに「オーナーシップをもって働く」ということがあります。自律的に、自分で考えて行動する、ということですね。

現在スターバックスには、全店舗合わせて1日約70万人ほどのお客さんがいらっしゃいます。当然、みな1人として同じ人間ではなく、同じ状況ではない。そのとき感じていらっしゃることも違います。そのお客さん一人ひとりに向き合い、求めていることを察して、70万通りの接客をしていきたい。これを実現するには、自分で考えて行動することが必要不可欠です。

──自律的に動くとは具体的にどういうことですか?

マニュアル、テンプレートに頼らないということです。急いでいるお客さんだったら、それを察してよけいなお声掛けなどはせずに笑顔ですばやく対応する。一方で、時間に追われることなくどこか話したそうにしているお客さんが来られたときには、こちらから積極的にお声掛けしていく。こうしたサービスは、現場の一人ひとりが考え、判断があってこそです。相手の要望を見極めることなしに、マニュアル通りの仕事をしてしまっては、「ホスピタリティ(もてなし)」と私たちが呼ぶ、お客さんに心から喜んでもらえるサービスにはなりません。

店舗に限らず、オフィスで働く社員でも同じです。たとえば書類作成にしても、誰が、どのような目的で、いつその書類を読むのかを考える。やっていることは、お客さんの求めることを考えて提供するのとまったく変わりません。

──そのようなスターバックス独自の価値観が社員に浸透しているのはなぜでしょう。

1つ例を挙げると、「オーナーシップをもって働く」「自己変革する」「誠実に接する」「最後までやり切る」といった私たちの「バリュー」を書いたカードがあります。それをパートナー(スターバックスで働く従業員のこと)はみな、常日頃から持ち歩いています。そしてバリューを体現した人には、一言を書き添えてカードを渡す。言い換えると、カードをもらったパートナーは周りから承認を受ける。そのために頑張ろうと主体的になっていきます。地味なようでこうした日々の積み重ねが共通の価値観をつくっていきます。

一方、わが社のミッションや目指していく方向性などの最も大切なことは、1カ月に1度社員を集めて私が直接語りかける機会を設けています。その映像はリアルタイムで全社員が見られるように、イントラネットで動画配信もしている。さらにそのほかの気付いたこと、新しいプロジェクトやそれを打ち出した理由などのメッセージは、定期的に各店舗、オフィスにメール配信します。

定期的な対話で、会社との接点を探る

──とはいえカードを持ち歩き、ミッションを理解するだけでは、社員が主体的に動き出すとは思えません。

ですから、パートナーの一人ひとりがやりたいことと、会社が目指す方向との接点を見つけ、仕事が自分ゴトになる仕組みをつくっています。それは、定期的な対話です。アルバイトは4カ月に1回、店長と1時間は目標設定の面談をします。同じように店長と社員は上司のマネジャーと、2カ月に1回、4時間の面談をする。オフィスで働く人も同様です。

──一店舗あたり24人のアルバイトとすれば、それだけで店長は1カ月に6時間を面談に費やす。社員も含めると、結構な時間になります。

その時間が大事なんです。じっくりと、「あなたはこれからの4カ月間、スターバックスにいる間にどんなことを達成したいか。そしてどんな人生を送りたいか」ということを聞いていく。私たちのビジネスは、人と人が向き合って成り立つものです。この「人」にはお客さんだけでなく、パートナーも入っています。

ビジネスとして成長しつつ、世の中や地域コミュニティに対して貢献し、働いている人が居場所と思える「三方良し」を目指しています。地域コミュニティとのつながりについては、各店舗が独自の企画、イベントを実行している。ここはまさにオーナーシップに任せている部分です。

──今後はAI、ロボットなどの技術革新で、様々なサービスが自動化されると考えられます。時代の変化にともない求める人材も変わりますか。

デジタル化によって便利になる部分は積極的に取り入れていきます。デジタルは、スターバックスの成長戦略の中央に据えています。たとえば、スターバックスとお客さんのデジタルの接点は増えています。コーポレートサイトをはじめインスタグラムやFacebookなど、ブランドの価値や魅力を効果的に発信できるツールはすぐにキャッチアップして取り入れています。

パートナーには、チャットツールで出勤管理をするなど、業務のデジタル化も推進しています。結果、有休などの申請ハードルが下がり、アルバイトでも6割以上の人が有休を取得するようになりました。

一方で、デジタル化が進んでも変わらない部分もより明確になりました。それは、エモーショナルなつながりの重要性です。機能性が追求されればされるほど、人はどこかで必ず、温かみのあるリアルなつながりを求めます。そして、それは私たちが提供できる価値のど真ん中です。

変化の激しい時代だからこそ、変えることと変えないことを明確にする。やり方は変化させるけれど、自分たちの存在価値であるミッションは変えません。私たちはスターバックスらしさを大切にしながら、今後も自分たちを変革させていきます。

▼QUESTION
1 生年月日、出生地

1967年1月10日、東京都台東区
2 出身高校、出身大学学部
筑波大学附属高校、上智大学法学部、ボッコーニ大学経営学修士課程修了(MBA)
3 座右の銘、好きな言葉
あきらめなければ、失敗ではない
4 座右の書
『7つの習慣』スティーブン・R・コヴィー
5 尊敬する人
清水和孝(祖父)
6 私の健康法
ストレッチ、水泳

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水口貴文(みなぐち・たかふみ)
スターバックス コーヒー ジャパン CEO
1967年、東京都生まれ。89年上智大学法学部卒業。イタリア ボッコーニ大学経営学修士課程修了。コンサル会社を経て2001年にルイ・ヴィトン ジャパンカンパニーへ。10年ロエベジャパンカンパニーのプレジデント&CEO。14年スターバックス コーヒー ジャパンCOO。16年6月から現職。

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(スターバックス コーヒー ジャパン CEO 水口 貴文 構成=崎谷美穂 写真=小野田陽一)

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