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森トラスト社長「私が注目する新潮流」

プレジデントオンライン / 2018年9月14日 9時15分

森トラスト 社長 伊達美和子氏

これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、森トラストの伊達美和子社長のインタビューをお届けしよう――。

■森トラスト社長が注目する日本政府の「提唱」

日本の都心部の大型複合開発やホテル&リゾート事業を手掛けてきた総合不動産デベロッパーの森トラスト。2020年の東京五輪に向け、東京が大きく変わるなか、同社は虎ノ門エリアで高級ホテルや分譲レジデンスが入る高層オフィスビル「東京ワールドゲート・虎ノ門トラストタワー」のプロジェクトを進めている。父に同社会長の森章、祖父に経済学者・森グループ創始者の森泰吉郎を持つ伊達美和子社長に、これからの「人材論」を語ってもらった。

──近年の激変する環境のなかで気になる点、働き方や時代を生き抜く力についてどのように考えますか。

日本政府が提唱する「ソサエティ5.0」(科学技術政策の基本指針)や「コネクテッドインダストリーズ」(IoTや人工知能を支援する戦略)に注目しています。新しい社会がどうあるべきかを提案する時代になったのは大きな変化です。従来は縦割りの組織や団体が多くを占めましたが、これからは横のつながりや連携が重視される。IoTによる「自律、分散、協調」型の思考が社会の潮流になり、そういう方向への旗振りが始まったと感じています。

私はバブル崩壊後の1996年に社会に出ましたが、以降も日本経済は長く低迷が続きました。しかしここにきて、一挙に社会も働き方も加速度的に変化しています。

これからの時代を生き抜く原理原則は、技術や知識だけではなく「考える力」「企画する力」「実行する力」の3つを養うこと。そうすれば、どんな環境や局面にも臆せず立ち向かい、力を発揮できると思います。

──2016年に現職に就いてから、どんなことに注力したのでしょう。

就任時から、組織を強化していくことを目的に人材育成に力を注いできました。まず全員が共通の目標を持つことが重要だと思ったので、就任時の挨拶でも「3つの力をつけるためのサポートの仕組みを考えていくので、いろんな意見をお互いキャッチボールしよう」と宣言しました。研修制度や表現する場を整備するなど、社員どうしが横のつながりを持てる仕組みを充実させてきました。

■「選択肢はあっても答えはありません」

その1つが、丸2日かけて全社で行うイベントです。社員自身が課題発表や質疑応答を行います。事前に同部署のチームや他部署混合のチームをつくり、実務に即した課題解決の方法を考え、全社員の前で発表し、ディスカッションし、アフターパーティーでお互いをねぎらいます。

社員にとってこの活動は、自分自身と所属部署を客観視する機会となり、頭の中を整理してアウトプットする力、特にプレゼンテーション能力の向上につながっています。また、部署内だけですと、どうしても業務の範囲内でのコミュニケーションになりがちでしたが、他部署と交流することで社内の異文化をお互いが知る機会になり、風通しもよくなりました。社内で顔見知りが増え、社内営業もしやすくなっています。

──他部署の社員が集まる際の空間づくりや発表者の人選などで、工夫されたことはありますか。

通常業務の合間を縫い、さまざまな部署から人が集まって気軽にコミュニケーションが取れるようなスペースが必要だと感じました。そこで、社食を改装し、壁面にプロジェクターや大型のホワイトボードを設置し、昼食時以外はミーティングができる空間としました。さらに執務ゾーンでも、複数部署どうしが混在しながら仕事ができるコネクティングテーブルをいくつか設置しました。

初回の発表者は、上にも下にも影響を与えられ、組織の体質や体制を変えていくうえで最初のキーとなる課長クラスを選びました。彼らはこれからどんどん環境が変わるなかで、IoTやAIなど新しい手法や知識を仕事のなかに取り入れ、マネジメントしていかなければならない世代。人を育て、人材の配置を考え、事業のプロセスをつくり、工程管理もしなければならない。まずは、彼らが率先して働き方を変えていく必要があると考えました。当社は平均年齢が比較的低いので、中間層の人たちも新たな環境に慣れるのは早い気がします。ちなみに、研修参加は2度目からは希望制にしているのですが、毎回さまざまな世代の人が積極的に研修に応募してくれています。

──今後は、どのような働き手が必要でしょう。そのための人材教育についてはどう考えていますか。

日本人は目標や目的さえ決まれば、勢いよく動き出しますし、各企業もその動きに沿って、大きな変化を起こしていくのだろうと思います。

■「楽しんでいる最中に新アイデアが浮かぶ」人材

IoTが普及すれば、働き手はこれまで以上に社会の変化を観察し、どんなモノが情報とつながるか意識しなければならないでしょう。これからは働くといっても「働きながら楽しむ」「楽しんでいる最中に新しいアイデアが浮かぶ」などボーダーレスな感覚で活動する人も多くなると思います。私たちは不動産というモノを持っているので、人が行き来する空間の付加価値をどうやって高めるかを考えなければならない。街をつくる側としては、そういう仕掛けを考えられる人材が必要です。

しかし、日本の受験社会の「答えがある」教育の弊害はいまだに根が深い。実社会で抱える課題の多くは、選択肢はあっても予想できる確かな答えはありません。ですから、低リスクを選ぶか、最大の利益を目指すか、トライそのものが目的か等々のバランスを模索しつつ、決断するポイントを自分自身で見出し、目標を設定し、実行していかなければなりません。そのセオリーに気付いている人が、誰もが欲しがる、リーダーの資質を備えた人材といえます。

そうした人材を育てるには、スモールステップアップでもいいので「自分がやろうと思ったことが実行できた」という成功体験を積む機会をつくることです。当社では若いうちから開発のプロジェクトマネジャーなどを任せて、試行錯誤しつつ決断していく力をつけてもらっています。立場が人をつくります。悩みに悩んでこそ新しいアイデアや、多くの人が納得する方法に行き着き、達成感が得られます。その生みの苦しみを多く経験した人だけが、大きく成長できるのだと思っています。

▼QUESTION
1 生年月日、出生地

1971年5月7日、東京都
2 出身高校、出身大学学部
聖心女子学院高等科、慶應義塾大学大学院
3 座右の銘
世界に変化を望むのであれば、わたしたち自らがその変化を起こさなければならない
4 座右の書
『7つの習慣』スティーブン・R・コヴィー
5 尊敬する人
スティーブ・ジョブズ
6 私の健康法
睡眠

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伊達美和子(だて・みわこ)
森トラスト 社長

1971年、東京都生まれ。96年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了、長銀総合研究所入社。98年森トラスト入社。2000年取締役、03年常務、08年専務取締役、16年より現職。

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(森トラスト 社長 伊達 美和子 構成=篠原克周 撮影=初沢亜利)

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