1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

"失敗する理由"を聞かれて答えにくいワケ

プレジデントオンライン / 2018年10月14日 11時15分

『アンナ・カレーニナ』はたびたび映画化されている(画像は2012年の映画ポスター)。(AFLO=写真)

■成功の形は似ているが、失敗の形はそれぞれ異なる

ロシアの文豪、レフ・トルストイの名作『アンナ・カレーニナ』の冒頭は、こんな意味の文章で始まる。

「すべての幸せな家庭は似ている。不幸な家庭は、それぞれ異なる理由で不幸である」

やがて1人の女性をめぐるドラマが始まるわけだが、この有名な書き出しからインスパイアされた「アンナ・カレーニナの法則」をご存じだろうか?

あるものが成功したときには、それは、似たような形になる。しかし、失敗事例は、それぞれ異なる理由で起こる。

たとえば、今、成功するために必要な条件が、主なもので10あったとしよう。成功した場合には、それらがすべて満たされている。結果として、その姿は似ている。

しかし、失敗するときには、10のうち、どれが欠けているのかはそれぞれのケースで異なる。従って、失敗事例は一つひとつ異なる姿をしている。

「アンナ・カレーニナの法則」は、このように、多数の要素によってその成功、失敗が左右されるような事象について、失敗の原因がたくさんありうることを示唆する。逆に言えば、失敗した場合、一体何が欠けているのか、反省するポイントはそこにある。

勉強でも、ビジネスでも、うまくいかない場合は、一連の流れの中で何かが欠けて、引っかかってしまっていることが多い。その理由が何なのか、突き止めなければならない。

「私が失敗する理由を教えてください」という質問に答えにくいのは、その人が失敗している理由が、可能性としてたくさんありうるからである。

目標設定が間違っているのかもしれない。努力が足りないのかもしれない。結果をフィードバックできていないのかもしれない。コミュニケーションがうまくいっていないのかもしれない。

■ただしGAFAでは「法則の逆」が成立する

自分のやろうとしていることがうまくいかないという人は、ぜひ、「アンナ・カレーニナの法則」の視点から、見直し、再点検をしてみてほしい。

少なくとも、失敗する理由はたくさんあり、必要なことのどれか1つが欠けているだけでうまくいかないという認識を持つだけで、原因を発見して修正しようという意識が高くなっていくはずだ。

ところで、インターネットや人工知能などのビジネス環境では、「アンナ・カレーニナの法則」の逆が成立すると主張する人もいる。

電子決済サービスの「ペイパル」の創業者として知られるピーター・ティール氏は、次のような意味のことを著書の中で述べている。

「すべての成功した企業はそれぞれ異なるユニークな問題を解決したことで独占を実現している。一方、すべての失敗した企業は同じ土俵での競争から逃れられなかった点で似ている」

ティール氏の主張は、イノベーションが重視されるビジネス環境においては一定の意義を持つだろう。

確かに、グーグルやアップル、フェイスブック、アマゾンなどの企業は、それぞれ、異なる問題を解決することで独占に近い地位を占め、成功した。

その一方で、このような企業でも、新しい分野で成功するためにはいくつかの条件を満たさなければならなかったことも事実である。

「アンナ・カレーニナの法則」は、その逆説も含めて、ビジネスの進め方を考えるきっかけを与えてくれる。

果たして、あなたは「幸せな家庭」を築けるだろうか。

(脳科学者 茂木 健一郎 写真=AFLO)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください