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公的年金ルール改定で"高齢者"負担膨らむ

プレジデントオンライン / 2018年10月8日 11時15分

写真=iStock.com/EllenaZ

老後資金のベースとなる公的年金。2018年4月、年金額のルールが改定されたことはご存じだろうか。

年金には2004年に導入された「マクロ経済スライド」というルールがある。これは、そのときの社会情勢に合わせて、年金の給付水準を調整する仕組みだ。年金額は、賃金や物価が上昇すると増えていくが、現役世代の人口の減少による保険料収入の減少や、平均余命の延びによる年金給付費の増加を考慮して、一定期間、年金額の伸びを調整する(賃金や物価が上昇するほどには増やさない)。財源の範囲内で長期的に運営するためだ。

具体的には、賃金や物価による年金額の伸びから、現役世代の人口の減少や平均余命の延び率を考慮した「スライド調整率」を差し引いて、その年の年金額を決める。

例えば物価が2%上昇しても、年金も2%増額するのではなく、1%の増額に留める。この場合、名目の額(実際に支給される額)は増えても実質的には価値は下がることになる。ただし、「年金受給者に配慮」して、名目上の金額が前年より下がることがないような措置にした。「実質的な価値が下がることはあっても、金額そのものは下がらなかった」ということだ。

しかし、この制度が導入されて以降、賃金や物価の下落が長く続いたことから、この制度はほとんど適用されなかった。このままでは、将来世代の給付水準の確保が困難となるため、18年4月から、新たにキャリーオーバーという方式がとられることになったのである。

具体的には、(1)景気拡大期には賃金・物価の上昇を反映して年金額を調整する(増やす)。(2)景気後退期には賃金・物価の下落を反映せず年金額は改定しない(減らさない)。ただし、それでは年金制度の持続性が損なわれるので、(3)景気回復期には賃金・物価が上昇するが、年金は景気後退期の未調整分を含めて調整する。つまり、景気後退期には年金を下げず、未調整分は景気回復期までキャリーオーバーする、というわけだ。

景気後退局面が長引くとキャリーオーバーされる分が膨らみ、景気回復に転じたときに大幅に年金が減ることも考えられる。

さらに21年4月からは物価も賃金も下がると賃金に合わせて年金額を下げるほか、物価は上昇しても賃金が下がれば年金額も下がるようにする見込みとなっている。

夫が会社員、妻が専業主婦だった高齢夫婦の年金受給額は、現在、平均で22万円程度だが、ここから1%減額の場合、2200円ダウンすることになる。この程度であれば「節約でなんとかなる」と感じる人が多いかもしれないが、40歳以上の人が負担する介護保険料も上昇傾向にあるなど、高齢者の負担は増えていく傾向にある。

これは少子高齢化で高齢者の割合が増え、政策において多数派の高齢者層に配慮する「シルバー民主主義」からの脱却ともいえる。

そのほか、国民年金保険料の払込期間を現在の60歳までから65歳に、支給開始年齢を現在の65歳から67~68歳に引き上げる、といった可能性もある。

これらを考慮すれば、iDeCo(個人型確定拠出年金)の制度を利用して老後資金づくりをしたり、高齢になっても収入を得る自助努力も必要だ。パートで働く妻が収入アップを図って厚生年金に加入することも、受取額のアップに繋がり、効果的だ。

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深野康彦
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルリサーチ代表。『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』『ジュニアNISA入門』など、著書多数。

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(ファイナンシャルプランナー 深野 康彦 構成=高橋晴美 写真=iStock.com)

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