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橋下徹「総裁選で見えた進次郎氏の真贋」

プレジデントオンライン / 2018年9月19日 11時15分

取材に応じる自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長(右上)=9月14日、東京・永田町の同党本部(写真=時事通信フォト)

安倍晋三首相の「三選」が確実とされる自民党総裁選で注目を集めたのが小泉進次郎氏の去就である。しかし、安倍支持とも石破茂元幹事長支持とも明言しない進次郎氏の態度は、リーダーとして物足りないと橋下徹氏は指摘する。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(9月18日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

■3点だけでも「改革案」をまとめたことは評価できるが……

安倍晋三首相と石破茂・元幹事長との自民党総裁選の戦い。一番注目されているのは、両当事者ではなく、小泉進次郎さんだ。

国民からの期待は大きいし、今回は総裁候補に名乗りを上げなかったので世論調査の対象にはならなかったが、もし首相候補者として安倍さんや石破さんと並んだら、彼が一番の支持率になるかもしれないだろう。

顔は男前。また僕の数少ない政治家交流の中でも、政治家の口から進次郎さんの悪口を聞いたことがない。だいたい政治家っていうのは妬みやっかみが強くて、人の悪口を言うのが好きなんだけどね。

(略)

ブチ切れることもないし、行儀の悪さも出さない。有権者への愛想もよさそうだ。ほんと疲れないのかなーと心配するくらいだよ。大きなお世話か。

進次郎さんの政治家としての活動については色々な意見がある。ただ議員は、首相・大臣・知事・市長などと違って行政権を持っていないから、いきなりガンガン改革を実行することはできない。

(略)

その中で進次郎さんは党首討論を夜やること、国会のペーパーレス化、出産女性議員の代理投票を認めることを、平成の間、すなわちあと半年で実行する案として、与野党の有志議員で取りまとめた。

(略)

ほんと議員の意見をまとめるのって大変なんだよ。議員はみんな国会改革が必要だ! と口では言っていても、議員の世界は妬みやっかみの世界だから、進次郎さんだけがどんどん目立つのを良しとしない議員も多かったと思う。

そんな中でも、とりあえずまとめたことは立派だと思う。

(略)

■人質を取られてもイラク撤退を拒否した小泉元首相の「究極の決断」

以上、つらつらと述べてきたけど、進次郎さんの政治家としての態度振る舞いのみを対象とし、そして世間で評価されている彼の様々なプラス面を考慮したとしても、僕は今回の総裁選における彼の態度振る舞いを見て、政治家としての期待を失った。彼の政治スタイルは僕の感覚には合わない。一国民として非常に残念だった。

(略)

進次郎さんは、2012年の総裁選において、石破さんを支持したらしい。じゃあ今回もそのまま石破さんを支持するのかといえば、これだけ激しい権力闘争において負ける方に付くわけにいかない。今の石破さんの情勢は厳しいので、進次郎さんは慎重にならざるを得ない。

しかしだからと言って、情勢で有利な安倍さんの方に簡単に付くわけにもいかない。石破さんから安倍さんに乗り換えたことについて、勝ち馬に乗ったと見られ、国民からの支持率が下がることは避けなければならない。

(略)

政治家の力には大きく分けて二つある。一つは政治の世界における人間関係の力。自分がお願いすれば、それを聞いてくれる人間がどれだけいるか。自分を支えてくれる人間がどれだけいるか。これが本来の政治力だろう。

そしてもう一つが、国民からの支持率。民主政治においては、選挙が最も重要になる。選挙に勝たなければ議員の座を保持できないし、党としても政権を獲ることができない。この選挙で勝つためには、当然、国民からの人気が重要だ。

(略)

ただし政治家にはそれ以上に必要で、決定的に重要な能力が求められると僕は自分の政治家経験を基に認識している。

その能力とは、究極の場面での決断力と、その説明力だ。

政治力もなく、たいした権限もないしょうもない政治家は、究極の決断力など求められることはない。適当に政治家人生を楽しめばいいだけ。しかし進次郎さんのような政治家たちは違う。

これから日本の政治の枢要に位置していくだろうし、そして権力を握れば握るほど、もっと言えばトップに近づけば近づくほど、究極の決断を求められる。特にナンバーワンに求められる究極の決断はえげつないものがある。ここはナンバーワンと、ナンバーツーでは、天と地、月とすっぽんくらいの差がある。ナンバーツーは、やはりナンバーツー。ナンバーワンが負う責任と重圧は、ナンバーツーのそれと比べ物にならないくらい重い。

(略)

国のリーダーである首相の決断となれば、知事、市長の決断とは、その究極性のレベルが全く異なるだろう。戦争をする権限もあれば、国民を殺してしまう決断も求められる。そういえば進次郎さんの父親である小泉純一郎元首相は、2004年、アルカーイダによってイラクにおいて日本人が人質に取られ、自衛隊撤収を求められた時に、拒否の決断をした。そのことによって人質は惨殺された。ほんと究極過ぎる決断だったと思う。

そしてトップの決断は、インテリや学者のように理想論だけを追求するわけにいかない。そんな理想論は言われなくても分かっているけど、それでも現実的にこのような決断をせざるを得ないということに、次々とぶち当たる。悩む暇もないくらいに。それに対してインテリたちはお気軽に理想論だけで批判してくる。

特に、状況の変化によって、以前の考えや判断を変えなければならないことは多々ある。状況に合わせた現実的な判断というやつだ。しかしこれは、有権者からは、「筋を曲げた」「判断がぶれた」などと批判され、支持率が一気に下がって政治家にとって命取りになるときがある。

まさにこのようなときに、どのように説明をするかが、権限と責任を持つ重要なポジションに就く政治家の勝負所だ。以前の考えや判断を変えたときの説明の仕方。ここが本当に大変なんだ。

(略)

■学級委員のような模範解答を捨て「二者択一」ができるか

今回の総裁選において、安倍さんを支持するのか、石破さんを支持するのか、進次郎さんはまさに究極の政治決断を迫られている。国民からの人気を落とさないために、以前と変わらず石破さんを支持して筋を通すというなら、死ぬ気で総裁選を戦わなければならない。が、それは、もう遅い。

では安倍さんに付くのか。そうであれば、石破さんから安倍さんに乗り換えた理由の説明が必要で重要だ。それができないというなら、責任ある政治家として今後、過度な期待はできない。もう彼も37歳。国によっては、国家指導者になっている歳でもある。

おそらく彼は、この辺の事情を考えて、総裁選での討論会をしっかり見るという体裁をとっているのかもしれない。しかしそれは猿芝居過ぎる。

今回の総裁選での判断は、現職である安倍さんの政治を信任するかどうかだけだ。そんなのは二人の討論を見なくても、判断できること。ましてや石破さんの論は、著書にもなっているのでそれを見れば分かること。討論を聞いてから決めますというのでは、いかにも学級委員がいうような模範解答である。

進次郎さんは、「単純な二者択一ではない」というが、トップの重要な決断は二者択一にしかならない。決断する「過程」においては、色々と複雑な事情や利害が絡み合い、本当に難しい高次元方程式を解くような作業になるが、しかし最後の決断は二者択一になる。

進次郎さんが、安倍さんに付くなら、石破さんから安倍さんに切り替えた理由をどう説明するのか。僕はここが一番知りたいし、ここに一番関心がある。この説明の仕方にこそ、政治家としての能力の全てが表れるといっても過言ではない。この説明の仕方こそが責任と権限を有する政治家、特に国のリーダーになれるかどうかの試金石だと思う。

この説明ができないなら、僕は一国民として進次郎さんに今後、過剰な期待はしない。ましてや石破さんに付いたか、安倍さんに付いたかを最後まで公にしないというなら、なおさら期待はしない。

もちろん、僕よりもはるかに優れた政治家であることは認めた上で。

(ここまでリード文を除き約3100字、メールマガジン全文は約1万2000字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.120(9月18日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【僕の「小泉進次郎」論】一番言いにくいことを、きちんと説明できるかどうかが試金石だ》特集です。

(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=時事通信フォト)

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