外資系で働きたいなら知っておくべきこと

プレジデントオンライン / 2018年9月12日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/jacoblund)

働き盛りのビジネスパーソンなら、外資系企業への転職を考える人も多いだろう。年功序列ではなく成果主義で働きたい。グローバルに挑戦したい。また、高い報酬を魅力に感じる人もいる。しかし、インフォシスリミテッド日本の大西俊介代表は「外資系で働きたいという相談者には、勘違いをしている人も少なくない。実力があるからと言ってすぐ成功できるわけではない」と指摘する。外資系で働くために必要なものとは――。

■20代後半から30代前半の外資系転職人気は高い

日本の新卒就職事情を見ると、国内の大手の人気は根強い。ただ、内向きだと評される就活生の中にも、一定数は「外資系で働きたい」という人が存在する。ディスコが運営する就職情報サイト「キャリタス就活」が実施した「就職希望企業ランキング:総合編(2019)」では、上位に国内大手企業が並ぶ中、13位に外資系コンサルティング企業のアクセンチュアが入った。

やはり外資系といえばコンサル、IT系メーカーが人気で、アクセンチュアはその代表格。すべての業種の中でのアクセンチュアが13位に選ばれた意味は大きい。これに対し、アクセンチュアと似た仕事ができそうな日系企業は、17位日立製作所、27位野村総合研究所、46位NTTデータがある。外資系では、PWCコンサルティングやデロイトトーマツコンサルティングもランキングに名前を連ねている。

経営コンサルタントとしての実感としていうと、20代後半から30代前半の若手・中堅の転職市場では、外資系の人気がより高い。私は約30年のキャリアの半分強が日系、残り半分弱が外資系企業。「真ん中よりやや日本寄り」でしかも一方通行ではなく、外資系、日系を行ったり来たりの往復で転職を繰り返してきたので、それなりに珍しいハイブリッド種である。

■外資系への転職はそんなに甘くない

そんなキャリアのおかげもあって、NTTグループや日立製作所、富士通などの日本を背負って立つ大手IT企業の若手・中堅社員から、外資系企業への転職相談を受けることも多い。彼らの中には、転職が成功してその後、一緒に仕事をすることになるケースもあれば、さらにその後、互いに会社が変わってからも、関係を継続している人たちもいる。

成功の定義は人によりさまざまだ。最終的に、転職が成功するかしないかは、本人の考え方で次第であり、それは本人の責任である。しかし、そもそもこれから労働人口が少なくなっていくこの国の行き先を考えると、やはり成功する人間は増えてほしい。そんな思いから、外資系企業を目指す人たちに、外資系企業への転職は甘くはなく、予想以上に覚悟が必要であること、しかし、その壁を乗り越えて得られるものは計り知れないことを、できるだけ本音で伝えたい。

まずは、外資系企業で勝ち残るため、転職前に心得ておくべきポイントを解説しよう。

■そもそもなぜ「外資系」に転職したいのか

転職相談にきた人に、「今勤めている日系の会社をやめて、なんで外資系に行きたいのか」と質問すると、こんな答えが返ってくる。

1.年功序列ではなく成果主義。結果さえだせば、年齢に関係なく高給で、上位の役職につくことができるから
2.世界を土俵に仕事ができるから
3.意味のない、仕事のための仕事、会議のための会議がないから
4.英語やマネジメント、勉強の機会が多いから
5.英語で会話、海外で仕事、飛行機はビジネスクラス。ちょっとかっこいいライフスタイルだから

■「評価」は実力主義とか結果主義とか言うけれど……

最初の「結果主義で高給と上位の役職が得られる」と、「世界を土俵に仕事ができる」の2つについては、理解できる。しかしこれら2つは、必ずしもかなうとは限らない。

特に個人の成果についての「評価」は、転職がうまく行くかの最も重要なポイントであり、せっかく移った会社を去っていくきっかけの多くが、その「スレ違い」に起因する。

IBMでもアクセンチュアでも、「日本の会社と同じようなこと」は起きる。どういうことかというと、たしかに年功序列は基本的にはないが、このような会社は、KPI(評価指標)は明確でも、最後のランク付けについては絶対評価でなく、ランクごとに分布率が決まっているのだ。

例えば、S評価は全体の2%、A評価は全体の10%などである。日本の会社では当たり前の話だが、外資でも同じことは起こるということ。つまり、これだと、満足できる業績を残しても、満足のいく評価がもらえないということが起こってくるわけだ。

さらに、グローバル企業の場合、国やエリアで評価の分布率や昇進できる人の数の割り当てが決まっているところが多い。日本と比べ、米国はビジネスの規模が大きいので、コンサルティング会社でいうところのディレクター、マネージングディレクター、IT企業のバイスプレジデントやアソシエイトバイスプレジデントのクラスになると、特に枠の数や分布率はアメリカに偏り、すなわち日本やアジアが不利になってしまう。

その地域が稼いでいないのだから、当たり前といえば当たり前の話ではある。シニアマネジャーで入社して、素晴らしい成果を残してもその上のポジションの枠が日本を含むAPACだと1つしかなくて、倍率1000倍――そんな企業の話を聞いたこともある。これでは、そう簡単に昇進は見込めない。

また、社内政治は日本の会社に限ったことではなく、かえって外資系のほうが激烈だ。外資系は転職者が多いとはいえ、生え抜きの集団や創業者に親しい人たちが重要なポジションを占有していたり、優秀なチームを抱えていたりするといったことは、当たり前のようにおこっている。

■成果を出すとは「与えられた数値目標を上回ること」

そして、会社全体の業績が悪化した時には、日本の会社よりもドラスティックにボーナスは吹っ飛んでいく。個人がいくら頑張っても「ない袖は振れない」といわれればそれまでだ。

「結果をだせば……」とは、正確に言えば「与えられた数字目標を上回れば」ということである。私がNTTデータで「課長」だったころ、もう20年も前の話だが、数字が足りなくても先進的な案件や有名顧客の案件を受注すれば、それで評価されることも多かった。外資ではそうはいかない。

確かに質的な評価も大切だが、評価項目のリストの中にそのような項目がなければ昇進やボーナスにはまったく影響されないのが、外資系企業だ。ディレクタークラス以上であれば基本的には担当領域の「売上」と「利益」、若手のコンサルタントであれば「ユーティライゼーション(稼働率)」。これが評価でのウエートが最も大きい。

まずは、こういう数字の目標をクリアすることで出発点に立てる。新卒から外資系に入った人たちには当たり前の話だが、日本企業からキャリアをスタートさせた人たちからすれば、頭でわかっていても、体がついていかなくなる。外資系企業のジャパンオフィスで初めて大手企業の仕事を受注しても、数字が足りなければボーナスはもらえないということになる。

特に日本の会社から外資系に転職する若手層が一番多くぶつかる壁が、この「ユーティライゼーション」だろう。この点は、改めて次回、ケースを交えて解説したい。

■「世界を土俵に仕事をする」というけれど……

外資企業のジャパンオフィスは、当然、日本市場を担当する。だから顧客は日本企業か外資系企業の日本法人。つけくわえると、日本企業の海外現地法人の仕事が自分たちのテリトリーとなるかどうかは、会社によって異なる。

特に会計法人系のコンサルティング会社(デロイトやPWCなど)は、少しずつルールは変わりつつあるが、テリトリーのほうが重要視されている。だから、例えば、日本企業の米国現地法人の仕事は米国本社の担当であり、売り上げも日本にはあがらないことが多い。

そうなると、ジャパンオフィスは国内で仕事をすることになるので、「世界を土俵に仕事をする」=「海外のプロジェクトで仕事をする」と考えていた人からすれば、「大きな誤算」ということになる。

■「ジェフ・ベゾスと仕事をしている人」と仕事をする

グローバルの本社とつながり、グローバルの組織の一員として仕事をする、これが「世界を土俵に仕事をする」ということである。それができるのは、具体的な例を挙げると「ボス」のグレードである。もちろん外資系でも能力の低い「ボス」はいるが、それでも上位層の実力はけた外れに高い。

10万人以上の組織を抱えて、毎日数百通のメールをこなし、アメリカ、ヨーロッパ、アジアと電話会議を行い、大きな方針は自分で考えていく。例えば、私のボスは、45歳という若さで、アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾスやマイクロソフトCEOのサティア・ナデラとも関係を築いている。

しかしながら、このようなクラスの人材とつながりを持てるのは、ごく一部。グローバルな環境にいない限りできることではない。ただし、自分が直接世界の大物とやりとりするのではなくとも、このボスのようなグローバルに活躍する実力のある人たちと一緒に仕事をする可能性があることこそが、「世界を土俵に仕事をする」の1つの形ではないだろうか。

■そもそも「日本化された外資」と「外資」とでは大きく違う

日本IBMや日本オラクルなどは1000人を超える従業員がおり、日本法人としても長い歴史がある。社内に日本人も多く、日常の仕事はほぼ日本語で完結できる。

対して、インフォシス、ウィプロなどのインド系IT企業は日本人の比率が少なく、日常も英語の会話の比率が高いワークスタイルだ。日本に事務所を構えたばかりの米国のスタートアップ企業の日本支店だと、仕事はそのほとんどが米国本社とやりとりしながら進めることになる。このような企業では日本人はマイノリティーな存在にある。

つまり、日本IBMのような「日本化された外資」の場合は、本社からすれば「日本化」することが1つのゴールで、日常の生活は日本企業とあまり変わらないわけだ。日本企業で現在働いていて、「外資系」に転職したいと考えている人たちのなかには、「外資系」のイメージ(企業文化とかワークスタイルとか)を「日本化された外資」として浮かべている人もいるだろう。そんな人の中には、「日本化されていない外資」のワークスタイルに面食らう人もいるかもしれない。

ワークスタイルが転職に際しての最重要ポイントにはならないが、転職してからは日々のことになるため、どんなコミュニティーの中で自分が仕事をしたいのかを、ちゃんと考えておいたほうがよい。

■「想定外」を覚悟しないと、ストレスでつぶれてしまうかも

どちらがよいのか、悪いのかというという議論ではないが、私は若いときには、自分の存在が「マイノリティーになるコミュニティー」で仕事をする経験をしたほうがよいのではないかと思う。異なる考え方やコミュニケーションの仕方を受け入れる素養が身に付くからである。

仕事の内容、評価、日常生活(言葉やワークスタイル)、人間関係含めて、日本企業で働いてきた人たちからすれば、外資系の企業は想定外のことが多いかもしれない。押さえておくべきところを間違えると良い仕事をしても評価はされないし、これまで働いてきた環境とあまりにも異なる環境で仕事をするのは、相当なストレスになってしまうかもしれない。

そして、最後の論点は報酬である。業種によるが、私が生きてきたIT業界で言えば日本企業の報酬は外資系と比べると見劣りがする。もちろん何をゴールにするのかによって変わるが、報酬と役職が1つの成功の要素であることは、間違いない。

次回は具体例を挙げながら、報酬と役職について「なぜ失敗するのか、どうして成功したのか」を解説しよう。(続く)

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大西俊介(おおにし・しゅんすけ)
インフォシスリミテッド日本代表。1986年、一橋大学経済学部卒業後、同年日本電信電話株式会社に入社、株式会社NTTデータ、外資系コンサルティング会社等を経て、2013年6月より、株式会社NTTデータ グローバルソリューションズの代表取締役に就任。NTTデータグループの日本におけるSAP事業のコアカンパニーの代表として事業拡大に貢献した。2017年1月より現職。著書に『グローバル競争を勝ち抜くプラットフォーム戦略』(幻冬舎)がある。

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(インフォシスリミテッド日本代表 大西 俊介 写真=iStock.com)

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