話がうまい人は「相手の脳」に訴えかける
プレジデントオンライン / 2018年9月18日 9時15分
※本稿は、小山竜央『パブリック・スピーキング 最強の教科書』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■コミュニケーションこそ最高のビジネススキル
私がここで皆さんに伝授するのは、「パブリック・スピーキング」のスキルやノウハウです。
人前で話すということならスピーチやプレゼンがありますが、私がそれらと区別してパブリック・スピーキングを強調するのには理由があります。それは、パブリック・スピーキングが、話したり伝えたりすることが必要な人たちにとって、もっとも効果の高い最強のノウハウであり、単なるセミナーやプレゼンのコツにとどまらない最先端のビジネススキルだからです。
パブリック・スピーキングのスキルがあれば、単位時間あたりの収益が極めて高いセミナーやイベントビジネスで成功することができます。そして、パブリック・スピーキングとは、ただセミナー講師を目指している人が学ぶべきノウハウではなく、これからの時代にビジネスで生き残るために、ほとんどの人に必要なスキルなのです。
■日本に「カリスマ」はほぼいない
なぜなら、今後、大多数の仕事がAI(人工知能)に取って代わられ、加えて、「人生100年時代」と言われる、自分の力で一生働き続けなくてはならない世の中において、コミュニケーションというリアルな人間にしかできない技術を磨き、自分の影響力を最大限に高める方法こそが最高のビジネススキルになるからです。
残念ながら、現在のところ、日本には、本物のカリスマと呼べるパブリック・スピーカーはほとんど存在しません。5年以上も同じコンテンツを使い回すセミナー講師、机上の理論だけを教える稼げないマーケター、自分のファンだけを囲い込んでブランディングを説く偽物の指導者……そんなスピーカーばかりというのが現状なのです。
しかし、私は、すべてを現在進行形で実践しています。毎月のように自分自身のセミナーやイベントで数千人以上の集客を安定して行い、しかも、その9割は新規顧客です。
■「自分以外」の実績を示す
それでは、パブリック・スピーキングのノウハウの1つとして、短時間で全員を巻き込む話し方を教えましょう。
前提として、セミナーやイベントの会場に来たお客様全員があなたに興味を持って話を聞いてくれるような、完全無欠の自己紹介はありえません。同じ客層であっても、常にお客様には2種類の人種、2つのパターンが存在すると思ってください。
例えば、男と女、お金がある人とない人、実績をありがたがるタイプと実績だけでは動かないタイプなどです。このように2つのパターンを前に話すわけですから、実際の自己紹介では、しっかりと手順を踏んで、自分の話に興味を持ってもらえるような構成を考えましょう。
まず、最初は「私にはこんな実績がある」という、自分自身の実績を示す紹介です。これだけで「すごい」と興味を持ってくれる人もいますが、「自分には関係ない」「この人ができただけで自分には無理だろう」と他人事のように感じる人もいます。
そこで、次に、自分が関わった人たちやこれまでのお客様が、実際にどんな成果を出したかを語ります。自分以外の実績を示すことで、同じようなことが皆さんにも起こりえる、という共感のイメージがもたらせるのです。
■理論だけでは動かない人がいる
ここまでで大部分の人は、あなたがこれから話すノウハウにはきちんと裏付けがあって、いかに効果があるのかを理解し、興味を持ってきたはずです。それでも、これだけではまだ、会場にいる全員を巻き込むには不十分です。
次の段階で必要なのはストーリーです。なぜなら、人には理論で動く人と、理論だけでは動かない人がいるからです。
特に女性は、感情に訴えられないと、ただ実績を示されても響かないタイプが多いものです。逆に男性は、ストーリーだけでは納得せず、実績を求める傾向にあります。また、1人の人間でも、理論の部分とストーリーでは、それぞれ左脳(理論)と右脳(ストーリー)というように、働きかける部分が異なります。
だからこそ、理論的な実績の話のあとに、人の心を動かすストーリーを語るべきなのです。これによって2つの人種、2つのパターンの人、右脳と左脳のどちらにもあなたの話が響き、短い時間で全員を巻き込むことができます。
■誰もが気になってしまう物語の作り方
ストーリーについては、「試練・問題のあった時期から一転、まったく違う現在がある。その理由は何でしょうか? 聞きたくないですか?」といった、ギャップを埋めたいと思わせるような流れが必要です。
ここでもポイントは、相手の脳にギャップを生じさせることです。これを言い換えれば、ビフォー・アフターがある話ということになります。
人は本能的にビフォー・アフターものが大好きです。ベストセラー本の構成、ヒットドラマやヒット映画のストーリー、再生回数の多い動画などは、どれも落差の大きいビフォー・アフターがあります。
スピーキングにおいても当然、ビフォー・アフターを常に意識しましょう。具体的には、パブリック・スピーキングの場合は、自分やお客様の「変化」にフォーカスした話をしてください。
変化があると思うと、人はその過程を知りたがります。ホームレスだった人がお金持ちになった、太っていた人が急に痩せた、人見知りの人がスピーキングのプロになった……。ギャップがあればあれほど、その内容に興味を持ちます。
■ギャップのあるストーリーを複数織り込む
すなわち、ロジックとしては、試練・問題のあるダメだった状態から、アフターとしてすごく良い結果を出し、最後に「この理由、ここまでのノウハウを知りたくないですか」というパターン、これを繰り返すということになります。
こうしたビフォー・アフターを持ったストーリーの強さが、パブリック・スピーキングでは重要になります。「もっとこの人の話が聞きたい」と思わせる、カリスマと呼ばれる存在になりたいのであれば、このストーリーをできるだけ多用してください。私の場合は、1回の登壇で最低でも3回、だいたい4~5回はこうしたギャップのあるストーリーを織り込んでいます。
世界的なスピーカーも、ほぼ間違いなく、ビフォー・アフターのストーリーを多用することで、聴衆を熱狂させるパターンを構築しています。ギャップのあるストーリーは、どんな国でも、そんな世代でも、男女を問わず、興味の対象になるのです。
■すべての聴衆に当事者意識を植え付ける方法
実際にセミナーや講演をする場合、あらゆる層のお客様が来るパターンが多いと思います。経営者も来るし、会社員も来る、学生でもちょっとお金を持っている人がいる、といったように。そんな会場では、どんな話し方をするのが適切なのでしょうか。
![](https://president.jp/mwimgs/9/a/-/img_9a40f656b47e95c7290f38c77c3ec5c1192646.jpg)
自分はそこにいる全員を感動させたい、全員に良いスピーキングをして巻き込みたいというのであれば、シンプルで簡単な方法があります。常に、そこにいる、いちばん低いレベルの層に合わせて話をする、というものです。
さらに上級のテクニックとしては、さまざまな人たちが引っかかるようないくつかの言葉を、手探りで順番に試していく、という技術もあります。最初は学生向けの言葉で、次の瞬間には会社員に向けて、その次には経営者に向けて、といった調子で、次々と言葉を換えて話すのです。
こうしてあらゆるカテゴリーの方々に当事者意識を植え付けていくのです。具体的に実践しやすい方法としては次のようなものがあります。
「今からちょっと、この会場に来ている女性の方たちに向けて話したいのですが……」と言うと、女性側が反応します。その次には「今度は男性の人たちに……」と、逆の対象に向けて話をします。
■正反対のターゲットを決めて話す
これは、「今から○○の人に話をします」と言うだけの簡単なやり方です。このテクニックを使うと、「○○の人」に相当する人が必ず反応します。そのため、「最近、ちょっと髪の毛が心配だと思っている人に、話があるんですが」と言ってから、「髪には自信があるという人には……」「髪のことなんて気にしていない人は……」と話をしていくと、自然と全員が当てはまっているということになるわけです。
ただ、いちばん相手の記憶に残る話し方としては、正反対の人に話しかける、というのがいいでしょう。「女性」の次に「男性」、「お金を持っている人」の次に「では、今から、お金がない人に」と振る。こうして正反対のターゲットを決めて話をしていくと、シンプルに会場全体を巻き込んだスピーキングが成立します。
あなたも会社の会議やプレゼン、セミナーなど人前で話す機会があるときには、このテクニックは、ぜひ試してみください。これまで以上にグッと距離が縮まったコミュニケーションが可能となるはずです。
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株式会社ライブクリエイト代表取締役
1982年、香川県生まれ。2005年、大手広告代理店に入社しSNS開発、ゲーム開発、マーケティングに携わる。その後、独立し、過去に培った知識を元に「ゲーム理論マーケティング」を取り入れた法人へのビジネス指導と、講演会を全国で開催。著書に『5分の使い方で人生は変わる』『スマホの5分で人生は変わる 』(ともにKADOKAWA)、『なぜか、自動的に幸せになれる72の習慣』(サンマーク出版)、『ストーリー思考で奇跡が起きる』『神速スモール起業』(ともに大和書房)など多数。
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(株式会社ライブクリエイト代表取締役 小山 竜央 写真=iStock.com)
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