アパ代表"3倍給料払い5倍の仕事を期待"

プレジデントオンライン / 2018年9月21日 9時15分

アパグループ代表 元谷外志雄氏

これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、アパグループの元谷外志雄代表のインタビューをお届けしよう――。

■利益率 他ホテルの約6%に対し、驚きの30%

収益面で国内最強のホテルチェーンを誇るアパグループ。東京都心への集中出店を武器に、2017年度も売上高1161億円、経常利益350億円と増収増益を維持。しかも多くのホテルの利益率が約6%に対し、同社は30%と驚きの高収益を稼ぎ出す。その裏にはどんな人材活用法があるのか。代表の元谷外志雄氏に人材論を語ってもらった。

──人手不足が顕在化し、人材登用が難しい時代になりました。

わが社の従業員は全体で4600人くらい。そのうち半分強は正社員です。18年の新卒社員は275人、毎年増加しています。その中で、早い人は5年目で支配人になります。その意味では促成栽培です。最初に小さなホテルからスタートして、力を発揮すると次にもう少し大きいホテル、さらにいい業績を上げるとまた大きいホテルへと、頑張る人にはどんどん大きなステージを与えていく。もしホテルが1つしかなければ、いくら優秀な人でも、上の人が辞めなければ出世できません。しかしアパは新しいホテルがどんどん増えていますから、ポストはいくらでもあるのです。

中途採用も新卒も待遇は同じ。差別はありません。買収したホテルの社員も、希望者は全員受け入れています。新卒も中途採用も買収先の社員も、優秀な人にはどんどん大きな仕事をしてもらいます。だからこそ、従業員のモチベーションは高められ、仕事にやりがいが持てる。それぞれがキャリアの目標を持てることが、わが社の強みなのです。

──従業員にはどのような裁量を与えていますか。

各支配人に事業の根幹である価格の裁量権を与え、需給関係を鑑みながら社内ルールの範囲内で価格を設定するようにしています。安くすれば稼働率は高くなり、100%を達成することもできます。しかし収益は単価×稼働率ですから、安いだけではいけません。現在の情勢や過去のデータを分析して、収益を最大化するような値付けをすることが重要になってくるのです。

──そうしたセンスをどうやって教育しているのですか。

わが社が採用しているドミナント戦略は、支配人の能力向上に貢献しているかもしれません。たとえば新宿に9つ、六本木周辺に8つなど、1つのエリアに集中出店をしているため、オーバーブッキングやキャンセルが発生した場合、お客様を両店間で融通することがあります。そうしたエリア内での調整は、支配人同士が連携しますから、優れたサービスや価格設定の感覚を学ぶ機会にもなる。またホテルが次々とできるため、人事異動が頻繁にあるのも強みです。いろいろな支店を回ると、上司や環境が変わることが刺激になって、本人も変わっていきますから。

■実力主義 新卒10年33歳で役員登用の事例も

──優秀なスタッフを育成する方法とは何でしょうか。

スタッフの能力を鍛えるためには、経験の積み重ねが必要です。ただ単にマニュアルを丸暗記するだけでは意味がありません。そのために接客スーパーバイザーといった指導員を地域ごとに設けて、先輩が後輩を育てていくというスキームを採っています。外部の専門家を呼んで研修することは、ほとんどありません。あくまで先輩と後輩の関係から仕事を身に付けることを、重視しています。

ただし、基本は実力主義です。能力があればどんどん引き上げていく。新卒10年、33歳で役員に登用した事例もあります。抜擢して結果が出たら、もっと重要な仕事を任せる。だから、頑張る人は出世が早いし、重要な役職を担ってもらう。その人にたくさん給料を払っても、それ以上のメリットがある。優秀な人に3倍の給料を払ったとしても、仕事が5倍、10倍できたら、そのほうがコスト的に少なくて済みます。

また、収益を高める人材を育てるため、創意と工夫を意識し、アイデアを出してくれる人を評価しています。社内では無駄を排除する企画を募集する「金脈発掘コンテスト」や、会社の評価や評判に貢献した従業員の成功談を発表する「成功事例コンテスト」など、さまざまなイベントを行っています。さらに経費10%、仕入れ注文費10%、残業の削減などによる人件費5%の削減を目指した「10・10・5運動」も実施。高評価の従業員は表彰し、報奨金を与えるなど、改善を意識させる取り組みを毎月、各支店などで行っています。

──人材育成に関して、参考にした企業はありますか。

私は同業他社の真似はしませんし、調べたりもしません。これまで同業他社とは全く違うことをやってきたつもりです。新都市型ホテルのスタンダードは、私が全くゼロからつくったという自負があります。従来のホテルは、かつての貴族をもてなす召し使いのような、ご主人様と召し使いの関係を踏襲し、ご主人様をもてなすというスタイルが一般の都市型ホテルです。しかし現代は、みんなが対等です。だから、ゲストとスタッフも対等であるというのが私たちの一番の理念です。一口に言えば、アパの経営は誇りなのです。誇りを持って泊まっていただける方に、誇りを持っておもてなしをする。これからのホテルはそうした考え方に収斂されていくでしょう。

■「ホテル事業に参入してからは、航空会社を参考にした」

──誇りを持ったおもてなしは、AIでは代替できないものでしょうか。

AIなどIT分野がいくら進化しても、やはりホテルは究極のサービス業であって、人をおもてなしするのは人でしかできません。癒やしの気持ちをAIに持ちなさいと言っても、人間には勝てない。会話、笑顔、触れ合い、名前を覚える。そういったことを大切にするホテルでありたい。いわば、お客様との連帯感、社員同士の連帯感、会社との連帯感を持つことが大事なのです。これまで私は同業他社の真似をせず、先を行く他業種から経営を学んできました。マンション販売のときは、外国車メーカーを参考にしました。ホテル事業に参入してからは、航空会社を参考にしています。飛行機の座席もホテルの部屋も今日のものを明日売ることはできません。だからこそ、人によるサービスによってブランド力をつけなければならない。もし収益力が落ちたとしても、サービスの質だけは変えたくないと考えています。結局は「人」なのです。

▼QUESTION
1 生年月日、出生地

──、石川県小松市
2 出身高校、出身大学学部
石川県立小松高校、慶應義塾大学経済学部通信教育部中退
3 座右の銘
逆境こそ光輝ある機会なり
4 最近読んだ本
『保守の遺言』西部邁
5 尊敬する人
織田信長
6 私の健康法
信念に基づき、思ったことはそのまま言う。遊びを仕事に、仕事を遊びに

----------

元谷外志雄(もとや・としお)
アパグループ代表
石川県生まれ。慶應義塾大学経済学部通信教育部に入学するとともに、小松信用金庫(現・北陸信用金庫)に入社。27歳で独立し、71年、信金開発(アパグループの前身)を設立。現在、マンション、ホテル、リゾート事業など、18の企業からなるアパグループの代表を務める。

----------

(アパグループ代表 元谷 外志雄 構成=國貞文隆 撮影=市来朋久)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング