ブリヂストン"秘密の営業資料"意外な中身

プレジデントオンライン / 2018年10月2日 9時15分

1本300万円以上で利益率も高い。

一流企業のエース社員は、どうやって資料を作っているのか。今回、5つの企業にプレゼンテーションのスライド資料を提供してもらい、その作り方の極意を聞いた。第3回はブリヂストン・小路隆巨氏のケースについて――。(第3回、全5回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年7月30日号)の特集「できる人の資料術」の掲載記事を再編集したものです。

■約3週間かけながらチームで作成していく

「BtoB」――。すなわち企業間取引では、一般に取引額が大きいだけに、より慎重な経営判断がいる。ブリヂストンの小路隆巨さんは、パワーポイントを活用したプレゼンテーションをテコに、そうした難しいBtoBの商談を成立させてきた。

小路さんは自分の仕事に関して、「鉱山や港湾向けにタイヤだけでなく、コンベヤーベルト、油圧ホースなどのゴム製品も納入しています。ITを活用してタイヤの空気圧や温度などの情報を管理し、タイヤ交換などのメンテナンスを効率化したりするサービスも始めました。幅広いソリューションビジネスの強化を図っています」と語る。

ソリューションの提供先は、豪州、ブラジル、チリといった海外の鉱山会社。仮説と検証にもとづいた現場での事前のヒアリングを重ね、お客さまの困りごとを的確に把握することが重要だ。「当然、双方には時間やお金といったコストがかかり、実のあるプレゼン内容が強く求められるのです」と小路さん。

また、多忙な経営者層が集うプレゼンだけに、全体の時間は約1時間と限られる。資料を約3週間かけながらチームで作成していく際に小路さんが一番に心がけているのが、「一目でわかること」なのだそうだ。

今回、小路さんが紹介してくれたのは、外部環境やお客さまの困りごとへの理解など“共通認識”を示した後の具体的なBtoBの提案資料で、まさに“肝”といえる部分の資料だ。ここではわかりやすいように、日本バージョンにしてもらった。

まず、提案内容の全体像を示す。そこではユーザー特有の経営課題を洗い出し、その内容を一般的な表現で顧客価値に置き換える。たとえば、ある経営課題を「コスト最適化」という顧客価値に整理し、「タイヤを長持ちさせる」という提案につなげる。「お客さまと当社が、共通言語で話し合えるようにするわけです。課題解決に向けた理解の土壌づくりのステップでもあります」と小路さんはいう。

■文字の大きさ決め、統一感を出す

次に、個々の経営課題に対する具体的な対策案を提示する。鉱山車両用タイヤのライフサイクルでの「コスト最適化」という価値提案についてなら、「タイヤの寿命が短い」という困りごとに「よく走る商品Bへの交換」という対策案を示し、「10%のコスト削減」という貢献額を添える。さらに、経営者層への「依頼」で、現場の困りごと解決へのバックアップを促す。

写真=iStock.com/Nirian

ここまでの2ステップが「序論」「本論」とすれば、3つめの「効果額・スケジュール」は「結論」に当たる。

経営者にとっての最大の関心事は何かというと、「継続的利益と持続的成長」。ただ単にざっくりとした全体の数字を示すのではなく、提供する商品やサービスごとに、「短期」「中期」「長期」の期間ごとに具体的な数字を示すことで初めて納得してもらえるようになる。「緻密な『仮説』『検証』の繰り返しによって出てきた数字の一覧表は、ある意味で“究極の価値の見える化”といえ、経営者層の心に刺さります」と小路さんは話す。

そのほか小路さんは日頃のパワポ資料作成にあたって、文章はなるべく入れず、数字やイラストなどを多用することを基本にしている。また、大きなタイトルは20ポイント、中くらいのタイトルは16ポイントなど、フォントの大きさを決めたり、「ポジティブな情報は青、ネガティブな情報は赤」といった具合に色使いも決め、全体に統一感を持たせている。

BtoBのパワポ資料にはお客さまや自社の機密事項がつまっていて、本来なら門外不出の資料である。一部とはいえ、BtoBビジネスに長けたブリヂストンのパワポ資料から学ぶべき点は多いはずだ。

Getty Images=写真

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小路隆巨
ソリューション戦略部 鉱山・産業・建機ソリューションビジネス戦略ユニットユニットリーダー。1978年、埼玉県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。2002年に入社し、ORタイヤ海外販売部に配属される。パワポは研修を受けたあと独学で、利用歴10年。

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(ジャーナリスト 野澤 正毅 撮影=渡邉茂樹 写真=Getty Images、iStock.com)

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