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「石破氏を叩く」安倍陣営の"恫喝"の理由

プレジデントオンライン / 2018年9月19日 9時15分

2018年9月17日、東京・銀座で街頭演説する自民党の石破茂元幹事長(右)と佳子夫人(写真=時事通信フォト)

終盤を迎えた自民党総裁選。勝利が確実視される安倍晋三首相の陣営が、さらに支持を増やすため、石破茂元幹事長を支援する側に「恫喝」をしたことが明るみに出ている。「石橋をたたく」ならぬ「石破氏をたたく」という徹底ぶりだが、なぜそこまでやるのか――。

■神戸市議に「圧力」をかけた官房副長官の真意

自民党所属の神戸市議が9月10日夜、自身のフェイスブックに書き込んだ内容は一瞬にして永田町で話題になった。まず書き込みを紹介しておきたい。

元々私は2012年の総裁選では安倍選対で闘った経緯もあり、今回の総裁選も安倍総理を応援していました。
しかし、官邸の幹部でもある、とある国会議員から、露骨な恫喝、脅迫を私達地方議員が受けており、最早地方議員の人格否定ともいえる状態になったため、私達神戸市議、兵庫県議有志は、石破茂候補を応援する決意を固めました。
愛する自民党を守るためにも、党の草の根、土台とも言える私達地方議員が攻撃されるという異様な総裁選を、これ以上許してはなりません。

地元・神戸新聞の報道などによると、神戸市議らに安倍氏の支持を強く求めたのは兵庫県9区選出の衆院議員西村康稔官房副長官。FBに書き込んだ市議以外も同様の「被害」を受けているという。

岡田裕二・神戸市議のフェイスブックから

自民党総裁選は首相の座を争う最高レベルの権力闘争だ。あらゆる権謀術数が飛び交うのは常識。これまでの総裁選でも、脅しまがいの働きかけをするのはさほど珍しいことではなかった。

しかし、働きかけをしたのが西村氏だったとしたら、少し事情が違う。西村氏は官房副長官として安倍氏を支える側近中の側近。今は関西地方を襲った台風21号や、北海道地震の復旧作業の先頭に立つ。自身のツイッターでも災害対応に全力を挙げているつぶやきが続く。その最中に総裁選で「圧力」をかけていたということになれば、安倍政権が災害復旧に全力を挙げる姿勢は見せ掛けだけという印象を与えかねない。

西村氏といえば、7月5日、西日本豪雨が近づいている中で自民党が開いた宴会「赤坂自民亭」の写真をSNSでアップし、大顰蹙をかったことも記憶に新しい。

■石破派大臣に「辞表提出を」と迫る

他にもある。石破派の幹部・斎藤健農水相が14日、千葉市内で行われた石破氏支援の会合で爆弾発言をした。安倍氏を支持する議員から「石破氏を応援するなら(大臣の)辞表を書いてからにしろ」と恫喝まがいの圧力を受けたというのだ。斎藤氏は「ふざけるな。(安倍氏は自分が)石破派と分かってて大臣にした。俺が辞めるのではなく、クビを切ってくれ」と言い返したことも明らかにした。

圧力をかけた議員の名前は明らかになっていない。しかし、この「恫喝」まがいの発言が事実なら、安倍氏と違う候補を押す場合は閣僚や党役員の役職を辞めなければならないことになる。それでは総裁選の行方に関わらず党は分裂状態になってしまう。

安倍晋三首相らが7月5日夜に参加した懇親会「赤坂自民亭」の集合写真。西村康稔官房副長官のツイッターより

■安倍氏は「昔はもっと激しかった」と反論

この問題は17日、民放テレビの報道番組に安倍、石破の両氏が出演した時もとりあげられた。石破氏は「誤った発言。党のためにならない」と批判。安倍氏は、斎藤氏に辞任を迫った議員の実名が誰なのか明らかにするよう求めたうえで「昔はもっと激しかった」と反論した。

討論では憲法やアベノミクスなども話題にのぼったが最もヒートアップしたのが、この「恫喝」問答だった。さわやかな政策論争で党勢拡大をするという当初のもくろみからはかけ離れた展開となってしまっている。

安倍氏は、どの議員よりも総裁選の票読みを厳しく見ており、ゆるみの引き締めに躍起になっている。このことは8月15日にアップした「安倍首相が“3選圧勝”に執念を燃やすワケ」で紹介した通りだ。「何をそこまでやるのか」という意見もあるのだが、これが安倍流。批判を受けながらも「1強」の体制を築き上げ、長期政権を実現した原動力でもある。

一連の「恫喝」も、安倍氏が直接指示をしたのではなく、安倍氏の総裁選に向けた執念をみた側近議員たちが「忖度」して行ったのだろう。

そういった経緯はあるにせよ、選挙戦での安倍氏サイドの動きが、自民党内に不穏な空気を増長させているのは否定できない。選挙で安倍氏が勝ったとしても、党内の亀裂が広がり3選前よりも政権運営が厳しくなる可能性もある。

■「弱い者いじめ」を訴える石破氏サイド

一方、石破氏側は、安倍氏側の強硬姿勢に本気で憤りながら、逆にそれを利用しようとしている側面もある。安倍氏側が「弱い者いじめ」しているイメージを植え付けようとしているのだ。「同情票狙い」といってもいい。

総裁選では国会議員票、地方票とも安倍氏の優位は動かない。しかし「やりすぎ」という空気が広がれば、少なからず安倍氏から石破氏に流れる可能性はある。

石破陣営の議員は「最終盤に来て安倍陣営の失策が続いている。逆転するのは難しいだろうが、ちまたで言われているよりも接戦になる感触がある」という。

そういう党内の危機感もあるのだろう。非議員の高村正彦党副総裁は18日の党役員連絡会で「新総裁選出後、ノーサイドということで党は結束していこう」と呼び掛けた。

結果が出るのは9月20日午後だ。

(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

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