天安門事件 民主化運動家の"あの人は今"
プレジデントオンライン / 2018年10月7日 11時15分
■ネットで“真実”を知る、生真面目で報われない人たち
「実際の出来事を題材にした映画の最後に、登場人物のその後が描かれることがあるじゃないですか。あれ、好きなんですよ。事件のあと、当事者たちはどんな人生を送ったのか。その中国バージョンを書くなら、テーマはこれ以外にありません」
学生たちの民主化運動が戦車と銃で鎮圧され、数千人ともいわれる犠牲者を出した天安門事件。本書のタイトルは、その日付から取られている。
中国国内はもちろん、台湾、香港、タイ、日本など訪ね歩いた相手は、60人以上。運動のリーダーだった王丹氏やウアルカイシ氏も登場するが、大半は無名の市民だ。
「当時の学生はエリートですから、運動が挫折したあと、豊かになった社会に溶け込んで地位や富を得ている人も多くいます。酔えば『あの頃は若かったんだよ』と武勇伝を語る人も多い。日本の全共闘世代に似ていますね」
安田氏の共感は、そうではない人たちに寄り添っていく。貧困層出身のために学生が口にするスローガンの意味さえわからず、あとからインターネットで“真実”を知ったせいで翻弄されていく、生真面目で報われない人たちだ。
■「民主化運動は善だ、と決めつけていいのか」
なかでも、タイに亡命して独自の運動を続けたのちに強制送還される男性が、強い印象を残す。著名な活動家が迫害されれば、国際社会から非難の声が上がる。しかし無名の彼らが目立ちすぎたときは、消息不明になって終わりだ。
「民主化運動は善だ、と決めつけていいのか。現代の中国人がそこにはまりこんでいくことは、幸福なのか。当然あるはずの負の側面も、リアルに描けたと思っています」
本書の副題は、「『天安門事件』は再び起きるか」。さて、安田氏の出した答えとは。
----------
ルポライター
1982年、滋賀県生まれ。立命館大学人文科学研究所客員研究員。広島大学大学院修了。中国やアジア圏を題材に現代社会に鋭く切り込む。
----------
(石井 謙一郎 撮影=奥谷 仁)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
中国の80歳“反骨の女性ジャーナリスト”がSNSで「生命の危機を覚える」と訴え 治安当局が自宅の固定電話や携帯電話、インターネットを遮断か
NEWSポストセブン / 2024年9月23日 7時15分
-
全斗煥クーデターを描いた『ソウルの春』ヒットと、独裁が「歴史」になった韓国の変化
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月10日 15時58分
-
「空挺隊員がタクシー運転手を刺し殺した」韓国現代史上、最も悲惨な光州事件…市民や学生に多くの死者が出た事件の始まりとは
集英社オンライン / 2024年9月9日 8時0分
-
世界で「民主主義」が危機を迎えている根本理由 「民主主義が民主主義を殺す」時代になっている
東洋経済オンライン / 2024年9月3日 14時0分
-
政治と社会の激動期に愛する家族、友人、そして故郷香港を守るため人生と情熱を捧げた香港市民の姿をリアルに記録し続けたドキュメンタリー映画『香港、裏切られた約束』。
@Press / 2024年8月29日 17時15分
ランキング
-
1中国ICBM、小泉氏「重大な挑戦」=石破氏「異例の事態」―自民総裁選
時事通信 / 2024年9月25日 17時31分
-
2「あの時振り返っていれば」両手握りしめ、妻の発見願う夫 能登豪雨
毎日新聞 / 2024年9月25日 17時53分
-
3【速報】大阪城の外堀で女性が心肺停止で見つかり死亡 年齢70代くらい 周辺に多くの観光客で一時騒然
MBSニュース / 2024年9月25日 12時25分
-
4進次郎陣営「大臣手形」乱発で“寝返り画策”か? 党員票は石破&高市の半分で危うし決戦投票
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月25日 9時26分
-
5「手足口病」が再増加で異例の流行 前年同時期の5倍超える感染者数 過去10年で最多
産経ニュース / 2024年9月25日 13時5分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください