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開成校長「ゲーム攻略本も立派な読書だ」

プレジデントオンライン / 2018年9月30日 11時15分

※『プレジデントFamily2018秋号』より。子供を本の虫にするには、親が楽しそうに読書する姿を見せることも重要。「落語の本を読んで笑ったり、夫婦で本の内容について話し合っていたら、子供も自然と興味を示します」(柳沢校長)

「おびき寄せて食いついたら、しめたもの」。そういたずらっぽく笑うのは、開成中学・高校の校長・柳沢幸雄氏だ。ゲーム三昧で本をまったく読まない子に親はどうするべきか。校長は「本の虫にするには撒き餌が大事。親が子に与えるのは必ずしも真面目な小説でなくてもいい。子どもが好む漫画やゲーム攻略本でもいい」と語る。その作戦の神髄とは――。

※本稿は、『プレジデントFamily2018秋号』の特集「東大生192人 頭のいい子の本棚」の記事を再編集したものです。

開成高校・柳沢校長は「本を読まない子」だった

教養や語彙力をつけるため、子供には読書家になってほしい。多くの親がそう願っているだろう。だが、ゲームや無料動画など、魅力的な娯楽が身の回りにあふれている現代。子供の関心がなかなか本に向かわず、頭を抱えている向きも多いのではないか。

しかし、東京大学合格者数トップを誇る開成中学・高校の柳沢幸雄校長はこう断言する。

「子供はきっかけさえあれば、ある日、突然、読書をするようになるので焦らなくて大丈夫です」

実は柳沢校長自身が、「小学生時代はまったく本を読まない子供だった」という。母校の開成学園の校長になる前、東京大学やハーバード大学で教鞭をとってきた知的エリートであるだけに、幼い時から読書家だったに違いないと予想していたが、違った。

「商いをしていた生家には、本が一冊もなかったんです。だから、中学校に入るまでにまともに本を読んだことはありませんでした。最初に読んだのは中学1年生の時。学校の課題で読まされた『次郎物語』です。その時は、長い文章を読むことに慣れていなかったので苦行でしたが、同世代の主人公に感情移入できました。へー! こういう世界があるんだ、と驚いた気持ちは今でも鮮明に覚えています。次に自分で夏目漱石の『坊っちゃん』を買って読んだら、おもしろくて止まらなくなりました」

■「漫画だって、ゲームの攻略本だって立派な読書です」

柳沢校長がハマったきっかけは文学作品だったが、本のジャンルはなんでもいいという。

「親が『読書してほしい』と言った時に、イメージしているのは活字が並んだ文庫本のようなものかもしれません。でも、それは間違い。読書とは、字を読むこと。大切なのは、何を読んでいるかではなく、楽しんで読んでいるのかということ。本人が楽しんで読んでいるなら、漫画だって、ゲームの攻略本だって立派な読書です。それを無理に活字ばかりの本に誘導しようとすると、立派な本ギライが育ちます。人間は楽しいことしかやらないから、無理強いをしたら、絶対にダメです」

本好きにする極意は、釣りの「まき餌」

そこで、親にしてほしいのは「まき餌」だという。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/smiltena)

「何に興味を持って文字を読みだすかは人によって異なります。それは親でもわかりません。だから、子供が好きそうなジャンルの本をいろいろ買って撒いておきましょう。おびき寄せて、食いついたら、しめたもの。一気に釣りあげればいい。すかさず本屋や図書館に連れていって、おもしろい本がほかにもたくさんあることを教えてあげるのです。子どもを本の虫にするためには釣りの極意を拝借するのです」

読ませるのは漫画でもいいとなれば、読書好きにさせるのは難しくなさそうだ。しかし、そのまま放っておくと漫画しか読まない子になってしまうのではないだろうか。

柳沢校長はこの点も心配もないと断言する。

マンガばかりの子も活字の本を読むようになる理由

「文字を読むこと自体に慣れていない時は、漫画や絵本などに描かれた絵に理解が助けられます。しかし、数をこなして文字を読むことに慣れてくると、今度は絵が必要なくなってくる。場合によっては邪魔になってきます。なぜなら、絵があることで、言葉が伝えてくる情景が限定されてしまうからです」

たとえば、伊藤左千夫の『野菊の墓』を読んだ時。

そこに出てくるお墓は、いったいどんななのだろうか。周りには、どんな野草が生えているのか。そこで祈っている時の気持ちは、どんななのだろうか――。

読書好きの人には、活字だけでも自然と情景が浮かんでくるだろう。その時にイメージと違う絵があると、なんとなく心地が悪いものだ。原作が好きだった小説がドラマ化された時、演じる俳優が自分のイメージと合っていないと違和感を抱くことがある。文字に親しんでいくと、やがてこの領域にたどりつくというわけだ。

「活字だけの本を読めるようになったら、紙芝居をつくらせてみるといいです。どんなイメージが思い浮かんだのか、情景を描かせる。あるいは、感想文に絵をつけさせる。こうしたことをすると、イマジネーションすることをより楽しめるようになっていきます」

■ゲーム攻略本好きな子に辞書の使い方を教えよう

もう一つ、文字を読むようになった子供に親がしてほしいのは、辞書の使い方を教えることだという。

「ゲームの攻略本などには、けっこう難しい漢字が使われています。読めない字があったら、子供はどうしても意味を知りたいでしょう。だって、ゲームを攻略するための価値ある情報がそこに書かれているのですから。ここで辞書の引き方を教えてやれば、あとは放っておいても自分で調べるようになります。紙の辞書を面倒くさがるようだったら、電子辞書だって、ネット検索だっていい。わからない時に、調べて理解するという行動を習慣づけることが大事です」

興味があることを調べるという行為は、そのまま読書につながっていく。気になるテーマが書かれた本を書店や図書館で探して、読むことと、やっていることは同じだからだ。「知りたい」「おもしろそう」という好奇心や興味を親が上手に育てれば、子どもは勝手に、読書好き・本の虫になるのである。

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※どんな本を撒くかには、親の選書力が求められます。いま、発売中の『プレジデントFamily2018秋号』の特集「東大生192人 頭のいい子の本棚」では、開成中学・高校の柳沢幸雄校長のインタビューのほか、「現役東大生自身の小学生時代の読書習慣と小学生に薦める本」「国語・算数・理科・社会・英語 5教科が大得意になる本」「筑附小、慶應横浜初等部、桜蔭中・高、筑駒中・高など名門校の図書館で読まれている本リスト」などを紹介しています。本選びの参考に、ぜひ手に取ってご覧ください。

 

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柳沢幸雄(やなぎさわ・ゆきお)
開成中学校・高等学校校長
1947年生まれ。71年東京大学工学部卒業後、システムエンジニアとして日本ユニバック(現・日本ユニシス)に入社。74年に退社後、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。ハーバード大学大学院准教授、同併任教授、東京大学大学院教授を経て、2011年より母校である開成中学校・高等学校の校長を務める。

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(プレジデントFamily編集部 森下 和海 写真=iStock.com)

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