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乙姫が浦島太郎に「毒ガス」を渡した心理

プレジデントオンライン / 2018年10月8日 11時15分

はらだ有彩氏

■「昔の女性は今よりもっと生きづらかったのでは」

「実家は1856年創業のせんべい屋で、母は性暴力救援の活動もしているフェミニスト。『洗剤のCMにエプロン姿の女性ばかり登場するのはおかしい』。幼いころからそんな議論を家でしていました」

そんな、はらだ有彩さんが社会の“異常”を感じたのは新卒入社した広告会社で働き始めてから。出張先のホテルで取引先の男性に突然部屋に行っていいかと迫られた。

「仕事で信頼関係を築けていたと思っていたのに、びっくりしました。ほかにも、上司に『早く帰って彼氏にご飯作らなくていいの』とか言われて。嫌だなって思う発言をする人は普段はいい人だから、なんでこんなこと言うのかな、と落ち込んでいました」

ふと「昔の女性は今よりもっと生きづらかったのでは」と疑問を抱いた。歴史あるせんべい屋の実家には古いものが多く、おのずと古(いにしえ)の物語に答えを求めた。

「社会には、積み重ねられて地層みたいになっている時代時代の空気感があると思って、昔話を読み漁りました」

慣れ親しんだ昔話の女性たちは、予想以上に社会的な抑圧に苦しんでいた。だが、彼女たちの心情や境遇を想像すると、時空を超えて互いに労わり合っている気分になった。深夜の女子会のように。

■「昔も今も女性ってこんな気持ちなんですよと知ってほしい」

「空気って変わっていくんだなと思いました。『おかめ伝説』のおかめは自分が夫の仕事を手伝ったことを理由に自害しました。それが恥という空気があったから。今はそんなふうには考えないで済んでいます。未来の人たちが、今私たちが苦しんでいるつらさを感じなくて済むように、少しずつ解決していけたら」

本書では、面白おかしく、軽快に、昔話の女性たちの気持ちをはらださんが代弁する。『堤中納言物語』の「虫愛づる姫君」に登場する右馬佐(うまのすけ)には「『化粧したら綺麗』は褒め言葉ではない」とグサリ。“毒ガス”入りの箱を渡した『浦島太郎』の乙姫の心理に迫るパートには、ほとんどの男性が頭を垂れるはず。何気なく読んできた昔話の中でも、男性的価値観に女性が抑圧されていたことに気づかされる。とはいえ、世の男性を責め立てるつもりはない。「昔も今も女性ってこんな気持ちなんですよと知ってほしいだけ」と話す。

より女性の活躍が求められる、これからの会社や組織運営においても参考になるはずだ。故きを温ね新しきを知るではないが「女性活躍社会」に読んでおきたい一冊だ。

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はらだ有彩
1985年生まれ、関西出身。テキスト、テキスタイル、イラストレーションを作るテキストレーター。「アパートメント」「リノスタ」「wezzy」等で連載。

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(太田 穣 撮影=横溝浩孝)

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