1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

ついに"死に体"と変わった安倍政権の憂鬱

プレジデントオンライン / 2018年10月1日 18時15分

2018年9月30日、公明党全国大会で手を取り合う安倍晋三首相(右)と山口那津男代表。(写真=時事通信フォト)

安倍晋三首相の運気が、下降線を描いている。9月20日の党総裁選では3選を果たしたが、敗れた石破茂元幹事長の善戦ばかりに注目が集まった。26日の日米首脳会談では、貿易問題で大幅な譲歩を迫られた。そして「総裁選より重要」と言われた30日の沖縄県知事選では、自民、公明両党が全力を挙げて支援した候補が惨敗。一連の「不都合の連鎖」は、与党連携にも影を落としつつある――。

■自民・公明は沖縄県知事選で屈辱的な惨敗

9月30日午後、東京都内で開かれた公明党大会。来賓として出席した安倍氏はあいさつで「私たちは5回連続、国政選挙で勝利することができました。その意味において、山口那津男代表は私にとって必勝のパートナーです。この勢いをかって来年の統一地方選挙、参院選挙も力を合わせていきたい」と力説すると、会場からは拍手が起こった。

だが、ちょうどそのころ、自民党幹部や首相周辺のもとには、投票が進む沖縄県知事選の出口調査結果が伝わっていた。出口調査とは、投票所の出口に報道機関の関係者が陣取り、投票を終えた有権者に「どちらに投票されましたか」と聞く調査。質問を受けた経験のある人も少なくないだろう。

報道各社の調査は、多少の誤差はあったが、いずれも20ポイントほどの差で、国政野党を中心にした「オール沖縄」が推す玉城デニー氏がリード。自民・公明両党らが支援する佐喜真淳候補の苦戦が伝えられていた。

投票の結果は玉城氏が39万6632票、佐喜真氏は31万6458票。出口調査の傾向とほぼ同じだった。玉城氏の得票は、沖縄県知事選では過去最多。メディアによっては投票が締め切られた午後8時に玉城氏の当確を打つところもあった。自公にとっては屈辱的な惨敗。

皮肉にも昼に「必勝のパートナー」を確認しあった日の夜、「必勝」シナリオが崩壊してしまったことになる。安倍氏は結果が判明した後、自民党幹部と電話で話し「残念だが仕方ない」とつぶやいた。

■自公支持層の2割から3割程度が玉城氏に投票

各社の出口調査を分析すると興味深い傾向が見えてくる。自公支持層の2割から3割程度、玉城氏に投票しているのだ。徹底した組織選挙を行った両党としては容認し難いデータだ。

知事選では、大量の自民党幹部や秘書軍団を連日投入する物量作戦で組織固めの選挙戦に徹した。その過程で、佐喜真氏を推す勢力が、事実ではない玉城氏のスキャンダルを流したとも報じられた。そういった、なりふり構わぬ姿勢に、本来であれば自公側を支持する県民も違和感を持ったのではないか。

知事選の結果は、党総裁選の地方票の出方と通じるところがある。安倍氏は徹底的な引き締め選挙を行い、圧勝を目指した。その結果、国会議員票は8割を超える票を得たが、地方票は55%にとどまり石破氏に迫られた。総裁選の結果、「自民党は(安倍支持)1色ではない」(石破氏)ことが証明された。

総裁選で石破氏に迫られたことと、沖縄県知事選での敗北は、「安倍1強への違和感」という共通項でつながる。

■崩れ始めた安倍政権の金看板

3選後の安倍氏は、あまりいいことがない。9月26日、ニューヨークで行われたトランプ大統領との首脳会談では、2国間で「日米物品貿易協定(TAG)」の通商交渉を始めることで合意。2国間交渉を回避することを最重視していた日本政府としては、米国に押し込まれた印象は否めない。

10月1日、日銀が発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)では、景況感は、3期連続して悪化した。

トランプ大統領との蜜月関係を謳歌し、アベノミクスの推進による順調な経済に支えられていた安倍政権の金看板が期せずして同時に崩れ始めている。

そしてもう1つ安倍政権にとって不安材料がある。公明党の動向だ。

安倍氏は残る任期3年の間に、悲願である憲法改正を実現させたい。そのために今月召集の臨時国会で、自民党の案を提出し、併せて公明党との与党協議を始めたいと考えている。ところが、この方針に山口氏が難色を示している。

■改憲論議で公明党は「下駄の雪」返上か

山口氏は党大会の席上、地方組織代表の質問に答える形で「憲法改正に前向きな政党ではなくて、幅広い政党、あるいは政治家の合意を作り出す努力がまず必要だ」と語った。普通の法案なら、政府の方針を支えるために与党で合意形成するのは当然だが、憲法改正の場合、国会で発議した後に国民投票にかけられる。だから、与党だけで事前に議論するべきではないという理屈。要は、改憲問題では自公2党だけで議論するのは勘弁願いたい、という宣言なのだ。

「平和の党」を標榜する公明党は、安倍政権下では、特定秘密保護法、安保法制など、なかなか賛成しづらい政策課題についても自民党との協議に応じ、最終的には法成立に協力してきた。どれだけ踏み付けられても自民党にくっついていくという意味で「下駄の雪」とやゆされることもある。しかし、憲法改正論議だけは「下駄の雪にはならない」ということなのだ。与党協議に入れず、改憲論議の入り口でつまずくことになれば、安倍氏にとっては大きな痛手となる。

■疑心暗鬼が生まれるきっかけになりかねない

公明党大会では山口氏は代表続投となり、幹事長は井上義久氏から斉藤鉄夫氏に交代することになった。安倍氏と山口氏は、ケミストリーが合わない。これまで両党首の隙間を埋めて連絡調整役を担っていた老練な井上氏が幹事長から退くことも、与党関係を不透明にしている。

沖縄県知事選の敗北も両党関係に微妙な影響を与える。直ちに関係が大きく揺らぐことはないだろうが、来年の統一地方選、参院選に向け、中長期的には疑心暗鬼が生まれるきっかけになりかねない。

安倍1強の限界が見え、与党の一枚岩にもひびが見える。後に検証するとき「2018年秋」は、安倍政権がレイムダック(死に体)し始めた時という評価が下されるのかもしれない。

(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください