録音した自分の声の「嫌な感じ」の直し方
プレジデントオンライン / 2018年10月10日 15時15分
■自分の話を録音して無意識の“ノイズ”を発見
知らず知らずのうちに使っている口癖。あなたはありませんか? 口癖には2種類あります。「え~」「あ~」といった余計な“ノイズ”の口癖と、“キャッチコピー”となるせりふの口癖です。
ノイズはビジネスシーンでも耳障りなものです。意識して消す努力をしましょう。口癖を自覚してやめることが理想ですが、なかなか自分では気づかないものです。そこで、会議や打ち合わせなど、その場の思いつきでしゃべっている自分の話を録音して聞いてみてください。何かしらのノイズを発見できるはずです。
ノイズはたいてい、文頭にきます。次に何を言おうか考えながら話していると「え~」「あ~」と発することが多くなります。
■「文頭ノイズ」を消すための2つの方法
文頭のノイズを消すための方法が2つあります。ひとつは「しゃべることを決めてから口を開く」ことです。そのためには、しゃべり終わったら一回一回、口を閉じましょう。
通常、ヒトの口は薄く開いています。その状態で、何を言おうかな、どんな返事をしようかなと考えながら話すから、「あ~」と口から息がもれてしまうのです。1つの文が終わったらしっかりと口を閉じることで、文頭の「あ~」「え~」が消えます。
もうひとつの方法は実況中継をすることです。話をどうまとめてよいかわからなくなると「あ~、つまり~」とやってしまいがちですよね。そうではなく、なぜ自分が今ポンと次のせりふが出ないか、理由をすべて言ってしまうのです。
たとえば「今、どんな実例を言えばわかりやすいかな、と考えているんですが」など、自分の頭や心の中の焦りをすべて口に出せば「あ~、つまり~」と言わずにすみます。ノイズの口癖を発して頼りない人に見える危険性を避けることができ、自分を客観視できる冷静な人に見えます。
■せりふとしての口癖は、意識して際立たせる
ノイズはこのような方法で消しますが、せりふとしての口癖は消さず、反対に際立たせましょう。このタイプの口癖は、その人の価値観や考え方を表す大事な言葉であることが多いので、キャッチコピーのような役割を果たします。素晴らしいビジネスアピールになるのです。
たとえば「頑張ります」と、いつも言っている人には、向上心の高さを感じます。「挑戦します」ならチャレンジ精神が旺盛な人、「確認します」なら慎重な人となるでしょう。
ですから、自分が他者に与えたい印象のせりふをあえて口癖にしてしまうのです。緻密な強みをアピールしたいなら、「調べます」「確認します」といったせりふを口癖にして、わざと何度も使いましょう。周りにあの人はあんな口癖があるよな、と思わせたら成功です。
■今の自分の「口癖」を調べるカンタンな方法
こうしたビジネスアピールとしての口癖をつくる前にまずは、今の自分の口癖を調べましょう。そこに「こういう印象をもたれたい」という自分の潜在的な欲求があるかもしれません。調べる方法は2つ。ひとつは、会議や打ち合わせなどで自分の話を録音すること。もうひとつは、会社の人や家族など身近な人に聞くことです。特に部下や後輩などに聞くとよいでしょう。
実は私も以前、このビジネスアピールとしての口癖を使ったことがあります。
私が初めて本を出版したときのことです。『その話し方では軽すぎます!』というタイトルでした。これは、担当編集者が打ち合わせのときに「矢野さんは、すぐに『その話し方じゃ軽すぎる』って言いますよね」とおっしゃったことから生まれたもの。私はそれまで話し方のスキルをクライアントにお伝えするときに「軽すぎる」という言葉を使っている自覚が全くありませんでした。この本をつくるに当たって、自分の理論を説明するときに「軽すぎる」という言葉を連呼していたのです。
つまり、自分の価値観を伝えようと何度も同じ言葉を発していたことに、編集者が気づいてくださったのです。部下や後輩など教える相手に聞いたほうがよいのは、自分のスキルを伝えようと、自分の口癖を無自覚に繰り返している可能性があるからです。
■憧れのあの人の言葉を、ヒントにしよう
口癖のイメージがつかめなければ、会社のクレド(信条)やキャッチコピーを見ると、よい言葉が見つかります。雑誌などのメディアにはいろいろな人のインタビューが載っていますから、そこから憧れの人を見つけて、見出しをチェックするのも手です。そこには必ず、その人の価値観が表れています。それをそのまままねてもよいのですよ。
自分の口癖に気づいたり、あるいは口癖をつくったりしたら、意識的に口にする回数を増やします。経営者へのコンサルティングでは、2つの目標を立てていただくようにしています。
1つ目は口癖から名付けた「あだなで周りに呼ばれるようになってください」ということ。あるサービス業の女性経営者の話です。その社長はふだんから「お客さまに私たちの真心をわかってもらおう」と、おっしゃっていたので“真心”という言葉を口癖にしていただきました。
そして「『真心社長』とあだなで呼ばれるようになってください」とお伝えしたら1年後、見事に経営者仲間に「真心社長」と呼ばれるようになっていました。さらに、新しくつくった名刺にも「真心社長」と刻まれていました。
2つ目の目標は、忘年会などの宴席で社員に社長の物まねをされることです。「真心社長」の場合、「お客さまに真心を~」と言っている社長の物まねをされるようにするのです。あだなで呼ばれ、物まねをされて、口癖で自分を覚えてもらえば、何かのときにすぐに思い出してもらえます。これこそ「私プレゼン」です。
ぜひ、なりたい自分にふさわしい口癖をつくってみてください。
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スピーチコンサルタント
長崎大学准教授。NHKキャスター歴17年。心理学の見地から「他者からの評価を高めるスピーチ」を研究し博士号取得。政治家、経営者やビジネスパーソンに信頼を勝ち取るスピーチやコミュニケーション法を伝授。著書に『最高の話し方』(KADOKAWA)など。
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(スピーチコンサルタント/長崎大学准教授 矢野 香 構成=池田純子 イラスト=アヤコオチ 写真=iStock.com)
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