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日本人女性殺到 欧州プチ留学の「穴場」

プレジデントオンライン / 2018年11月3日 11時15分

毎日多忙なビジネスパーソンにとって英語習得のための留学は夢のまた夢──。そう思っている人がきっと多いはず。しかし、2週間の「プチ留学」でも確実に英語力はアップするのだ。

■学生ビザ不要で、トロントが人気

ビジネスパーソンの語学熱が高まる中、生きた英語を身につけようと、海外に短期留学する人が急増している。そうした留学先として、根強い人気を誇るのが、米国や英国といった欧米の英語圏だ。本場で英語力を磨けるうえ、治安も比較的よい。とりわけ、「観光や異文化体験もしたい」という女性からの支持が高いようだ。

1971年創業の留学支援会社の老舗で、2003年にイーオングループとなった留学ジャーナルは、延べ20万人の留学をサポートしてきたが、近年ではビジネスパーソンの顧客も徐々に増えている。「職場で英語を使う機会が増えたからと、個人で短期留学を申し込む方も多いですね。女性の場合、転職を機に留学するケースが目立ちますが、在職中の方の短期留学も増えています」と、同社カウンセラーの祭主絢子さんは話す。

留学期間は1週間というケースが最も多く、30代の40%、40代の54%を占める。また、留学するタイミングも、長めの休みが取りやすいゴールデンウイークやお盆の時季に集中する。

欧米の留学先として一番人気なのは、トロントをはじめとするカナダ。「米国は留学のハードルが高く、同じ北米圏のカナダに人気が移っています」(祭主さん)。米国留学で週18時間以上勉強する場合、学生(F1)ビザの取得が必要だ。英文の大学の成績証明書、銀行の残高証明書を用意して、米国大使館・領事館で面接も受けなければならない。手続きに2カ月半はかかり、多忙なビジネスパーソンにとって負担は大きい。

カナダ留学では、そのような面倒な手続きは不要で、留学費用も米国より割安。同社が提携している世界的な語学学校のECでは、1週間・30レッスンの料金がニューヨーク校は25万6000円なのに対して、トロント校は17万4000円と割安なのも魅力だ。

留学費用がリーズナブルという点では、オーストラリアも人気。日本との時差もあまりない。「日本が夏のとき、オーストラリアは冬なのですが、北部のケアンズなら年中暖かく、夏休みを利用した留学も可能です」(祭主さん)。

欧州の留学先としてブレークしているのがマルタだ。イタリア半島の南部、地中海の小さな島国で、元英国領という英語圏。ECの発祥の地で、語学学校も多い。首都が世界遺産で、日本人が少ない穴場というのも魅力だ。

エイチ・アイ・エス関東法人団体専門店事業部教育旅行セクション所長の室井哲さんは、「当社の語学研修事業では、マルタへの留学が約18%を占めます。利用者は女性が圧倒的多数です」と話す。また、「現地で日本人女性がモテる」といった冗談半分のような話も、人気の秘密の1つとなっているようである。

■成長都市マニラで、ビジネス英語学ぶ

一方、ビジネスパーソンの短期留学先として、フィリピンの人気が急上昇している。そのきっかけとなったのが「オンライン英会話学校」だ。

12年に設立されたビズメイツは、ビジネスパーソンに狙いを定めたのが特徴。レッスンでは、約500種類のメーンプログラムが用意され、すべてビジネスシーンを想定した、実践的な内容となっている。同社社長の鈴木伸明さんは、「英文法の正しさよりも、ビジネスで役立つ表現を重視しています」と力説。三菱UFJ信託銀行をはじめ、大企業の法人利用も拡大している。

そのフィリピンでは、留学費用が格安なことも追い風になり、日本人向けのリアル英会話学校も急増している。そうした中で、ビジネスパーソンに対象を絞ったのが、12年にCOCO塾を運営するニチイ学館のグループ会社となったSELCである。

15年3月に、マンツーマン指導に特化したマニラ校を開校。日本人向け英会話学校はセブに集中しているが、「マニラのほうが優秀な人材を集めやすいからです」と、同校の貝瀬梢さんは明かす。

ピーク時には60人ほどいる同校の講師は全員が大卒で、英語でビジネス経験がある人材や、英語指導の経験がある人材が活躍している。法人向けでは、自社製品を英語でプレゼンするオリジナルレッスンもある。法人の語学研修がメーンだが、9~1月期の法人需要のピーク以外は、個人留学も受け入れやすい。

校舎はマニラのビジネス街のオルティガスセンターにあり、高い経済成長を続ける新興国の活気を肌で感じられる。マニラというと治安が心配だが、「アジア開発銀行も近く、セキュリティーが保たれたエリアです」(貝瀬さん)。

宿泊先は徒歩13分のビジネスホテル。1人部屋が基本で、朝食付き。法人研修の平日は8コマ(1コマは50分)、土曜日は3コマで、週43コマ受けられる。個人の場合は週40コマで、レッスン内容も法人向けとは異なる。

■超スパルタのSMEAG

また、リゾート地として知られるフィリピンのセブは、今や300校もの語学学校がひしめく「アジアの英語研修の聖地」となりつつある。前出の室井さんは、「費用対効果、時間対効果を考えると、セブでの英語研修がベスト。1週間の研修費用なら、飛行機代も含めて20万円を切る。欧米で同じカリキュラムをこなすと、3倍くらいのコストがかかるでしょう」と、人気の理由を説明する。

(上)EC・トロント校のグループレッスン。(中)街全体が世界遺産のマルタ。(下)ビジネス経験のある講師が多いSELC。

数ある語学学校の中でも、10年前に設立された草分けがSMEAGだ。もともと韓国資本のSMEだったが、4年前に日本のアチーブゴール(AG)との合弁となり、改名した。今は日本人の英語研修に力を入れている。

そもそもセブ進出で先行したのは韓国勢。97年の通貨危機をきっかけとして、韓国政府の後押しで、英語圏であるフィリピンに、韓国系語学学校の設立が相次いだ。05年頃から留学費用の安さに目をつけた旅行代理店が、日本人を送るようになる。「でも、食事やアメニティの面で、日本人のニーズに合いませんでした。そこで、日系語学学校もセブに進出し、サービスを日本人向けにアレンジするようになったのです」(室井さん)。

SMEAGの特徴の1つがスパルタ教育。TOEICコースは、朝6時40分から夜8時35分まで、みっちりレッスンがある。しかも、約500名の講師を揃えており、マンツーマンのレッスンが主体。それが月曜日から土曜日まで続く。

また、施設内に寮があって、勉強に専念できる環境が整っている。「まるで合宿所で缶詰めになっているような状態で、英語に集中するしかなくなるわけです」(室井さん)。

エイチ・アイ・エスの語学研修事業では、「利用者の約17%をセブの研修が占めています」(室井さん)。法人の利用がメーンだが、個人も利用しているという。ある私立大学では、職員約300名をSMEAGに2週間派遣した結果、TOEICスコアが平均108点もアップ。そうした実績も人気の背景のようだ。

■1日コースもあるQQイングリッシュ

セブで現在、最大規模を誇る語学学校が日系の「QQイングリッシュ」だ。オンラインレッスンを含めた講師の数は約900名。教室はオンライン用が600ブース、留学用が200ブース、グループレッスン用が20ブースある。17年は約5000名の留学生を受け入れる見込みだ。

創設者はバイク便の「キュウ急便」の創業者でもある藤岡頼光さんで、05年にセブへの短期留学の経験がある。

「知り合ったイタリアのバイクメーカーのオーナーと、直接話がしたくて、英会話の勉強を始めました。留学先は韓国系の学校で食事などが馴染めませんでした。しかし、コストパフォーマンスは抜群によく、日本人のライフスタイルに合う語学学校をセブにつくろうと考えたのです」

QQイングリッシュの特徴は、オンラインとオフラインのレッスンを併用する“オムニチャネル式”のメソッドだ。

「短期留学すると、英語力は上がります。しかし、日本に帰って英語を使わないと、すぐに英語力がダウンする。オンラインのレッスンで英会話に慣れ、留学で実力に磨きをかける。それが、英語を上達させるベストプラクティスなのです」(藤岡さん)

スタンダードプランの1日のカリキュラムは、マンツーマンのレッスンが6コマ(1コマは50分)と、サービス分を含めたグループレッスンが合計4コマ。講師は全員が正社員で、外国人向けの英語教師の資格「TESOL」も取得している。語学学校の中では給与水準も最高ランクだが、「授業料は最安値でしょう」と、藤岡さんは胸を張る。オンラインとオフラインの両方を受け持つことで、講師の稼働率が高められるからだ。

(上)厳しい授業の間の束の間の安息。(中)200もある留学用のレッスンブース。(下)1コマ当たり50分のマンツーマンのレッスン。

2つある校舎の1つは、経済特区のITパークに立地。4つある出入り口に警備員が常駐し、セキュリティーも万全。徒歩7分のところに専用のシェアハウスがある。1人部屋、2人部屋、4人部屋の3タイプがあり、1人部屋なら1週間の留学費用(授業料+宿泊費)は8万5000円。校舎には直営の日本食レストランも併設されている。

週末だけ留学する超短期集中プランも人気で、1日からでも留学可能なのが同校の特徴だ。「プライベートジェットで来て、週末の2日間だけ留学する企業経営者の方もいます」と藤岡さんはいう。

■追い込み型で鍛えるECC

わが国最大の英会話スクールであるECCも、ついにフィリピンに上陸した。16年12月にセブ校がオープン。同社は、すでに14年にオンライン事業の会社をフィリピンで立ち上げていた。新商品開発プロジェクト・ゼネラルマネージャーの岡村憲明さんは、「なぜフィリピンにオフラインのECCがないのかと、考えたのです」と振り返る。現在、毎週10名ほどが在籍。留学期間は1週間が大半で、6割が女性だという。

岡村さんは、「フィリピン人は、明るくフレンドリーな性格で、教師に向いています」という。オンライン事業もあるため、大学教育学部卒業生など若い講師を約130名確保。校舎はセブ市中心部に近いガグファタワーの中にある。個人レッスン用のブースが36あり、最大72名まで収容できる。レッスンは1日8コマ(1コマは50分)が基本で、マンツーマンが4コマ、グループが4コマだ。

朝食と昼食は1階の日本食レストランが利用可能。徒歩10分のところに1棟を借り上げた専用コンドミニアムがあり、個室が3タイプある。

強化しているのが「クリフエッジプログラム」。1週間のレッスンの最終日に成果をスピーチ発表する、受講者を文字通り「崖っぷち」に追い込む内容だが、「人前で話すので、勉強に力が入るし、英語を臆せずに話せるようになります」(岡村さん)という。

ゴールデンウイークや夏休みを利用して、短期留学にチャレンジしてみてはどうだろう。

(ジャーナリスト 野澤 正毅 撮影=宇佐美雅浩)

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