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"右寄りのお友達"で固めた安倍内閣の真意

プレジデントオンライン / 2018年10月4日 9時15分

初閣議を終え、記念撮影に臨む第4次安倍改造内閣の閣僚ら(写真=時事通信フォト)

■これは「挙党態勢」ではなく「カツカレー政権」だ

非常に分かりやすい顔触れとなった。安倍晋三首相が2日に行った自民党役員人事と内閣改造によって決まった布陣のことである。内閣と党の枢要なポストは「お友達」で固め、その他の閣僚ポストは、9月20日の党総裁選で自分を応援してくれた議員の中から待望組を並べた。

総裁選で石破茂元幹事長を推したグループからは1人を入閣させたので形のうえでは挙党態勢にみえるが、実際は今までより「お友達」濃度が濃くなった。総裁選前にカツカレーを食べて安倍支持を誓い合ったメンバーによる「カツカレー政権」の様相だ。

麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、河野太郎外相、世耕弘成経済産業相、茂木敏充経済再生担当相……。主要閣僚は大半が留任した。安倍氏の盟友、お友達、側近、懐刀という形容詞がつく顔触れが並ぶ。外交、経済など重要政策は今まで通り気心知れた仲間で安全運転しようという意図が分かる。

党役員は、党規約を変えて総裁3選を可能にする道筋をつけた二階俊博幹事長、総裁選の出馬を見送った岸田文雄政調会長は論功行賞で留任。石破氏の支持に回った竹下亘総務会長は退き、安倍氏側近として頭角を現している加藤勝信氏が厚労相から横滑りした。憲法改正推進本部長には下村博文氏。選対委員長には甘利明氏が就任した。

■改憲の要所に「偉大なるイエスマン」を起用

お友達を並べたところは主要閣僚と同じだ。ただ、党役員の顔触れは、安倍氏の野心が感じ取れる。安倍氏は残る3年の任期で憲法改正の実現に執念を燃やす。そのためには党内の改憲論議を完全にグリップするため、党内の憲法論議の司令塔である憲法改正推進本部と、党議決定する総務会のトップに下村、加藤の両氏を起用した。下村氏は特に憲法に精通しているというわけではないが、安倍氏の「偉大なるイエスマン」として改憲に向けて進んでいくだろう。

改憲を実現するためには来年の参院選で勝ち、衆参両院で3分の2を改憲勢力で維持し続けなければならない。そのために、党内ににらみがきき、調整能力もある甘利氏を選挙対策のトップに充てた。

つまり、同じ「お友達」でも主要閣僚の方は「安全運転で」という守りの姿勢、党役員の方は「何としてでも改憲を」という攻めの姿勢が感じられる。

■政治記者も知らない初入閣12人「その他の大臣」

注目すべきは主要閣僚、党役員以外の「その他の大臣」たちの顔触れだ。初入閣の12人が「その他の大臣」と呼んでいいだろう。

石田真敏総務相、吉川貴盛農水相、宮腰光寛沖縄・北方担当相……と聞いて顔が思い浮かぶ人はあまりいないのではないか。実際、政治部の記者たちでさえ、官邸に続々呼び込まれる閣僚候補たちをみて「今のは誰だっけ」とささやき合っていたという。

この12人の人選について安倍氏は、特にこだわりを見せた形跡はない。各派閥の推薦名簿をみながら機械的に割り振った印象だ。その結果、極めて地味な顔触れとなった。

野党や辛口のコメンテーターからは「在庫一掃内閣」「閉店セール内閣」果ては「冥土の土産内閣」といった酷評が聞こえる。

■「right(右寄り)」で「light(軽い)」な顔触れ

安倍氏もその批判は意識しているのだろう。2日夕の記者会見では新閣僚の顔触れについて「地味な世界で経験を積み」「高い調整能力を兼ね備え」「いぶし銀の人材」などと、やや苦しい説明に終始した。

「その他の大臣」たちは、過去に問題発言などで批判を受けた議員が少なくない。貧困女子学生を批判するなどして批判を受けた片山さつき地方創生担当相。南京大虐殺はなかったという立場で言動を重ねてきた原田義昭環境相。旧日本軍の従軍慰安婦を「職業としての売春婦だった」と発言したことがある桜田義孝・五輪担当相……。数え上げればきりがない。しかも、多くは、自民党内にあっても「右寄り」の考えを持っている。

安倍氏は今回の内閣を「全員野球内閣だ」と胸をはるが、野党からは「全員野球といいながらライト(右翼手)ばかり」という皮肉も聞こえる。「ライト」とは「right(右)」という意味だけでなく「light(軽い)」という意味も含まれているように思う。

「ライト」な閣僚たちは今後、連日のようにマスコミや野党の追及を受け続ける。うまく立ち回れるかどうか。はなはだ心細い。

■石破派の山下貴司氏を法相に抜擢した狙い

当選3回で石破派の山下貴司氏を法相に抜擢した件についても触れておきたい。安倍氏は石破氏を処遇しない判断は揺るがなかったが、石破氏を支援した議員を1人も処遇しないと、さすがに党を分断することになりかねないと判断。最終的に1人入閣させることにしたようだ。

山下氏は、菅氏とも近く、石破派にあっては安倍氏の覚えもめでたい人物だ。石破派には山下氏より当選回数が上の「適齢期」議員も複数いるが、あえて若手を一本釣りすることで、石破支持勢力の中で足並みの乱れを誘おうという狙いもあるのだろう。

石破派から閣僚に起用したことで「党内融和に腐心した」という評価するマスコミもある。しかし、それは好意的に過ぎる。9月20日の総裁選で石破氏に投票したのは73人。全体の2割弱にあたる。この中で起用されたのは19人の閣僚では山下氏だけ。党役員の中枢部をみても石破氏に投票したとみられる議員は見当たらない。

■「全員野球」とは程遠いことは、火を見るより明らか

総裁選が行われる直前の9月20日昼、安倍氏を支援する議員たちは都内のホテルに集まり結団式を行った。そこに集まって必勝祈願のカツカレーを食べたのは330人超。ところが、安倍氏の得票は329票で「誰が食い逃げをしたのか」と犯人捜しが行われたのは記憶に新しい。

今回の人事をみると、山下氏と公明党の石井啓一国土交通相を除けば、全員が「カツカレーを食べた」人たちだ。そんな「カツカレー組」による政権運営が「全員野球」とは程遠いことは、火を見るより明らかだ。

(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

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