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人脈をつくるなら飲み会よりランチがいい

プレジデントオンライン / 2018年10月9日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/PeopleImages)

役に立つ人脈をつくるにはどうすればいいのか。異業種交流会に通い、多くの人と名刺を交換し、SNSの友達の数を増やす……。こんなイメージを持っている人は要注意だ。経営コンサルタントで「人脈の達人」と呼ばれる平野敦士カール氏は、「異業種交流会で知り合った人は『人脈』とは呼ばない。資産となる人脈をつくるなら、他社の人をランチに誘うべきだ」という。なぜなのか――。

※本稿は、平野敦士カール『世界のトップスクールだけで教えられている 最強の人脈術』(KADOKAWA)を再構成したものです。

■人生100年時代の資産は「人脈」

いまや「人生100年時代」という言葉は、人生戦略を考えるうえでのキーワードとなりました。そこで最も頼りにすべき「資産」とは何でしょうか? お金でしょうか? それともいま流行りのビットコインをはじめとする仮想通貨でしょうか?

そうした質問を受けたとき、間髪を入れずに私はこう答えます。

「人脈ネットワークこそ、最強の『資産』である」

人脈? 唐突にいわれても……と感じるかもしれません。日本で「人脈」という言葉が使われるとき、ともすればネガティブなイメージが伴うからです。

「人脈をつくるためには、頑張って異業種交流会に出なければならない」「自分の名刺をいろいろな人と交換しなければならない」「SNSの友だちの数を増やさなければならない」……。そうした行動には「根性」という言葉が似合いますし、著名人と写真を一緒に撮ってSNSにアップすることで自分の「人脈」をアピールする人たちを見て、何ともいえない気分になった方もいることでしょう。

■「人脈もどき」は資産ではない

そうしたものを私は「人脈」とは呼びません。そのような「人脈もどき」の多くは、「資産」ではないからです。私が資産という言葉を使うとき、それは「ビジネス上の価値を生み出すもの」という意味をもっています。

この資産としての「人脈」のすごいところは、税金がまったくかからないことです。「人脈ネットワーク」はモノではありませんから、目には見えません。目に見えないものは課税のしようがありませんね? 通常の資産は他の会社や人によって奪われることがありますが、この人脈ネットワークをあなたから奪うことは誰もできないのです。

そして、こうした「人脈」が最強の資産となることは、すでに世界のトップスクールの学者のネットワーク分析という科学的な理論によって証明されています。『世界のトップスクールで教えられている 最強の人脈術』(KADOKAWA)では、そうした世界最先端の理論を一挙に紹介しながら、それを個人はどうやって活用すればいいのか、という方法論を述べています。この理論から導かれる人脈術の最大の特徴は、その人がいま「人気者かどうか」「知り合いがたくさんいるかどうか」という個人の属性を問わないことです。本稿では具体的にネットワーク分析(理論)とはどのようなものか、ということについて、実例をあげながらその一端をお伝えしていきましょう。

■「弱いつながり」がいい理由

ネットワーク理論のなかでも最も有名なものが、1973年、アメリカの社会学者マーク・S・グラノヴェッターが提起した「弱い紐帯の強さ(“The strength of weak ties”)」という考え方です。「紐帯」とは簡単にいえば、「つながり」という意味です。

平野敦士カール『世界のトップスクールだけで教えられている 最強の人脈術』(KADOKAWA)

一般的には、より豊かな「人脈」を手にしている人は、いろいろな人との「強いつながり」をもっている、というイメージがあるのではないでしょうか。しかし、じつは科学的に見たとき、その考え方は正しくありません。むしろ強いつながりをもっている人よりも、弱いつながりを多くもっている人のほうが、自らの人脈を「資産」にできるのです。

この「弱い紐帯の強さ」は、企業(雇用者)と社員(被雇用者)のマッチングメカニズムを明らかにするために行われた実証研究から導かれた仮説です。わかりやすい事例でいえば、あなたが転職を考えているとき、どんな人に相談するでしょうか。おそらく身近な信頼できる友人や家族、仲のよい先輩などかもしれませんが、現実には、いつも身近にいて、つねに情報交換をしている自分と同じような環境にいる人からは、有用な情報を得にくいものです。

むしろ、「いつもはそれほど密接につながっていない知人」のほうが、はるかに転職に有用な情報を提供してくれる、ということが、簡単にいえば、グラノヴェッターの「弱い紐帯の強さ」の研究成果でした。

■人脈ネットワーク同士をつなげる「ブリッジ」

実際の調査は1970年、アメリカのボストン市郊外に住む282人のホワイトカラーの男性を対象にして行われました。その結果、56%の人が人脈ネットワークを用いて職を見つけることに成功しましたが、「弱い人脈ネットワーク」から得た情報で転職した人のほうが、「強い人脈ネットワーク」から情報を得て転職した人よりも、転職後の満足度が高いことがわかったのです。

この事実からグラノヴェッターは、「強い人脈ネットワーク内の情報は既知のものであることが多く、それに対して弱い人脈ネットワークから得られる情報は、未知でかつ、重要なものだからである」という仮説を構築しました。

さらにグラノヴェッターは、弱い紐帯は強い人脈ネットワーク同士をつなげる「橋(ブリッジ)」としても機能するため、情報が伝播するうえで重要な役割を果たす、としました。これも例で説明してみましょう。

あなたはA社に勤めています。A社はどうしても戦略上、B社につながりをもちたいと思っています。しかし残念ながら、A社の社員でB社の社員を知っている人が見当たりません。ところが偶然にも、B社の社員があなたの兄弟と同級生だったので面識がありました。そうなると、A社がB社とつながりをもつためには、あなただけがブリッジとして機能できることになります。B社の社員とあなたとの関係は兄弟の同級生という弱いものですが、それにもかかわらず、A社とB社はつながることができた。これがブリッジの力です。

■転職のきっかけは他社とのランチ

さらにグラノヴェッターは「弱い紐帯によって伝達される情報は価値が高い」とも述べました。考えてみれば当たり前で、弱い紐帯の関係性であるにもかかわらず、わざわざ連絡をとるわけですから、その情報は重要なものになるはずです。

先の例でいえば、兄弟の同級生という弱い紐帯の関係にある人に連絡をとるのは、A社がどうしてもB社とコンタクトしたいという背景があるからです。そこでA社からの情報は当然、価値の高いものになるでしょう。またB社からしても、その情報は自社内にはないものになるわけで、同じく価値の高いものになることが多いといえるのではないでしょうか。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz)

私自身の経験を振り返っても、グラノヴェッターの議論の正しさを感じます。私が13年勤めた日本興業銀行を離れ、NTTドコモに転職をしたきっかけは、他の銀行の方とランチをしていたとき、たまたま「ドコモが公募をしているらしいですよ」という話を聞いたからでした。

当時、私は投資銀行グループのプロジェクトファイナンス部で、海外の発電所建設やパイプライン、LNG(液化天然ガス)開発などのプロジェクト金融を担当していて、他行の方と情報交換のためにときどきランチをしていました。そのときは転職したいと強くは考えていませんでしたが、すでにプロジェクトファイナンスを7年ほど担当していたため、そろそろ金融だけでなく、「次世代のコメ」と評された情報通信事業についても専門性をもちたい、という思いがありました。

そんなときに他行の方にNTTドコモの公募情報を教えていただいた私はすぐ新聞の求人広告を探し、応募したのです。800人が応募して採用者は5人だったとのこと。そのうちの1人に入れたのは、ラッキーだったといえるでしょう。

■手ごろかつ効率的に関係を深められる

「弱い紐帯」を構築するために大切となるのは、自社では同じ部署ではない他部署の人、さらには他社の人との交流を積極的に行うべき、ということでしょう。いちばん手っ取り早いのは、私のように他社の方とランチをすることです。相手と関係を深める方法論がさまざまあるなかで、ランチは手ごろかつ効率的です。たとえ面識がなかったとしても、食事の席では人は饒舌になります。食事中に出る脳内物質によって幸福感を感じられるのです。素敵なお店で美味しいご飯を食べれば、その幸福感はさらに増すことでしょう。

ランチよりもディナーのほうがよい、と思う方もいるかもしれませんが、夜はお酒が入る場合も多いでしょうから、自分の感情をコントロールできないことが出てくるかもしれません。パワーブレックファーストも悪くはありませんが、自宅が遠い方、目上の方にはなかなかお願いしづらいものです。

ランチはあなたが「ブリッジ」になるための最強の方法論でもあります。ビジネスにおけるブリッジになるためには「ビジネス仲人」になる必要がありますが、その場をランチでセッティングするのです。私はこれを「アライアンスランチ」と呼んでいます。そうしたランチの力について、『世界のトップスクールで教えられている 最強の人脈術』ではさらに詳細な説明を行なっています。

弱い紐帯の関係をつくるためには、SNSの活用も有効です。海外では、仕事関係ではリンクトイン、プライベートの友人ではフェイスブック、と区分けしている人が多いようですが、日本でメジャーなのはやはりフェイスブックやラインでしょう。

繰り返しになりますが、こうした世界標準のネットワーク理論がまだ日本では十分に活用されているとはいえません。しかしある会社に在籍しているとき、その社内で力を発揮し、他社に転職しようとするときにも、定年を迎えてから先40年という長いもう一つの人生を生きることを考えても、この国に「資産としての人脈」という考え方が定着し、日本人がより豊かな生活を送れるようになることを、心から私は願っています。

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平野 敦士 カール(ひらの・あつし・かーる)
経営コンサルタント
アメリカ合衆国イリノイ州生まれ。東京大学経済学部卒業後、日本興業銀行、NTTドコモiモード企画部担当部長をへて、現職。楽天オークション元取締役、タワーレコード元取締役、ドコモ・ドットコム元取締役。2007年、ハーバード・ビジネススクールのアンドレイ・ハギウ准教授とコンサルティングや研修を行う株式会社ネットストラテジーを創業、代表取締役社長を務める。社団法人プラットフォーム戦略協会代表理事。ハーバード・ビジネススクール、早稲田大学ビジネススクールほか海外での講演多数。

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(ネットストラテジー代表取締役 平野 敦士 カール 写真=iStock.com)

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