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アマゾンが"無言の会議"を理想にする理由

プレジデントオンライン / 2018年10月12日 9時15分

恐ろしいほど効率的なアマゾンの会議のメソッドとは――。※写真はイメージです(写真=iStock.com/FangXiaNuo)

どうすれば会議の効率は上がるのか。驚異のスピード経営で知られるアマゾンでは、会議も恐ろしいほど効率的だ。アマゾンジャパンの立ち上げから15年間にわたって同社で活躍した佐藤将之(さとう・まさゆき)氏は、「アマゾンにおける理想の会議は、ほぼ無言で終わる会議」という。どういうことなのか――。

※本稿は佐藤将之『1日のタスクが1時間で片づく アマゾンのスピード仕事術』(KADOKAWA)の一部を抜粋・再編集したものです。

■まずは会議の「ゴール」をしっかり決める

「今日は、意思決定するための会議だったのに、情報を共有するだけになってしまった」
「アイデアを広げるはずだったのに、結局、声の大きい人の意見に流されてしまった」

これらは、日本企業の会議でよくある出来事です。

アマゾンでは、目的がわからない会議、着地点がズレてしまう会議は決して行われません。なぜなら会議の目的が最初から明確だからです。

ひとくちに会議といっても、さまざまな目的が考えられます。アマゾンで行っていた会議を大別すると、

・情報をシェアする会議なのか?
・対策を話し合う会議なのか?
・アイデアを出し合う会議なのか?
・何かを決定する会議なのか?

があります。

「会議の目的」とは、すなわち「ゴール」のことです。たとえば、「重要事項を1時間で決める会議」だとしましょう。この場合のゴールは、「1時間の会議を終えた後、この決定をもとに各参加者がすぐに次のアクションに移れること」です。

アマゾンの場合、会議を招集する人が参加者に、「今回の会議の目的(=ゴール)」を事前に告げます。そして、司会をする人(ほとんどが会議を招集した人)が、会議の冒頭で、「今回の会議の目的(=ゴール)」をあらためて告げます。そして、参加者全員が、決められた時間内に、決められたゴールに向けて集中して会議を行うのです。

■「持ち越し」を最小限に抑える努力

ただし、「時間内に決められなかった」ということはたまにあります。議論を深めたら「調査や再検討が必要だね」という要素が出てくるためです。けれどもその場合も、

・後日検討する要素を明らかにしてそれだけ持ち帰る
・この会議で決められる要素は決めてしまう
・次の会議もできるだけ早いタイミングで行う

など「持ち越し」を最小限に抑える対処をします。

アマゾンは「決定すること」を大事にしています。「会議をすること」が目的化することは絶対にありません。むしろ、短い時間で会議が終わるのならば、全員が大歓迎です。実際、1時間を予定していた会議でも、30分でゴールに到達することができたら、その時点で会議を終了することがよくあります。

ですから、まずは目的を明確にしましょう。「参加者たちが、会議を終えて、どのような状態になっているべきか?」を考え、参加者で共有する。すると、「会議に参加すること自体が目的になる」や、「無駄に長い会議を乗り切っただけなのに、達成感に酔いしれる」という事態を避けることができるのです。

■プレゼンソフトは使用禁止!

アマゾンの会議では、プレゼンソフトを使いません。それにはいくつかの理由があります。

【理由1】「ソフト使い」の巧拙によって、参加者の受ける印象が変わってしまう

プレゼンソフトは、タイミングに合わせてページを進めたり、アニメーションを使って印象的に見せることができます。こういった機能を駆使し、メリハリをつけてプレゼンを行えば、参加者たちは「素晴らしい」と感じるでしょう。一方で、さまざまな機能を使いこなせず、見た目も悪い資料でプレゼンをすれば、参加者はあまり良い提案だと感じないでしょう。

つまり、本来は別問題であるはずの「プレゼンの素晴らしさ」と「提案内容そのものの素晴らしさ」が、ソフト使いの巧拙によって曖昧になってしまうのです。

【理由2】箇条書きだらけの資料は、後日読み直すとよくわからない
『1日のタスクが1時間で片づく アマゾンのスピード仕事術』(佐藤将之著・KADOKAWA刊)

たとえば、「新事業がもたらす3つのメリット」と題して3つ見出しがあるとします。プレゼンテーターは、投影した見出しの“行間”を埋める形で話を進めます。3つの要点を端的に表示しておき、詳細は口頭で行うわけです。これは、プレゼンの常套手段として定着しています。

しかし、これには大きな落とし穴があります。後で資料を読み直すと、内容がよくわからないという問題が生じるのです。会議では、プレゼンテーターが行間を補ってくれていました。しかし人間の記憶力は曖昧なので、資料を読み返したときその意図が思い出せないのです。

これこそがまさにアマゾンで「パワポ資料禁止令」が出た理由でした。そして、禁止令を出したのは、他でもない、CEOのジェフ・ベゾス本人だったのです。

■ベゾス自らが厳命した「箇条書き禁止」

箇条書き禁止令が出たのは、2006年くらいのことだったと思います。会議で使った箇条書きの資料をジェフ・ベゾスが読み返したとき、「こんな資料じゃ何を言いたいのか、よくわからないじゃないか!」と激怒してしまったのです。

彼は社内会議などで1週間に何十もの報告を受ける身ですから、詳細を覚えているわけではありません。「アニメーションづくりなんかに時間をかけるな! すべて文章形式で書くように! その資料を読んだだけで内容がわかるようにすること!」となったわけです。

結果、アマゾンでのさまざまな資料は、文章形式で書いています。グラフなどをカラフルで見やすくする必要もありません。むしろ、事実を漏れなくわかりやすくまとめることが重視されています。そして、文書の枚数も会議の目的に応じて、「1枚」(「1ページャー」)か「6枚」(「6ページャーズ」)でまとめるのが基本となっています。

簡単な企画書や報告書などは、基本的にA4サイズ1ページでまとめます。トラブル発生に関する報告書の場合、「何が起きたのか?/どういう背景で起きたのか?/どのような対策をとるか?(暫定対策と恒久対策)」などをまとめます。事実を具体的に書くことが重要です。グラフや表を付記したい場合は別添し、枚数にカウントしません。

なお、文章の合間にグラフなどの図を入れ込むことは、「文章が読みにくくなる」という理由で禁止となっています。

年次予算、事業計画書、新事業の企画書、大がかりなプロジェクトの提案書などは、A4サイズ6ページでまとめます。プロジェクトの提案書の場合、「プロジェクトの概要/財源/目標とする指標」などを簡潔にまとめます。6ページャーズの場合も、1ページャーと同様にグラフや表などは別添とし、枚数にカウントしません。

■会議の冒頭で資料を読み込む

アマゾンの会議冒頭は“沈黙”が続きます。それは、用意された資料を参加者が読みこむ時間だからです。沈黙は、1ページなら5分ほど、6ページなら15分ほどです。全員が読み終わったのを確認して、話し合いが始まります。

基本は、資料に対しての質疑応答形式で行います。「1ページ目で質問ある人はいますか?」という投げかけに対して、

「2行目の文章は、どういう意味ですか?」
「5行目に関してはどんなふうに考えているの?」

といった質問を受け、資料の作成者(ほとんどの場合は会議の進行役)が説明をしていきます。最終ページまで質疑応答を続け、質問がなくなった時点で会議は終了となります。

■誰も話さず終了する会議が「ベスト」な理由

余談ですが、アマゾンにおける理想の会議は「ほぼ無言で終わる会議」です。「えっ、無言で終わる会議? 意見も出ず、議論もしない会議の何が良いの?」と思う方もいるかもしれません。アマゾンでは、会議がほぼ無言で終わるのは、「絶賛の証」です。つまり、「文句のつけようがないほど完璧な資料だった」ということなのです。

「1枚目、質問はありますか?」
「何もなし」
「2枚目、質問はありますか?」
「なし」

と続いて、最後まで参加者から「なし」のまま終わる。会議がこのように進むと、参加者から「ウェルダン!(お見事!)」と言われ、全員の拍手で賞賛されます。私も何度かこのような場に立ち会ったことがありますが、理想的な会議の姿だと感じます。

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佐藤将之(さとう・まさゆき)
企業成長支援アドバイザー
セガ・エンタープライゼスを経て、アマゾンジャパンの立ち上げメンバーとして2000年7月に入社。オペレーション部門のディレクターとして国内最大級の物流ネットワークの発展に寄与する。2016年退社。現在は、経営コンサルタントとして企業の成長支援を中心に活動中。

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(企業成長支援アドバイザー 佐藤 将之 写真=iStock.com)

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