吉野家が提案した"ニクレンジャー"の狙い
プレジデントオンライン / 2019年1月14日 11時15分
外食チェーンの「吉野家」「はなまるうどん」「ガスト」が、全国約3000店で使える「3社合同定期券」を発売した。価格は1枚300円。店頭で示すと、吉野家で80円、ガストで100円割引になり、はなまるでは天ぷらがひとつ無料になる。有効期間である9月10日から10月21日の間は、全店で何回でも使用可能だ。
3社にとって、この企画の最大の目的は「話題性」だ。マスメディアに加えて消費者がSNSなどで勝手に取り上げて拡散してくれることが一般的となった昨今、CMなどに費用をかけるよりも、斬新で注目度の高いイベントを実施したほうが賢いマーケティング戦略といえる。
仕掛け役の吉野家は、自社よりも店舗数が多く、客層が被っていない外食企業と手を結んで、顧客を取り込みたいという前提がある。ガストはこの条件を満たす最適な相手だったと考える。
今回の3社の企画について、巷では「中食ビジネスの拡大に危機感を抱いて、外食企業が新たな戦略を立てた」などの臆測が飛び交っているが、3社の狙いはそこではない。複数の社が手を組む「コラボマーケティング」は、数年前に食品・日用品メーカーで流行した手法。メディアや消費者から注目される奇抜な企画を打ち出して、顧客の関心を集め、数々の成功事例を残してきた。吉野家にはP&G出身の執行役員もいるように、マーケティングのプロが他業界で成功した手法を外食業界で横展開する現象が起きている。「定期券」は吉野家が効果的な販促として以前より自信を持っている企画であり、他社とのコラボは他業界で成功例の多い企画。今回はその融合とも考えられる。
少し前に、吉野家がTwitterで松屋、ケンタッキーなど肉関連の外食企業とコラボしたい、と発言した「ニクレンジャー」も、狙いは同じだろう。
(野村證券 アナリスト 皆川 良造 構成=吉田彩乃 写真=iStock.com)
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