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英語学習が"小学生から"では遅すぎるワケ

プレジデントオンライン / 2018年10月17日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/pictafolio)

私たちは10年以上も英語を習ったはずなのに、なぜ苦手意識がなくならないのだろうか。2020年には小学校での英語教育が義務化される。小学生から始められれば、苦手意識はなくなるのだろうか。脳科学者・茂木健一郎氏は、「英語脳を作るには小学校からでも遅い。5歳までの子育てが大事」と指摘する――。

※本稿は、茂木健一郎『5歳までにやっておきたい 英語が得意な脳の育て方』(日本実業出版社)を再編集したものです。

■小学校での英語義務教育化がスタートするが……

文部科学省の新しい指導要領では、2020年より小学校での英語の義務教育化がスタートすることになっています。これまでも小学校で英語学習は行われていたのですが「外国語活動」というカリキュラムで、成績がつくわけではありませんでした。ところが2020年からは教科としての「英語」が始まるのです。

つまり、国語や算数と同じように、英語の成績がつく。

そのことによって子どもたちは英語を一生懸命勉強し、子供のころから英語がペラペラで外国人とのコミュニケーションもできて、将来的にも英語を使いこなしてワールドワイドに活躍……できると思いますか?

答えは「No!」です。

だって皆さん、ご自身の学生時代を思い返してください。中学1年から高校、大学まで、長い人で10年近く英語を勉強したはずです。塾に通った方もいるでしょう。それで、英語が話せるようになりましたか? 英語でコミュニケーションできますか?

「できない」という方が圧倒的多数なのではないでしょうか?

僕が日本の友人や仕事相手と話していて感じるのは、日本人には「英語が苦手」という人が圧倒的に多いということ。つまり、読み書きはできても話せない。もしくは10年近く勉強して読み書き会話全部苦手だったりもする。

もちろん、日本でも最近は「英語が話せる」のは当然のことだという風潮も強くなってきました。外国人もいる会議に出て、当然のように英語で話す。例えば楽天の三木谷浩史さんなんかも、ごく普通に英語でインタビューを受けたりしていますよね? 「英語ができる」ことがステータスではなくなっています。

つまり、ビジネスの最前線ではもはや「英語はできて当たり前」なのだけど、日本の英語学習を経てきた人は「英語は苦手」という意識を持ち続けていて、社会に出てから改めて勉強していたりする。

どうしてそんなことになるんでしょうか?

■脳に「英語回路」を育てよう

それは、脳に秘密があります。脳には尾状核という部分があって、ここが学習と記憶の重要なシステムを占めています。また、言語学習に関わる脳の部位としてはブローカー野という領域もあります。運動性言語中枢ともいわれるブローカー野は、言語処理も行っています。

例えば私たちが「Hi!」と発話する。文法にのっとって、昼間知り合いと会ったときのあいさつとして発話する役割を担っているのがブローカー野で、「Hi」というあいさつを覚えて使いこなせるように学習するのが尾状核です。

最近の脳科学の研究で、ブローカー野は音楽と言語を同じもの、一体のものとして処理していることがわかってきました。

子どもは歌が好きですね。言葉をしゃべり始めるより早く、音楽に合わせて体を動かし、歌に合わせて言葉を発します。これも、ブローカー野の働きによるものです。ですから、ブローカー野を活性化させて、歌や音楽を介して言語に慣れ親しんでいくことが、幼児期の英語教育には重要です。

つまり、英語の歌を聴きながら、自然にブローカー野を活性化する。そうすれば、少なくとも、大人になってから「聴き慣れない英語」に身がまえることがなくなります。

■5歳までの英語教育は遊びの中で「英語を好き」になることが大切

5歳までの英語学習では、ブローカー野を活性化させて、音楽のように言語に慣れ親しむこと。そして、「英語を苦手に思わない」脳を育てておくことが大切です。

そのためには、遊びを通じて英語を楽しみながら学ぶことが大事です。

では、遊びながら英語を学べる方法をいくつか紹介しましょう。

1:英語でことば遊びをやってみる

日本には「しりとり」のように、ことばを使った遊びがありますね。英語にももちろんあって、英語のことば遊びを普段の生活に取り入れるのは一番簡単な「遊びながら学ぶ」方法といえます。親子でことば遊びをすると親子間のスキンシップにもなりますし、子どもの脳が活性化し、当然語彙(ごい)も豊かになります。

英語のことば遊びでメジャーなのは、例えば「I SPY WITH MY LITTLE EYE」などがあります。

これは、私が高校1年でカナダに短期語学留学していたとき、現地の子どもたちがよくやっていたので知りました。どこでもできるとてもかんたんなことば遊びです。

遊び方としては、まず「見つけるもの」を決めます。例えば子どもに部屋のなかにある赤いりんごを見つけさせたいなら、お父さんお母さんがこのようにいいます。

「I spy with my little eye …… something red!(赤いもの、見つけた!)」

すると、子どもは部屋のなかを歩き回り、お父さんお母さんが言っているもの(赤いもの)を探します。

子どもがりんごを見つけて「A red apple!」と言えたらポイントになります。

ほかにも、「I went to the supermarket to buy Apple, Beer, Cheese……」とABC順にスーパーマーケットで買えるようなものを言いあって続けていく、あるいは動物の名前を英語で言いあってみる遊びもあります。

「でも、平日は親も仕事で忙しく、遊ぶ時間が取れない……」と心配になるかもしれませんが、わざわざ遊ぶ時間を作る必要はありません。

例えば親子で一緒にお風呂に入るときなどに、「じゃあ、いまから英語で動物の名前を言おうね」とことば遊びを始めればいいのです。

入浴中は親子で遊ぶと脳内の副交感神経が刺激され、新しい情報を受け取りやすく、さらに記憶が残りやすいことが脳科学の研究でもわかっています。つまり、お風呂は英単語を覚える学習効果が高い時間だというわけです。

2:絵本の読み聞かせも英語で

「読み聞かせ」がいい、というのは幼児教育ではしばしば言われることですが、英語を学ぶ場合も絵本の読み聞かせはいい方法です。

親御さんがお子さんを膝に座らせて読み聞かせをするとします。このとき子どもにとって親御さんは「安全基地」として機能しています。愛着の対象である親御さんに包まれて、親御さんの声で絵本という情報を与えてもらうとき、子どもの脳はぐんぐん育ちます。これは日本語でも英語でも同じことで、親御さんが読み聞かせる英語にお子さんの脳は反応し、どんどん知識を吸収します。

親御さんが「英語が苦手」という場合もノープロブレム。というのも、たとえテレビやラジオなどの機械音声ではなく、生身の人間の声のほうが子どもの脳が本気になるという研究結果があるのです。その生身の人間が大好きなお父さんお母さんならなおさら効果があるというものです。

■文字の少ない英語版図鑑もおすすめ

読み聞かせする絵本はなんでもいいのですが、英語を学ばせようと1歳や2歳の子に無理に長い物語を読み聞かせる必要はありません。子どもが好きなテーマの絵本から始めればいいでしょう。

例えば、列車が好きなら「機関車トーマス」のような列車が出てくる絵本、お姫様が好きなら「シンデレラ」のようなお姫様が出てくる絵本、というように、そのとき興味のあるジャンルの絵本を読み聞かせしてあげてください。

もし手に入るようでしたら、文字の少ない英語版図鑑でもいいですね。なぜ図鑑がいいかというと、5歳までの子どもは視覚情報を優先して受け取ります。つまり、視覚から入るほうが、子どもの脳にとってはわかりやすいからです。

繰り返しますが、大事なのは「流暢な発音」ではなく親という生身の人間が英語を読んで聞かせてあげるということ。多くのご家庭でよく行われている「寝る前の読み聞かせタイム」に、英語の絵本を取り入れましょう。

■英語が得意な脳を育てる遊び方のコツ

ことば遊びと読み聞かせという、親子でできる遊びを2つ紹介しましたが、実は日常生活のどんなことでも、子どもにとっては英語が得意な脳を育てる遊びになり得ます。

茂木健一郎『5歳までにやっておきたい 英語が得意な脳の育て方』(日本実業出版社)

小学校入学前の、1~5歳の子どもにとっては朝起きてから夜眠るまでが遊びのようなものです。でもその中で、あくまで「英語を得意にするための遊び」と考えた場合、遊び方のコツがあります。最後にそのコツについてご紹介しましょう。

それは

・子どもに強制しないこと
・始まりとおわりを設定すること

です。このふたつのどちらかが欠けても、子どもの脳は遊びとして楽しみながら、集中して英語と接することができないからです。

つまり、無理やり「英語で遊ぶよ」と遊ばせても意味はありません。かといって唐突にお父さんお母さんが「Pig!」「Elephant!」と英語で動物の名前を羅列し始めても、子どもは意味がわからないので遊びに参加できません。

普段は日本語で話しているお父さんお母さんとお子さんが英語遊びを始めるには、明確なルールをつくって共有することが大事です。そのルール設定に大事なのが、子どもに強制はせず、「いまからこんな遊びを始めるよ」「こうなったらおしまいだよ(10分たったらおしまいだよ。Zで始まる言葉になったらおしまいだよ。など)」と始まりとおわりを決めてあげることなのです。

子どもは、ルールを決めてもらうことが好きな生き物。そのルールがあることで、脳はぐんぐん学んでいきます。お父さんお母さんがルールを決めてすきを見ては英語で遊んであげてください。

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茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者。1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードに脳と心の関係を研究。『すべての悩みは脳がつくり出す』など著書多数。

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(脳科学者 茂木 健一郎 写真=iStock.com)

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