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"通訳案内業務の自由化"で儲かる人の条件

プレジデントオンライン / 2019年1月14日 11時15分

写真=iStock.com/JulieanneBirch

■通訳案内士は「通訳」しない

2018年1月から通訳案内業務が自由化されたことをご存じだろうか。これまで有償の通訳案内業務は、「業務独占資格」である通訳案内士にのみ許されていた。しかし法律が改正されて、通訳案内士は「名称独占資格」になった。

名称独占資格とは、有資格者しかその名称を使えないが、業務は独占できない資格のこと。つまり改正後の現在は、通訳案内士と名乗らなければ誰でもお金を取って通訳案内ができる。そう聞いて、「そもそも通訳に資格が必要だったの?」と驚いた人もいるだろう。しかし、この疑問には一部誤解がある。通訳案内士は通訳という名前がついているものの、通訳と関係のない資格だからだ。旅行業界に詳しい三浦雅生弁護士は次のように説明する。

「外国人観光客をお寺に案内するとしましょう。住職が話した内容を外国語に通訳するときに資格は不要です。資格が必要だったのは、ガイド本人が自分の知識を外国語で説明をするとき。つまり通訳案内士は外国語ガイドのことだと思えばいい」

通訳案内士は、外国人観光客に不正確な情報を与えてはいけないという趣旨で1949年に資格化された。それがなぜいま解禁されたのか。

背景にあるのは、インバウンド拡大による人手不足だ。訪日外国人数は2017年で2869万人。それに対して、通訳案内士の登録者数は1万9033人(15年)。通訳案内士は女性の割合が高く、休眠状態の有資格者も多いことを考えると、需要に供給が追いついていない。

「通訳案内士は難関資格で、報酬が高い。自由化には、旅行の総コストを下げたいという業界の思惑もありました」

■業界が注目する「地域通訳案内士」

ただ自由化されたとはいえ、旅行会社や観光施設は外国語ガイドを無条件に雇うわけにはいかない。トラブルが起きたときに、責任を問われるリスクがあるからだ。

旅行業界が期待しているのは、改正法で新設された地域別の「地域通訳案内士」だ。従来の通訳案内士(全国通訳案内士に改称)より合格のハードルは低いが、資格で一定の質が担保されているため、旅行会社としては雇いやすい。

「無資格者も近いうちに団体ができるでしょう。団体に登録した外国語ガイドなら雇いやすいはずです」

旅行会社が期待する戦力がもう1つある。添乗員だ。

「従来は、英語を話せる添乗員でも無資格では外国語でガイドできなかったために、わざわざ日本語のガイドを1人雇い、それを通訳する形でガイドをしていました。改正後は1人でできる。旅行会社としてはコスト削減になります」

コストが下がれば、外国人観光客の利益にもなる。また、いままで資格の壁に跳ね返されていた人も、定年後の仕事や副業として就業チャンスが広がる。この規制緩和でインバウンドがさらに盛り上がることを期待したい。

(ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=弁護士 三浦雅生 図版作成=大橋昭一 写真=iStock.com)

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