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"アドラー流"上司に嫌われた時の対処法

プレジデントオンライン / 2018年10月28日 11時15分

写真=iStock.com/TeoLazarev

対人関係で悩んだときに、どんな解決策をとればいいのか。評論家の佐々木常夫氏と哲学者の岸見一郎氏。2人の達人に、5つの「場面別」でアドバイスを求めた。第2回は「上司に嫌われた」について――。(全5回)

※本稿は、「プレジデント」(2017年3月20日号)の掲載記事を再編集したものです。

【QUESTION】上司に嫌われた

佐々木の答え:「100%軍門に下る気持ち」で付き合う

■自分を嫌った上司が、自分の味方になった

長い会社人生の中で、私を最も引き上げ出世させてくれたのは、当初は私をひどく嫌っていた上司でした。その人はとにかく気難しくてとっつきにくい。でも仕事は抜群にデキる人でしたから、文句のつけようがありません。その上司に嫌われていたのは、私が上司に対しても物怖じせずに直言するタイプだったから。要は仕事の流儀の違いです。

嫌われているのは明らかでしたが、仕事で顔を合わせるわけですし、避けては通れない。私は腹をくくり、100%軍門に下る気持ちで付き合いました。定期的な業務報告はもちろん、徹底的にコミュニケーションを図り、上司が何を望んでいるのか把握するよう努めました。

こちらが必死になって食らいつき、上司の意に沿う働きぶりを見せれば、さすがに徐々に認めてもらえるようになります。とことん尽くして、やがて信頼してもらえるようになると、上司は昇進して異動する先々に私を呼び寄せてくれるようになった。そうやって、私は幸運にもキャリアの階段を上ることができたのです。

仕事関係に限りませんが、初めから万人に好かれようと願っても無理な話です。どうしたってウマの合わない人はいるし、なかにはより好みの激しい人もいる。でも私の経験では、そういう人に限って仕事となるとキレがあり、どんどん出世していったりするものです。だから、付き合いづらかったり、嫌われているなと感じたりする上司でも、絶対に疎かにしてはいけない。査定や異動も上司のさじ加減ひとつで決まるから、上司といかに付き合うかは会社員にとって最重要課題です。

嫌われないに越したことはありませんが、仮に1度嫌われてしまっても、ぶつかっていけば挽回も十分可能です。まずは「私のどんなところが悪いのでしょうか」と、嫌われている原因を探りましょう。「一緒に仕事をさせていただくのに、嫌われていたらやりにくいのです。教えてください」とバカ正直すぎるくらいで構わない。思い切って懐に飛び込み、真摯に向き合えば、何かしら突破口が開けてくるものです。

嫌われていることがわかっているのに何も対策を講じないと、後々ひどい目に遭います。上司に嫌われた場合、たとえ自分に落ち度があったとしても、いい気分ではありませんから、つい距離を置きたくなることもある。でも、それはあまりにも大きなリスクです。

まさにその失敗がもとで、出世コースから外された同僚がいました。非常に優秀な人でしたが、あるとき軽率な発言で上司の逆鱗に触れます。

本人としては他意はなく、多忙ゆえに少々ぞんざいな言葉遣いをしてしまっただけなのでしょう。ですが、たった1度の失言が命取りとなった。

やがてその上司は人事部長に昇格、社員の命運を握る立場になりました。

同僚は文句なしに優秀でしたから、部門長からの昇格申請が何度も人事部に出されたのですが、人事部長は権限を行使して、すべての昇格申請をことごとく握りつぶしたのです。

今の若い世代には「媚びるのは嫌」という人が増えています。上司にゴマをするなんて、みっともないし品もないと思っているようです。でも私はそうは思いません。そういう人は、何のために仕事をしているのか考え直してみるといい。究極的には自分のため、自分が幸せになるために汗水流して働いているはずです。そうだとすれば、仕事をうまく進めるために上司のご機嫌取りひとつもできない人は、要は自分の幸せを追求していないのだといえます。

「思い切って懐に飛び込めば、突破口は開ける」

岸見の答え:「今後のために改善点を教えてください」と質問

■「嫌い」の裏側に、不満が隠れている

たとえ出来が悪い部下でも、成長するよう指導して、何か失敗をしでかしたらその責任を取るのが上司の役目。「嫌い」という感情を出してしまっているのは、マネジメントの基本がわかっていない証拠でしょう。

こうした上司への対処法で大切なのは、感情的にならないこと。嫌われていることで落ち込むとか、逆に自分も腹を立てるとか、そうした負の感情に呑まれてはいけません。「この人は上司の仕事の何たるかがわかってないんだな」と少し突き放して見るぐらいがちょうどいい。

そのうえで、そんな上司ともうまくやっていくためには、上司の要求をきちんと把握する必要がある。というのも、部下を嫌っているような態度を取る裏には、部下に対する何らかの不満が隠されていることが多いから。案外、単にもっと売り上げを上げてもらいたいとか、部署の業績に貢献してもらいたいと思っているだけかもしれません。なんといっても、部下が頑張ってくれたほうが上司もトクですから。自分の部署の業績に貢献する部下なら、多少生意気でもかわいいと思うものです。

部下の仕事ぶりに不満がある場合、まっとうな上司なら、部下のやる気に火をつけるような建設的な言葉がけができるはず。でも、不幸にも感情的な物言いしかできない上司なら、部下のほうから上司の真意を引き出す働きかけが必要です。感情的になっている人は、その自覚がないことがほとんど。「嫌い」という感情を、仕事の文脈に置き換えるのです。これも自分が成長するいい機会。上司のためではなく、自分のためだと思って接してみてください。

たとえば「おまえはどうしてこんなこともできないんだ!」と叱責されたとき、「あー、やっぱり嫌われてるな……」と嘆いたり落ち込んだりして終わらせるのではなく、「今回はすみませんでした。今後のために改善点を教えてください」と切り返してはどうでしょう。「そんなことは自分で考えろ」といわれるかもしれませんが、そこは食い下がっても大丈夫。部下が失敗を繰り返すとしたら、それは上司の管理責任や指導力が問われている証拠。問題は上司にあるわけですから、部下はアドバイスを求めていいのです。

そうした努力をしてもなお、上司が高圧的な態度をやめない場合、いま1度、仕事の目的を思い出すといいでしょう。最優先すべきなのは上司に好かれることでしょうか。違うはずです。上司に好かれ認められることを第一の目的にしてしまうと、とんでもない落とし穴に陥る危険性があります。それは、「上司に疎まれているから仕事ができない。成果を出せないのは上司のせいだ」という発想です。アドラー流にいえば「劣等コンプレックス」。「AができないのはBのせいだ」という言い訳を日常的に多用して、原因を自分以外に転嫁する心理状態のことです。

こうした言い訳めいた気持ちが頭をもたげてきたら要注意。「オレだってその気になれば、こんな部署でくすぶってる人間じゃないんだ。でも上司があれじゃ、やる気も出ないよな」などとうそぶいている人が職場に1人や2人いるのでは。こういう人は、たとえ上司が代わっても、決して頭角を現したりしません。本当にやる気があるなら、つべこべいわずに今出しなさい、という話です。

仮に上司がマネジメント能力のない人であっても、それはあくまで上司の問題であって、部下の問題ではありません。上司の態度を言い訳に仕事上の努力を怠っていると、結局損をするのは自分です。

「上司に恵まれないことをやる気と結び付けない」

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佐々木常夫
佐々木マネージメント・リサーチ代表
1944年生まれ。69年、東京大学経済学部卒業後、東レに入社。2001年に同期トップで取締役に。03年、東レ経営研究所社長に就任。10年より現職。
 

岸見一郎
哲学者
1956年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。京都聖カタリナ高校看護専攻科非常勤講師。共著書『嫌われる勇気』は155万部のベストセラーに。
 

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(佐々木マネージメント・リサーチ代表 佐々木 常夫、哲学者 岸見 一郎 構成=小島和子 撮影=大沢尚芳、森本真哉 写真=iStock.com)

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