ライザップ事業展開の図解でわかった事実
プレジデントオンライン / 2018年11月10日 11時15分
■最初から完成した図を目指さない
自分の頭の中では理解しているはずなのに、口頭で説明するとなぜか複雑に聞こえてしまうことがある。そんなとき、図解化することは大きな助けになる。言葉を尽くさなくとも一気にイメージを共有し、お互いに同じ土俵で話がしやすくなるからだ。
一方で、簡単そうに見える図でも、いざ自分で書き始めようとすると何から始めればいいのか悩む人も多い。
今回、取材した図解のプロが口を揃えるのは、「図解することが目的なのではない。問題解決や情報整理するツールとして図解がある」ということ。最初から100%完成した図を書く必要はない。まずは「自分は何を解決・整理しようとしているのか」という問いを明確にしたうえで、キーワードを書き出し、関係性をひとつずつつないでいく。そこから要らない情報を省き、まとめていった結果、図とともに頭の中が整理されることが図解することの意義なのだ。
今回紹介する6つの図を応用し、一気に問題解決に導くスキルをマスターしよう。
【1】視覚化しづらい情報を整理する
■見えにくい関係を、明らかにする
言葉より図のほうが雄弁に伝えられるものとは何か。インフォグラフィック・エディターの櫻田潤氏は「図で明快に表現できるのが『関係』です」と語る。
「特にビジネスは何らかの交換関係が生じているので、図解することで理解が進みます。まずは登場人物をはっきりさせて、お互いを双方向の矢印で結び、何を交換しているかを考える。ポイントは、ビジネスにおけるお金と商品の交換以外の取引と、隠れている関係者を見つけ出すことです」
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ユーザーはGoogleの検索サービスを無料で利用しているように感じるが、実際は閲覧データを提供している。さらにGoogleはユーザーに広告を表示することで、広告主から広告料をもらい、広告枠を与えるという関係もある。まずは登場人物を並べて矢印でつないだ後、図を見ながら何を交換しているか考えると、アイデアが出やすい。(櫻田氏)
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またIT関連のビジネスは、チャネルが多く、視覚化するのが困難なように見える。そこで知的生産研究家の永田豊志氏は、「まずは何の問題解決をしたいかを考えるべき」と説明する。
「関わる要素をすべて図にしても、複雑な状況が複雑に視覚化されるだけ。もしクラウドと社内サーバの違いについて資料を作る際、もっとも重要な問題がセキュリティであるなら、コストなど他の要素は省きましょう。図がシンプルになり、情報が整理されます」
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社内サーバはシステムを購入後、少数の社員で運営され、当初の設定がそのまま維持されるケースが多い。一方、サーバが社外にあるクラウドはデータの保管場所として不安に思われることがあるが、サービス提供企業が運営・管理するため、日々システムが改善され、セキュリティの強度も上がっていく。(永田氏)
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【2】成功をもたらす要因を探る
■何が大事なのか、直感的に伝達
なぜあの企業は成功しているのか? その要因を探すとき、同業他社との比較はヒントになる。そこで役に立つのがタテ軸とヨコ軸に沿って比較対象を配置する、2軸マトリックス図だ。
この図を使うと、それぞれの立ち位置を把握しやすくなるが、何かを選ぶときにも使える。もっとも大事な切り口をタテ軸に、次に大事な切り口をヨコ軸に配置し、重視する要素を上と右に置く。すると、四角形の中で目立つ右上のゾーンに候補が置かれるため、人に見せると「これが大事」と直感的に伝わる。
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2軸マトリックス図によって、代表的なSNSのサービスを比較した。「企業の立ち位置を比較したい場合、必ずしもユーザー数など定量的なデータで比べなくてもかまいません。『親しみやすさ』など定性的な切り口で配置すると、各自の主観が出ます。それが議論の土台になることが、図解した効果と言えます」(櫻田氏)
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また、失敗の要因を明確にするのに、経営コンサルタントの高橋政史氏は、フローチャートを用いた理解を勧める。
「解決しない問題の多くは、ゴールが不明確なため、取り組むべきことが見えてこないのが原因です。まずは具体的な数字をあげてゴールを設定する。そして現状の重要な事実を3つほど抜き出し、ひとつひとつに、状況解釈と行動提案を見つけていく。そうすると問題が整理され、解決策が見えやすくなります」
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残業時間を減らすには、まず現状を把握して明確な目標数値を設定することが必要。そのために問題点を細かく洗い出し、ひとつずつ対策を練っていく。「図解する際、イメージしたいのは、『事実』『解釈・分析』『行動・報告』を3つ並べた、3×3項目の9マス。これの全部を埋めることで、具体的な行動計画が割り出されていきます」(高橋氏)
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【3】進むべき方向を見つけ出す
■大きな流れを、グループ化で理解
成功した企業を自身のビジネスの参考にしたいとき、その骨格となるビジネスモデルを見抜くにはどうしたらよいか。
「大企業ほど構成要素が多く、ビジネスモデルが複雑に見えます。まずは要素を分解し、グループ化していきましょう。大事なポイントは似た要素を集めて、枠でくくること。たとえば複数の「仕入先」「販売先の国」など、ラベル名をつけて、まとめていく。これにより、『大きな流れを大局的に見る』」ことが可能になります」(永田氏)
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見えてくるのは、ユニクロの強みだ。Aブロックで事業モデルを明文化し、Bブロックでは世界的な生産体制を整え、コストダウンの工夫が見える。Cブロックで海外展開を進め、シェアを獲得していることも明確に。アライアンス関係を示すのがDブロック。ターゲット分析だけでなく、コストカットから海外戦略までが1つの図にまとまった。(永田氏)
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また企業の中に複数ある事業展開をまとめる際、並列に並べず、事業の大小や段差などでメリハリをつけると、企業の強みがより伝わりやすくなる。図のライザップの場合、美容健康関連をベースにした企業であることが伝わるだろう。
もし「進むべき方向性を見つけ出したい」のであれば、普段から注目企業のビジネスモデルを図解する習慣をつけておくことは有効だ。企業の本質が図として頭に残り、選択肢が増えるに違いない。
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M&Aを意欲的に進めているライザップ。メインとなる健康分野が大きなシェアを占めているものの、アパレル、住関連、エンターテイメントとM&Aなどで新たに加わっている分野の棲み分けもわかってくる。「段差を図解に用いる場合、あまり数を多くしすぎないように注意しましょう。3~4つくらいに整理するのがベストです」(高橋氏)。
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インフォグラフィック・エディター
プログラマー、システムエンジニア、ウェブデザイナーなどを経て、ニューズピックスに参画。図解やビジュアルを幅広く用いた記事を執筆、デザインする。
知的生産研究家
新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。図解思考、フレームワーク分析などのエキスパート。著書に『「図解思考」の技術』シリーズなど。
経営コンサルタント
クリエイティブマネジメント代表取締役。のべ3万人、200社超の企業が導入する「方眼ノート思考」メソッドの開発者。整理術、会議術、速読術など、著書も多数。
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(ライター 岩辺 みどり 撮影=大泉 裕 写真=iStock.com)
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