エステーが"放射線の線量計"を作ったワケ
プレジデントオンライン / 2018年11月15日 9時15分
QUESTION
大赤字を出した
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損得勘定抜きでやるべきことがある。世のため人のためなら後悔するな
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■放射線線量計を被災地のために開発
福島の原子力災害の後、手軽な放射線の線量計をつくろうと思い立ちました。
放射能に対する不安が広がっているのに、バカ高くてまともに動くかどうかもわからない海外製の線量計ぐらいしか売っていない。普段CMで「空気をかえよう」と宣伝しているのに、自分が吸っている空気が安全かどうかもわからないようじゃ話にならない。
「名前は決めた。エアカウンターで行く。損得勘定はいいから、誰でも買える値段にしよう」と役員会で諮ったらこぞって大反対。それでも「日本のためだ。文句があるか。やるったらやるんだ」と押し通して、専門家の協力も取り付けて、何とか商品化にこぎつけました。値段も当初の希望小売価格は1万5750円が限界でしたが、発売時には9800円まで下げて、その後の研究で7900円に。
福島県を中心とした被災地に優先的に販売して、初回出荷分は発売初日で完売。何より嬉しかったのは、「安心した」という声をたくさんいただいたことでした。
■商売としては大赤字だった
しかし、皆さんの不安がなくなれば当然、需要はなくなる。商売としては大赤字。経理担当にはえらく怒られ、アナリストからも批判された。
でも全部覚悟してやったことだから、後悔はない。日本の皆さんに会社を育ててもらった恩義がある。日本人が困ったときにお役に立とうとするのは当然のことです。
経営者としては赤字を出すのは褒められたことではない。でも経営者である前に私は日本人です。ときに算盤勘定よりも心意気が大事なことがあります。
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赤字はサラリーマンの勲章。次に生かすべく、後処理を覚える
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■手形をなくしたとき、先輩がテキパキ指示
モデル末期で月に10台くらいしか売れないクルマを500台くらい在庫で取ってしまったことがあります。「インセンティブの予算を数億つけるから」みたいな甘い言葉に釣られて。
で、案の定売れない。追加予算をさらに使っても売り切れず、こっちの予算を使って処理しなければならなくなって、結局、十数億円にのぼる大変なお金を使って売り切った。当然ながら1台当たりの収益は大赤字です。
当時ドイツ人の社長から「ボクシンググローブをつけてたら3発は食らわしている」とジョーク交じりに言われた。おかげで長期在庫を抱える怖さを身をもって学びました。
銀行員時代にも大きな失敗をしていて、1度手形をなくしたことがあるんです。次長に打ち明けたら「何! おまえクビだぞ」と。進退窮まったと青くなっていたら、普段は昼行灯のような先輩が見違えるようにテキパキと処理の仕方を指示してくれた。自身の経験から、始末の仕方を誰よりもよく知っていて。
リカバリーショットの打ち方を知っておくのも大事なこと。赤字を出すような失敗は学ぶチャンス、という受け止め方もあると思います。
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鈴木 喬
エステー会長
一橋大学卒業後、日本生命入社。エステーに出向し、1998年社長。「消臭力」などヒットを連発。
七五三木敏幸
ポルシェジャパン社長
一橋大学卒業。群馬銀行、メルセデス・ベンツ日本、クライスラー日本などを経て現職。
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(ジャーナリスト 小川 剛 写真=iStock.com)
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