問題閣僚が続出も安倍首相が動じないワケ
プレジデントオンライン / 2018年10月24日 9時15分
■すでに「学級崩壊状態」にある安倍内閣
早々に「文春砲」が火を吹いた。18日発売の週刊文春が10月25日号で「片山さつき大臣 国税口利きで100万円」と報じた。片山氏が10月2日の改造で入閣するのを見届けて、満を持して持ちネタをさく裂した印象だ。片山氏は疑惑を否定。文芸春秋を相手取り損害賠償を求めて提訴した。しかし報道が事実でないことを具体的に証明できておらず「法的措置に入っているので、詳細は差し控える」と繰り返している。
片山氏については今後も、メディアから第2、第3の追及弾があるとの見方もあり、臨時国会では追及の矢面に立つ。
「政治とカネ」で問題を指摘される議員は他にもゴロゴロいる。宮腰光寛沖縄北方担当相、平井卓也科学技術担当相は談合が指摘された企業からの献金問題、渡辺博道復興相は、国から間接的に補助金を受けた企業からの献金問題を抱える。柴山昌彦文部科学相は、公選法違反を指摘する報道があった。
この他、過去に歴史認識などについて問題発言をして批判された閣僚も多数いる。当然、彼らも国会で厳しく追及を受ける。まさに安倍内閣は学級崩壊に近い状況だ。
■批判を受けているのは「こだわりのないポスト」の12人
注目すべきは、これらの「疑惑閣僚」はいずれも初入閣組であることだ。内閣改造直後の10月4日にアップした「 "右寄りのお友達"で固めた安倍内閣の真意」で紹介したように今回の内閣改造で安倍氏は、重要ポストはお友達の現職を配し、こだわりのないポストは、総裁選で自分を支援してくれた議員の中から派閥の推薦・要望に基づいて適当に配置した。その「こだわりのないポスト」が12あり、そこに起用された閣僚が、批判にさらされているという構図だ。
12人の多くは、ここ数年の間、毎回入閣候補にあげられながら、見送られてきた。つまり、かねてスキャンダルのうわさがあったり、軽率な言動が指摘されたりする議員だった。今、問題が噴出するのも当然といえば当然だ。
人事権者の安倍氏はどういう心境だろうか。もちろん好ましい展開とは思っていないが、かといって、危機感を募らせているようでもない。
■今のような事態が起きるのは織り込み済み
安倍氏は今回、徹底した内向きの発想で人事を行った。国民受けする人選をするのではなく、党内治安の維持を優先した。総裁選で支援をしたのに冷遇されれば、安倍氏への忠誠度が急速に下がる。そうならないように配慮したのだ。
安倍氏は今回の総裁選で、自分を支援してくれた麻生派、二階派などの希望を受け入れて人選した。派閥の領袖は、派内バランスを最も重視する。だから当選回数の少ない若手を抜てきされるより、回数が多い議員から順番に起用されるのを希望する。その希望を安倍氏はかなえた。言い換えれば、論功行賞と分かるような人事をした。
さほど能力はなく、「すねに傷もつ」大臣たちだから、今のような事態が起きるのは織り込み済みというわけだ。
■安倍氏は今の内閣を長く継続する気はない
安倍氏は、盟友がスキャンダルに巻き込まれた時、守り切ろうとすることが多い。2016年、経済財政担当相だった甘利明氏に「政治とカネ」のスキャンダルが浮上した。結局、甘利氏は自ら辞任するのだが、安倍氏は、辞意を漏らす甘利氏に「内閣支持率が下がってもいいから続投してくれ」と何度も説得した。今回の人事でも、批判されるのを覚悟の上で、森友問題や次官のセクハラ問題の責任が問われる麻生太郎財務相を続投させている。
だが、これは自分がこだわりをもって起用した盟友たちの話。「こだわりのない」12人については「説明責任が果たせなければあっさり更迭するだろう」というのが大方の見方だ。
現在の状況を考えると、今年の臨時国会から来年の通常国会にかけて「何人が辞任するか」が焦点となるかもしれない。
そもそも、安倍氏は今の内閣を長く継続する気はないようだ。自民党内では、そんなささやきが漏れている。もともと「滞貨一掃」内閣と言われる顔触れ。「一掃」することに抵抗感はない。
■内閣改造→衆院解散→衆参同日選という選択肢も
早ければ来年の大型連休明け、遅くとも通常国会終了直後に内閣改造をする可能性が高い。来年は7月に参院選が控える。次の内閣改造は有能で話題性のある人物を各所に配置し、ご祝儀相場で支持が上向いたところで参院選を迎える。これが安倍氏の基本戦略だろう。
そして、支持の上がり具合をみて伝家の宝刀を抜くこともあり得る。今、安倍内閣の支持率は40%前半ぐらいで推移している。今の内閣の顔触れでは、劇的に回復するのは難しいだろう。しかし、改造してフレッシュな顔触れになれば5割回復も夢ではない。その場合、電撃的に衆院解散、衆参同日選という選択肢も見えてくる。
期待値を低くしておいて、選挙の前に一気に上昇カーブに乗ることを考えているとすれば、安倍氏も相当の知恵者だ。
(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)
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