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橋下徹「京大は特権意識が強すぎる」

プレジデントオンライン / 2018年10月31日 11時15分

京都大学の正門=京都府京都市(写真=時事通信フォト)

京都市条例に基づき、京都大学の周囲に設置された立て看板(タテカン)も撤去すべきかどうか。「京都文化の一部」と撤去に反対する京大関係者の意見を橋下徹氏はどう見るか。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(10月30日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

(略)

■「京大らしさ」は市条例より優先するのか?

京都市の強烈な屋外広告物規制条例は、当然、京都大学のタテカンも規制対象にしている。だから京大の敷地外の道路に向けて設置されているタテカンは撤去しなければならなくなったんだ。

そうしたら京都大学の学生だけでなく、大学OBからも「京大のタテカンを撤去したら京大らしさがなくなる!」「タテカンは京都の風景の一部、京都の文化の一部だ!」なんて文句が出てきた。挙句の果てには「大学の自治の侵害だ! 自由な学風が害される!」という声まで上がったとのこと。

僕は、出演していた関西テレビ「報道ランナー」という番組で、ボロボロになった京大吉田寮の閉鎖をめぐって大学と学生が揉めている話題が取り上げられた時に、このタテカン問題も持ち出し、「京大は特権意識が強すぎるんじゃないか」と苦言を呈した。だって「タテカンは京大らしさだ」なんて言い出したら、京都市内で屋外広告物を撤去させられた他の民間事業者も同じことを言い出すからね。

民間事業者の屋外広告物を撤去するのに、京都市役所はこれまで並々ならぬエネルギーを割いてきたんだ。民間事業者の中には「自分たちの営業戦略・戦術として屋外広告物は必要不可欠だ」と強硬に主張していたところもあって、市役所はこのような事業者を説得するのに莫大な労力をかけてきた。そして市役所職員の頑張りによって、やっと京都市内の民間事業者全体が屋外広告物の撤去に納得し始めてきたところなのに、こんなところで京大だけにタテカンの設置を認めたら、市役所職員のこれまでの努力が全てパーになってしまう。

そして京大関係者が「京大のタテカンは京都の風景の一部、京都の文化の一部だ」なんて言うことは、驕り以外の何ものでもないね。何なんだ、その特権意識はよ! 本当に京大のタテカンが京都の風景や文化の一部として保存しなければならないようなものなら、京都市民の代表である京都市議会の審議でそのような結論になってるよ。

これに加えて、例の藤井ちょび髭が京大教授だということもあって、坊主憎けりゃ袈裟まで憎しじゃないけど、僕は番組で京大批判を繰り広げたんだ。

「京大は、学生に民主主義というものがなんたるものかをきちんと教えろ! 特権意識が強すぎる。大学の施設管理について学生の自治権などない。もし吉田寮が地震などで崩壊して、中に住んでいる学生に危害が及んだら、いったい誰が責任を取るのか。京大は、もっと学生をきちんと教育しろ!」とね。

僕が息巻いて、口から泡を飛ばしてそんな話をしていたら、ピンポン・ピンポンと鳴って、「本庶佑京大特別教授がノーベル賞受賞決定!」というテロップが流れてきた。

当然、番組として次はこの話題。

そりゃ、「京大はやっぱり凄いですね」と言わざるを得ないだろ! しかもこれだけ京大批判を展開していたこのタイミングで。ほんと参ったよ(笑)。僕のことをとにかく嫌いなアンチたちは、ネットの中で大笑いしていたな。

ノーベル賞受賞者を日本の中で一番輩出している京大の力は凄い。でも、問題もある。京大は、問題は問題としてきちんと対応してくれよな!

(略)

■問題点の分析・改善がなければ補助金をつぎ込んでも衰退するだけ

そんな本庶さんが、今、しきりに研究環境の改善を訴えている。特に研究費、その中でも基礎研究費の予算をもっと増額して欲しいと訴えている。先日は、柴山昌彦文部科学大臣にも直訴した。本庶さんは、口で言うだけではなく、自身が受け取るノーベル賞の賞金も大学の基金に寄付するらしい。さらに企業の協力なども得ながら、その基金を1000億円の規模にしていく意欲も示されている。

この社会的影響力はすさまじい。ノーベル賞受賞者が言っているのだから世間も同調する。今のメディアの論調も、研究予算の拡大に賛成の傾向だ。ちょうど、昨今日本の大学の競争力が落ちていること、特に引用論文数が世界の大学の中でも芳しくない状況であることが話題になっていたことから、そのことも合わせて「もっと大学に金をつぎ込め!」という声が勢いを増している。

しかし、僕は、今の日本の大学の状況のまま、大学の予算を単純に増額することには反対だ。

(略)

補助金の入れ方、効果には大きく分けて2つある。

一つは、弱っているところを助けるために入れる補助金。こちらはイメージしやすい。そしてもう一つは、競争力のあるところに、さらに補助金を入れて、競争力を強化していく補助金。今の日本社会に必要とされている補助金の在り方、特に大学に入れる補助金は、後者であるべきなんだよ。

ところが、大学の予算増額を声高に叫んでいる一般社団法人国立大学協会(会長は山極寿一京大総長)が例年作成してる補助金要望の資料は、ほんとお粗末極まりない。

(略)

この資料を見る限り、僕が知事・市長時代に散々経験した、ダメな事業者の予算要望の典型例だ。予算さえ増額すれば、大学の競争力が強化されると信じ込んでいる。普段は、大学こそが国家を支える土台だとか、大学こそが日本の未来を引っ張る牽引車だとか、威勢のイイ、カッコいいことを言っているのに、予算要望のときには、他の事業者や役所の担当部局と同じく、大学は救済されるべき弱者だと言わんばかりだ。

大学教授の中には、共産圏の公営企業や日本の公営企業、それに日本の国鉄などが公的資金漬けでどんな状況に陥ったのかを研究している者も多いだろうから、国立大学協会はそういう人たちからしっかりとレクチャーを受けろっていうんだ。公的資金漬け、補助金漬けになった組織は悲惨な末路を迎えているのが歴史的事実だ。

国立大学協会が、いまやらなければならないことは、お金の話以外で日本の大学に横たわる問題点を洗い出すことだ。何が大学の競争力を阻害しているのか。そこを世界の競争力ある大学と比較して徹底して分析するところからスタートしなければならない。

(略)

お金を注入するにしても競争力が強くなる環境を整えなければ意味がない。文化行政予算についても、インテリたちは増額のことしか口にしない。文化団体にどんな問題があるのか、文化行政補助金の仕組みにどんな問題があるのか、その分析や改善なくして補助金を増額するだけでは、補助金をつぎ込んでもつぎ込んでもその文化は衰退していく。

大学も同じだ。そして国会議員などの政治家が大学の競争力を問題視しているのであれば、補助金をつぎ込むための前提として、大学の競争力強化改革を徹底して進めていかなければならない。それこそ大学側が大学の自治を主張するなら、大学や国立大学協会自身が自ら率先して改革をやらなければならないところ、彼ら彼女らにはその強い意思を感じられない。

まずは、やはり大学や教授陣に対する評価の仕組みを構築することである。高橋洋一さんや研究者たちは、研究の評価は難しいという。確かに100%正確に研究成果を予測・評価することは難しいだろうから、できる限り正しい評価に近づくであろう「仕組み」の構築が重要となってくる。中身よりも手続き・プロセスである。そして、大学を取り巻くステークホルダー(利害関係者)として大学や教授陣を評価し得る主体は大きく分けて5つある。

1=学生、2=企業、3=大学外研究者、4=大学、5=政府(政治行政)

この5つの主体によって大学や教授陣を評価する仕組みを構築すべきだ。そしてこの評価システムの構築こそが大学改革の柱になってくる。今、行われている大学改革の類は、大きな改革の道筋が見えない些末な改革となっている。

(略)

(ここまでリード文を除き約3100字、メールマガジン全文は約1万2100字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.125(10月30日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【大学改革(2)】補助金を増やすだけでは衰退あるのみ! 大学評価システムはこうつくる》特集です。

(前大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=時事通信フォト)

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