科学的に正しい"子供をすぐ眠らせる"方法
プレジデントオンライン / 2018年11月1日 9時15分
※本稿は、愛波文著・西野精治監修『ママと赤ちゃんのぐっすり本』(講談社)の第1章と第2章の一部を再編集したものです。
■子どもの睡眠を改善して、ママもパパもハッピーに
「子どもがすんなりぐっすり眠る魔法、教えてください!」
あらゆる寝かしつけ法を試しているのに子どもの睡眠問題が解決しない―――そんな悩みを抱えた多くのママたちが、こう言って私のところへコンサルティングに来ます。もちろん、そんな魔法があるならお教えしたいのですが、残念ながらありません。
でも、大丈夫。安心してください。魔法はないですが、夜泣き・長時間の寝かしつけ・早朝起きの子どものねんねのトラブルは科学的根拠に基づき改善は可能です。
■よかれと思ってやっていたことが、実はトラブルの原因に
科学的な観点からねんねを考えた時、保育者が普段なにげなくしていること、子どもによかれと思ってやっていることが、かえって寝かしつけを長引かせていたり、夜泣きをひどくさせたりしていることがわかります。次のようなことをしていませんか?
□寝冷えをしないように、服は大人より一枚多めを心がけている
□冬でも寝室はエアコンの温度設定を25度にしている
□寝るときの照明は、天井の常夜灯にしている
□子どもが完全に寝ついてからベッドに置く
□子どもが寝ているときは、できるだけ音を立てないように注意している
□夜中のおむつ替えのとき、よく見えないのでそのときだけ照明をつける
□夜中、「あー」「うー」と子どもが言ったら、すぐにあやす
□夜中の授乳時は、「よく飲むねー」「いい子だね」と声をかける
□とにかく自分のことは二の次。子どもを寝かせることを最優先している
上記に挙げた項目、当たり前のように毎日しているママもいると思います。でも、これらすべて、子どもの安眠をかえって妨げている可能性があるのです。
たとえば、夜中のおむつ替え。パチッと照明を明るくして、「○○ちゃん、いっぱいオシッコ出たね。おむつ替えしましょうね」と話しかけ、ていねいにお尻ふきでふいてあげる。私も長男のとき、これを毎晩繰り返していましたが、科学的に見るともってのほか。わざわざ夜中にしっかりと覚醒させていたのです。
また、「あー」「うー」と声をあげたり、激しく動いたり、目を一瞬開けたりしていても、脳波を見ると実は寝ているという研究結果もあり、少し様子を見ているとまたすぐに静かに寝ます。これは赤ちゃんの脳は未熟なために寝ているにもかかわらず起こることです。
脳が活発に動いているレム睡眠のときには、目が素早く動き、体がピクピクします。このときに起こしてしまうと、夜中の覚醒がクセになってしまうことがあるので、注意が必要です。付け加えると、天井の常夜灯は、寝る環境としては明るすぎます。
■ストレスホルモンが子どもの眠りを邪魔する
“疲れると眠くなるので眠る”というのは大人にとっては当然ですが、子どもはそうはいきません。なぜなら、本来は自然な目覚めを促すホルモンであるコルチゾール(通称ストレスホルモン)が過剰に分泌されるので、子どもは疲れすぎると逆に興奮してしまうことがあります。その結果、うまく眠れずにぐずってしまったり、夜泣きをしたり、早朝起きしてしまうことになるのです。
なので、子どもが疲れすぎる前に眠らせることが大事なポイントとなります。まずは子どもが眠くなったときのサイン=眠い合図をしっかりと見極めていきましょう。
眠い合図には、あくび・ぐずる・目をこするなどがありますが、この「あくび、ぐずる、目をこする」はすでに疲れすぎているというサイン。うまく寝かしつけるには難しい状態で、こうなる前に寝かしつけるのが基本です。
とはいえ、家事などをしていると眠りの合図を見過ごしてしまうことも多いはず。そこで、チェックしたいのが「子どもの活動時間」です。
■“疲れすぎる前に寝かせる”を心がけましょう
表は、あくまでも目安です。子どもの成長スピードや活動量などによって前後しますので、すべての子にぴったり合うわけではありませんが、多くの場合、この活動時間を超えると、疲れすぎの可能性大。ストレスホルモンのコルチゾールが分泌されて交感神経の活動が高まり眠れなくなる、という悪循環に陥るのです。すると寝つきが悪くなったり、夜中に起きるといったトラブルにつながります。
つまり睡眠トラブルを改善するには、「子どもの活動時間」と眠い合図を参考に、活動時間をオーバーする前に寝かしつけをすることが重要です。ねんねトラブルには、他にもいろいろな要因が考えられるので、これだけで解決するとは限りませんが、“疲れすぎる前に寝かせる”は、寝かしつけの大切な基本です。
■「睡眠の土台」を整えるだけで、夜泣きは改善する
子どもの生態を理解しながら、親子でハッピーな睡眠生活を送るために整えていただきたいことが、次にあげる「睡眠の土台」です。
(2)子どもとのコミュニケーションやママなど保育者の心の安定(幸福度)
(3)生活リズム(ねんねルーティン)
“ねんねトレーニング”という言葉がすっかり定着したため、子どもの睡眠トラブルに苦労していると、トレーニングに注目が集まりがちですが、「さあ!」と気合いを入れてチャレンジする前に「睡眠の土台」を調整し、改善するだけで、夜泣き、長時間の寝かしつけ、早朝起きなどの睡眠トラブルが解決することが、実はとても多いのです。
また、土台が整っていなければ、どんなに“ねんねトレーニング”を頑張っても根本的な睡眠トラブルは改善しません。
■なぜ泣いているのかの理由を見極められるように
睡眠の改善にはいろいろな要素がかかわり、個々のケースで明確に「これが原因だった」と判断することが難しいため、正確な数値を出すことはできませんが、“子どもの睡眠トラブルの約7割は、この土台の調整&改善で解決する”というのが、私のコンサルテーションの長年の経験から実感するところです。
詳しくは拙著『ママと赤ちゃんのぐっすり本』にてガイドしていますが、寝る環境や生活リズムを整え、子どもとのコミュニケーション、ママ自身の「幸福度」を少し見直す。これだけで子どもの睡眠トラブルが解決し、“ねんねトレーニング”の必要がなくなるケースは少なくありません。
さらに、子どもが泣いたときに、なぜ泣いているのかの理由を見極められるようになり、どうすればいいかがわかるようにもなるので、子どものぐずりへの対応もスムーズになっていくのです。
ぜひ科学的根拠に基づく改善法を、育児に採り入れてみてください。
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乳幼児睡眠コンサルタント
慶應義塾大学卒業。2012年に長男出産。夜泣きや子育てに悩んだことから乳幼児の睡眠科学の勉強をはじめ、米国IMPI公認資格(国際認定資格)を日本人で初めて取得。2015年に次男を出産。米国で2人の子育てをしながら、子どもの睡眠に悩む保育者のコンサルティングや個別相談、日本人向けにオンラインで子どもの睡眠教育プログラムを提供している。
西野精治(にしの・せいじ)
スタンフォード大学医学部精神科 教授
医師。医学博士。1955年生まれ。1987年、当時在籍していた大阪医科大学大学院からスタンフォード大学医学部精神科睡眠研究所に留学。2005年にスタンフォード大学睡眠生体リズム研究所の所長に就任。16年4月より良質睡眠研究機構代表理事に就任。著書に『スタンフォード式 最高の睡眠』(サンマーク出版)がある。
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(乳幼児睡眠コンサルタント 愛波 文 写真=iStock.com)
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