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河合塾が調布市に開く"最強のお買い得校"

プレジデントオンライン / 2018年10月27日 11時15分

2019年春に開校予定の中高一貫校「ドルトン東京学園」のウェブページより。

来年2月の東京の私立中学受験に台風の目が登場した。大手予備校・河合塾が都内の私立商業高校を買収し、共学の中高一貫校「ドルトン東京学園」を開校するのだ。同校の見学会や説明会に参加した塾講師の中本順也氏は「すぐに偏差値は55~60程度になる。初年度受験が最も入学しやすい“お買い得の年”となる可能性が高い」と予測する。どんな学校なのか――。

■河合塾が立ち上げたのは「最強のお買い得校」か?

来年2月上旬の中学受験本番に向けて、関係者の間で話題になっている学校がある。2019年春開校予定の中高一貫校「ドルトン東京学園」(東京都調布市)である。

注目度が高い要因のひとつは、大手予備校「河合塾」が運営する学校だということだ。前身は、目黒にあった中高一貫校の「東京学園」。商業学校として伝統ある同校を河合塾が買収し、学校経営に乗り出したのだ。

校舎は新築で、小田急線「成城学園前」からバスで数分の好立地。「有能な教師陣をそろえ、生徒の特性に合わせたキャリア教育を実践し、進学指導は国内外問わず力を入れていく」(6月の同校の説明会)という取り組みが実現すれば業界に新風を巻き起こす存在になることだろう。そうなると、気になるのは「入り口」の難易度である。

学校側は説明会で「これまで日能研さんや四谷大塚さんは『新設校』に偏差値45~50をつけています。本校もその程度になるのではないかと考えています」と話した。それを聞いた私を含む塾関係者は「謙虚すぎる」と感じた。

■偏差値は現状43~45だが「すぐに55~60程度になる」

たしかに10月時点での日能研が設定した偏差値は43~45ではあり、どんなレベルの入学生が入ってくるかは実際に試験をやってみないとわからない。だが、長年塾講師を務める私の感覚では、「すぐに偏差値は55~60程度になる」と予測している。実際、「男女共学」「グローバル」「新校舎」といったキーワードを持つ最近の新設校は開校後、偏差値インフレが起き、「60」前後に到達することが多くある。

例えば、学校法人による中高一貫校の買収で記憶に新しいのは、「中央大学附属横浜」(横浜市都筑区)だ。前身は「横浜山手女子」で、偏差値は30台だった。それが共学化初年度から日能研偏差値で53~58を付けた。中央大学の附属校ということも追い風となり、堅調に受験生を集めた。数字だけ見れば、完全に別の学校に変身したことになる。

また、「青山学院横浜英和」(横浜市南区)も以前は女子校(横浜英和女学院)だったが、こちらも大学の系属校となり、さらに共学化することで偏差値が急上昇した。

上記2校と同様に、ドルトン東京学園も買収→移転→新校舎設立という同じプロセスを踏んでいる。校名に大学名はつかないが、河合塾が自ら乗り出しただけに学校や学習の「質」は一定程度担保され、すぐさま偏差値が上がるのではないだろうか。

■「渋谷教育学園渋谷」に並び立つ存在になる可能性

また、ドルトン東京学園は、カリキュラムや教育方針に独自性をもっており、大学附属系とは異なる流れをつくり出す可能性を秘めている。価値観が多様化している時代にあって、中学・高校・大学と最長10年間同じ環境に身を置く「大学附属」を避ける保護者も一定数はいる。しかし、この学校なら大学にエスカレーター式に上がらなくとも、自分の力で未来を開き、多様な進路を見つけられるかもしれない。

私は、初年度からの数年間のライバル校は、校風や先進性などを鑑みて、大学進学にも実績がある「三田国際学園」(東京都世田谷区)になると見ている。注目度はすでに高いので、順調にいけば、将来的に「広尾学園」(東京都港区)や「渋谷教育学園渋谷」(東京都渋谷区)に並び立つ存在になるかもしれない。

■そもそも「ドルトンプラン」とは何なのか?

では、ドルトン東京学園は具体的にはどのような学校なのか。

ドルトン東京学園の校門と教室(撮影=中本順也)

校名の「ドルトン」とは、およそ100年前にアメリカで生まれた教育メソッド・ドルトンプランに由来する。このメソッドは、ヨーロッパやアジアなど全世界で高く評価されており、近年特に熱が高まっている。それが中高一貫校として日本初上陸した形だ。

詰め込み型学習への問題意識から誕生した学習者中心のメソッドで、「教える」と「学ぶ」のバランスを大切にしながら、子どもたち一人ひとりが自分の学びたいことを、自分に合った方法で学んでいく。そうやって主体性・探究心・創造性を育みながら、社会性や協調性・思いやりを大切にしていくことで、人とのつながりの中で力強く生き抜く子どもたちを育てていくというのがコンセプトだという。

学校の説明によれば、1学年は100人で25名1クラスの少人数制。校舎は、「生徒の自主性を引き出すための設計」となっており、教室は壁三面がホワイトボードとなっている。図書館は2フロアにわかれ、蔵書は1.5万冊程度。体育館は天井が高く、バスケットボールコート2面分を確保している。職員室も中が見通せるユニークな仕様だ。

人気の私立中高一貫校と同様に、グローバル教育にも積極的だ。中2にオーストラリアホームステイ、高1にアジア海外研修を予定。国内でも在日外国人のコミュニティや大使館訪問などを通してグローバルな視野を養っていくという。

教科横断・総合型のプロジェクト学習も売りのひとつだ。各学年のある時期に1つのテーマを設けて、そのテーマについて全教科横断型の学習を実施していくことも企画されている。例えば、人口・食糧問題について中2の6月に英語・国語・社会・理科・家庭科・情報の科目でそれぞれ探究型の学習を実施する。

また、「フェス」と呼ばれる行事も多数企画されている。スポーツやアート、ミュージックのフェスが企画されているほか、「STEAM FES」として科学や技術、工学、芸術、数学を総合した発表型のフェスもある。具体的には、ドローンを飛ばしたり、プログラミングしたレゴ製のロボットを動かしたりすることを企画しているそうだ。

■学費は初年度148万円、それだけの価値はあるのか

ここまで学校発表の「売り」を中心に紹介したが、「実態」は開けてみないとわからない。

前出のドルトンプランはコーチャー(教師)の質に左右される部分が大きい。国内にはこれまで中高のドルトンスクールがなかったため、今回採用される同校のほぼすべての教員はドルトンプラン未経験者ということになる。どんな教師がどんな授業をできるのかは未知数だ。また、10月末現在、校長も発表されていない。受験生が志望校を絞り込むこの時期に、ついていくべきリーダーが不明瞭なのは困る。

学費は初年度148万円(入学金40万円)、中2、中3時は108万円。近隣の私立校と比べてかなり高額だ。例えば、神奈川県内で学費が高い私立として知られる慶應湘南藤沢(115.5万円)に迫り、法政第二(102.1万円)、公文国際(91.5万円)を上回る。

しかし、学校が発表した内容を実践できるとすれば、コストパフォーマンスは悪くない。少人数制学習で、世界的にも定評のあるドルトンプランの教育を受けられるのは、日本でもここだけだからだ。

■「生徒全員がMARCH以上に入れるようなレベルを担保したい」

ドルトン東京学園の図書館、職員室、体育館(撮影=中本順也)

同校は、難関大学合格のための学校ではなく、あくまで探究・体験を重視した学習者中心の挑戦をサポートする学校を標榜している。しかしその一方で、説明会では「生徒全員がMARCH以上に入れるようなレベルを担保したい」と話し、「学校としては実績をまだ出していない状況ではありますが、各教員はこれまでの学校で十分な進学指導を経験してきています。個人として力のある教員が集結しているので心配はありません」と付け加えている。

保護者の多くは「あの河合塾の看板を背負った学校がそうそう簡単に失敗することはできないだろう」と考えるはずだ。確かに、「河合塾」というブランドは一定の担保にはなるだろう。ただ、「徹底した大学受験指導の確約」という文脈で受け止めるべきではないだろう。

通常、「新設校」の評価は定まりにくい。「見えない」部分もある。よって開校1年目は様子見をする親子は少なくない。だが同校の場合は、初年度受験が最も入学しやすい「お買い得の年」となる可能性が高そうだ。理念や学習内容に共感できるなら、「賭ける価値」はあるはずだ。

(すばる進学セミナー 塾長 中本 順也)

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